”オールド・シネマ・パラダイス”、、時々新作も

長年”映画と愛猫とオーストラリア”だったが札幌へ軟着陸し愛猫も亡くしこの新タイトルで心機一転だ。

”死者の香水 / 第一容疑者 6”(95年)

ジェーン・テニソン(ヘレン・ミレン)はロンドン市警の主任警部だ。このシリーズ6では妻子ある犯罪心理学の先生と不倫関係にあって日常の激務の合間には心を許した付き合いをしている。

そんな彼女がある晩、現場に呼ばれる。若い女性がゴミ袋に入れられ遺棄されていた。その死体を詳しく調べると何日も拉致されていたと思えるような両手を縛った結び目や身体のあちこちに残っているアザや仄かに残る香水から同じ手口の殺人事件を扱った事を思い出す。

マスコミには察知されないように慎重に過去の事件と照合して行くのだが過去6件の事件に関与したとして逮捕された容疑者は現在も塀の中だ、それもジェーンが逮捕して終身刑を言い渡されている。

 

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何やら此処までは”羊たちの沈黙”風だが担当するのは男勝りの活躍をしているベテランの主任警部だ。そんな緊迫した幕開けで男の職場である警察署内で孤軍奮闘するテニソン主任警部が描かれて行く、、。

この一連のドラマはこれまで1991年から2006年まで9本が制作されていてヘレン・ミレンの代表作となっている程の人気シリーズだ。男性社会での活躍を描いているが如何に女性が警察の現場では苦労するか、、部下と上司の間に挟まれ苦悩する場面や捜査に行き詰って悪態をつく場面、上司に抵抗する場面などがふんだんに出て来る。

それでも意思の強さと統率力を発揮して上司から他の部署へ異動を命じられたり謹慎処分を受けたり停職になってもその犯罪を解決する意欲は失わない。そんな役柄が実に上手くマッチしている。

それに実在するロンドン市警の組織や階級制度がそのまま生かされていて(本当のところは知る由もないが、)どうやら彼方の警察署では新人採用時にモデルとして使われているそうな、、まあそれだけ真実味があるって事じゃなかろうか?それに女性だからと言って上司や同僚や部下であろうが差別や偏見を持つなと言う事らしい、。

そしてその怪奇殺人事件だが意外な展開を見せて行く、、マスコミに捜査の進捗状況が漏れてしまいこれは今も続く連続殺人事件だ、そして手掛かりは香水の香りじゃなかろうか、、とすっぱ抜かれてしまう。しかも既に終身刑を宣告され収監されているヤツは無実で真犯人は今も殺しを続けているんじゃないか、と叩かれテニソン主任警部は窮地に追い込まれる、。

そんなで事件の捜査から外されていた彼女は今度は停職処分に更に自分が逮捕したヤツは本当に殺人者だったのか、冤罪だったのかと心に疑念が湧く。初めに捜査を始めた時に刑務所の中で同房で釈放されたヤツとか仲間だったヤツをリストアップして再捜査をする様に進言したものの直属の上司から却下され予算配分の見直し業務を押し付けられていたのだ。それにもめげずに地道に過去に収監されていたムショ仲間を一人一人潰していたのだ、。

そんな所轄を挙げての捜査をあざ笑うように連続殺人は続いて行く、、日本の刑事ドラマじゃなかなかこれ程リアルな設定や筋書きは見られない、。捜査一課長が叱咤激励して大勢の署員を前に訓示を垂れて根性モンのスピーチだ。それに何と言ってもチームワークが全てだし警視庁からやって来る捜査員と所轄の交わり方がイマイチ納得出来ない。まあ作品によっちゃ所轄主導ってのもあるが縄張り意識が強くて通り一本隔たるとオレ達はもう関係ないって図式じゃなかろうか?

そして今度は職務を解かれたジェーン・テニソン、それでも追及を止めない。今度はボーイフレンドの彼氏を経由して収監されている終身刑のヤツの手記を出版しようとしている出版者と会う事に、。其処から今度は養護施設にいる犯人の母親にも会いに出掛けるそして遂に一筋の光が見えて来る、、それはずっと謎だった現場に残されていた香水の香りだ、この謎を解けば真犯人へ辿り着くと感じた彼女は、、。

っと言うモノで拳銃をぶっ放したりカーチェイスがある訳じゃない、でも最後の最後まで目を離す事無く楽しめる極上の犯罪ミステリーで御座いました。このシリーズはかなり昔に一度見ているんだがそれでも最後まで真犯人が判らなかった、。オレの方が”第一ボケ容疑者”なんだろうか??

 

 

 

 

”麗しのサブリナ”(54年)

公開されたのが1954年なので流石にリアルタイムじゃ見てない、、初めて見たのは何処だったかの二番館でリバイバル上映だったと思う。確か当時はオードリー・ヘップバーンの魅力じゃなくてハンフリー・ボガード目当てだったのか、、それとも”第十七捕虜収容所”の後のウィリアム・ホールデンだったかも知れない。

ハンフリー・ボガードは既に50代も半ばそれが25歳のオードリーと最後は恋に落ちる、まあ彼女が惹かれるのはみんなジジイだなぁ~、、と内心恨めしかった。ゲイリー・クーパーだってケイリー・グラントだってレックス・ハリソンだってみんな親子ほどの年齢差だよ。

 

 

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映画の元ネタは”Sabrina"と言う戯曲でそれにビリー・ワイルダーが脚本を書き、監督もやっている。その戯曲を書いたのはサミュエル・テイラーと言う作家でブロードウェイで上演する予定だったのがその前にワイルダー監督の目に留まり映画化が先行した。

その後、ワイルダー監督とサミュエル・テイラーば共同で脚本を執筆していたらしいが既に主役はオードリーと決まっていたので彼女に合わせたストーリーに仕上がった。男優については当初、ケイリー・グラントが候補だったのにハンフリー・ボガードへ、そしてオードリーと共演した弟役のウィリアム・ホールデン、この二人はかなり親密な関係を保っていたと書かれてあった。

ストーリーは単純明快、NYの大富豪のララビー家に住み込みで働くお抱え運転手のトーマスにはサブリナと言う娘がいた。夜ごと開催される豪華なパーティに憧れて育ったサブリナ(オードリー・ヘップバーン)はパリへ留学、年を経て洗練されすっかり見違えて魅力ある大人の女性として帰国する。

留学前から憧れて片思いだった次男坊のデイビッド(W・ホールデン)は以前はサブリナの存在さえ知らずに過ごしていたが帰国した彼女にはぞっこん、、そんな背景から今度は兄のライナス(H・ボガード)もすっかり見違えたサブリナから目が離せなくなる、。そんなコメディタッチでサブリナの魅力に捉えられる兄弟、、そして観客を交えて三つ巴になる。

モノクロの画面だったがサブリナのファッションはその後、”サブリナパンツ”として商品化されているしあのヘアースタイルも”サブリナカット”として一躍有名に、そんな所にもオードリー・ヘップバーンならではの魅力と影響力があったとは、、。

 

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1995年にはジュリア・オーモンド、、ハリソン・フォード、そしてグレッグ・キニアでリメイクされているが、、遠くこのオリジナルには及ばなかった。

 

 

 

 

 

”クロコダイル・ダンディー”(86年)

これは100%オーストラリアの資本、制作陣で現地で撮られたホンモノのオージー映画だ。当初、ダンディーと言うのは”ダンディー小佐”と言うチャールトン・ヘストン主演でサム・ペキンパー監督が撮った映画から流用されたんだと思ったらそうじゃなくて主人公のキャラクターの名前だった。

1988年にオーストラリアへ渡ったのでこれを見たのは日本国内だったと思うがお陰で多少なりともオーストラリア語の発音や、風習を確認出来たかも知れない。まあ映画は”おバカ爆笑映画”の領域でこの映画のせいでアメリカではオージーイングリッシュを笑われる事態にまでなっている。

しかし豪州内では大ヒット、多少アメリカ英語に馬鹿にされ自虐的な気分になったもんだが制作費が僅か1億円程度で世界配給に於いては400億円以上の高収益をあげて制作陣から主演のポール・ホーガンまで全員が大金持ちになった。無論その後、続編が二本も制作されポール・ホーガンは共演したリンダとも結ばれ、その後離婚し、長者番付がらも脱落、挙句は脱税で刑務所暮らし、、と続編の評価に準じるように上がり下がりの極端な人生を送っている。

 

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何処でナニを間違ったのか、、映画の背景にあるような何も文明の利器のない辺鄙な場所から都会へ来て都会風な生活様式を取り入れなけりゃそんな事にはなっていなかったんだろう、、それはご本人も何時だったかTVのインタビューで語っていた。

映画は新聞記者のスーが(リンダ・コズロウスキー)がオーストラリアの奥地へ伝説的な人物、クロコダイル・ダンディーを訪ねて行く。取材としてその不思議な能力(動物たちを従順させる)を検証するのが目的で自身が取材中に命を救われた事からニューヨークへ連れて帰り本人をテレビに引っ張り出そうと言う魂胆だ。

そのニューヨークでの滞在がメインイベントで都会生活など経験のないポールが騒動を巻き起こす、、と言う筋書きでオーストラリア人が見ればかなり納得する場面がありアメリカ人からすれば”オイ、オイ本当かよ?”と余りに文明を知らないポールの振る舞いに爆笑するって寸法だ。日本でもかなりヒットしたような記憶があるのだが、、。

 

 

 

”砂の器”(74年)

松本清張の原作、確か1960年の初めころに出版されている。新聞に連載されていたものを読んだのかアレは文庫だったのか不明だが典型的な推理小説プロット、それも犯人捜しより事件を担当する捜査員の地道な活動が本筋になり一気に読ませる本だったような、、森村誠一の作風と似て有名人となった犯人がその過去を悔いて、或いは抹消する為に殺人を犯す想定はこの作品以降常套手段になっている。

 

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公開されたのは有楽町にあった本来は洋画専門館として知られる有楽座だった。”アラビアのロレンス”も当時、此処で上映されているのだが邦画を上映するのは珍しく、プレミア試写として上映された記憶がある。

橋本忍がプロデューサーとして最初は松竹へ企画を持ち込むも、集客は困難だろうと言う理由で断られ、東宝東映大映もしかり何処も乗り気ではなかった。何故集客が困難だ、、と判断されたのはか不明だが確かに推理小説としては評価は高くても一般的な映画のヒット要素を持っていたとは思えない、。

そんな状況下、自分のプロダクションを設立し当時、東宝の重役だった藤本真澄口説き落としたらしい、そんな理由から通常は東宝が配給を請け負った洋画を専門に上映していた館でのプレミア公開が決まった。まあそれでも松竹との垣根は取り壊され最終的には制作費を折半しているそうだ、。

原作を読み終えた後の率直な感想は推理小説としてはそれ程素晴らしいと言う思いはなかった。それが映像化されると全く違った印象に、、文章で読み進む今西、吉村両刑事の行動を限られた時間に映像化して地道に捜査にあたる描写は実に見事だった。

 


ピアノ協奏曲 「宿命」 第一楽章2.flv

 

文章からは彼らが推理を働かせ、苦悩する様子をはっきりと思い出す事が出来る、でもそれを上映時間143分に集約し映像化した野村芳太郎監督以下、脚本から撮影のスタッフ、そして背景に流れるテーマ曲、”宿命”、をジャズ音楽家の菅野光亮がもうこれ以上はあり得ない、文章では絶対に不可能な音響効果として貢献しているのだ。

そして映画には見どころが満載され特に終盤、今西刑事(丹波哲郎)が若い吉村刑事(森田健作)と捜査会議で一同を前にどうやって犯人に辿り着いたか、そして何故この犯罪が行われたのか、父親との関係から彼ら親子の生い立ちを得々と語る場面は涙なしに見れる場面じゃない、くり返し、くり返し、、、くり返し、くり返し気が付いたら又、見ていると言う名場面である。この短い場面にこの映画が集約されている。

その後、TVドラマ化も何度となくされているがこのオリジナルは超えられまい。イヤ、超えちゃいかんのだ。

 

 

 

 

”プリティー・リーグ”(92年)

いよいよ本場のメジャーリーグが始まる。昨年と違い今年は予定通り各チーム162試合の長丁場、観客もかなり入れるはずなので楽しみにしている。しかし今年はヤンキースには日本人選手が皆無なのだ、、っと言う事はまずBSNHKじゃリアルタイムで放映されないだろう。

あるとすれば大谷くんの大活躍を見越してエンジェルス中心か?となると西海岸を本拠地にしている球団なのでヤンキースとは6月後半に4試合と8月末に3試合っきゃ対戦しないのだ、。ダルビッシュや前田も同様でヤンキースとの対戦が少ないのでこりゃ昨年ほど見れないかな?

唯一のよりどころは筒香くんの大活躍だ、もし彼がスタメンで毎試合出る事になるとヤンキースとは同地区、東海岸対決なので18試合は組まれているハズでヤンキースの試合を見るにはタンパベイ・レイズ筒香くんの大活躍が必須だ。

 

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そこで開幕(4月1日)を前に野球をテーマにした映画を、、;

92年に制作された”プリティー・リーグ”これは実話で時代は1943年、戦争で優秀なプレーヤー不在のなかプロの女性リーグを立ち上げチーム戦を戦う映画である。
 

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チームのかなめを演じたジーナ・デイビス、キャッチャーで強打者の4番、投手の妹と組んで大活躍する。最初は観客からも女性のお遊びかぁ~、、とヤジが飛ぶが徐々にチームリーダーとして頭角を現して行く、。監督役のトム・ハンクスとも何度か衝突するがそれでもチームの為に最後まで頑張りとおす、。

主演はチームの監督役にトム・ハンクス、主力バッター兼キャッチャーがジーナ・デイビス、更にマドンナも、、。我々おっさん世代でもその存在を知らなかったアメリカ野球の世界、最初見た時はナンか違うかな、、と思ったもんだが戦中でもアメリカはこうやって女性だけの野球リーグを持って運営していたんだと気付くに至って何とまあ日本は、、相手国の事を何も知らずに戦争に走ったんではないだろうか、、と不思議な気持ちになった、。
 
これは数ある野球をテーマにした映画の中でも女性に照準を合わせた異色べースボール映画、ご主人が出兵している間に、、恋人が戦場へ、戦死した彼を想い女性だけの野球にのめり込む、選手は夫々に辛い過去や差別にあいながらも必死に選手として活躍する何とも爽快な映画だった、。オリンピックがどうのこうのと言う前にこんな映画を日本の○○さんにも見せて置けば良かったんだ、。