”オールド・シネマ・パラダイス”、、時々新作も

長年”映画と愛猫とオーストラリア”だったが札幌へ軟着陸し愛猫も亡くしこの新タイトルで心機一転だ。

”キネマの神様” (21年)

最初に記述して置こう、、これは2008年に原田マハが書きおろし文庫本として発刊した”キネマの神様”とは全く別物である。原作は映画が好きなシニア世代にはまさに場外へぶっ飛んだホームランのようで涙なくしては読めない感動作だった。

当初、映画化されると聞いた時はあの感動をスクリーンで再体験出来るとかなり期待もしたしこれは絶対に公開と同時に映画館だな、、と内心うずうずしながら待っていたものだ。それがコロナ禍の影響やら主演する予定だった志村けんの急逝で撮影さえも中断されてしまった。

 

 

その後、昨年の8月にはやっとこさ代役に沢田研二が抜擢され劇場公開に漕ぎつけたのだがどうも聞こえて来る評判が芳しくない。まあその時点で原作とは大きく違っている、、とこのブログ内でも読みあの原作を読んだ時の感動は遥か彼方らしかったので昨日までそのまま知らん顔をしていた。

それがやっと課金配信から解禁され見る事になったのだが、。初日に最初の20分程度見て余りに腹に据えかねてリモコンを場外へ放り出してしまった。そして翌日、腹の虫が収まったところで再挑戦、辛うじて残りの60分くらいを見たのだが見終わってこれ程ガックリした経験はない程に落ち込んだ。

原作は限りなくシニア世代への応援歌だったのに此方は限りなく失望感を味合わせるエンディングで山田洋次監督らしからぬ演出には開いた口が塞がらなかった。原作とは一線を画して別物語にしておれば良かったと思うし往年の大女優に扮した北川景子が素晴らしいぶん、メイクがチョイと現代風過ぎるが、実にがっくりした、。

劇中、近視眼でその何処を見つめているか判らない視線が魅力の一つだ、、と言われている矢先メガネなしで運転させるなよ、、まだコンタクトはあるまいにとオレなどにつっ込まれないように演出出来なかったんだろうか?

映画の中で撮影風景を描く、、と言う手法は今に始まった事じゃないが終盤はファンタジーにはちと足りず、さほど現実的な展開でもない。沢田研二だって途中関西弁風なセリフもあったが若い時はちっともそうじゃないし、、演出からいっても奥さんを演じた宮本信子が気の毒でならない。

余りに原作と違う度:☆☆☆☆、、沢田研二のむさ苦しい度:☆☆☆☆、、北川景子の好感度:☆☆☆☆、、珍しく続けて邦画を見てしまったがもうこれで当分見ない決心が出来た。オシマイ。

 

 

 

”ヴェラ ~信念の女警部~ ” (21年)

ぶっちゃけイギリスの片田舎を舞台に活躍する”おばちゃん”刑事どのなんだが彼方じゃ人気が高く、遂にシーズン11に突入している。珍しく日本でも新シリーズの配信が始まり野球中継の合間に噛り付いている。イギリスでは2021年の5月に放映されたようでそれが一年遅れで見れるならかなり早い方じゃなかろうか?

日本やアメリカのシーズンものとは違いワンシーズンが6話完結、それも毎回一時間半の長さで事件はその90分で解決する。主演の”信念の女警部”を演じているのはブレンダ・ブレシンと言う女優さんで仕事が趣味、寝食を忘れてこんがらがった謎を解きその鋭い観察力で事件の解決にあたって行く。

 

 

背景になっているのは架空の街だが収録されている場所はニューキャッスルと言う北東部の田舎町で人口は30万人にも満たない。そんな田舎町で何でそんなに殺人事件が頻発するんだ、、は置いておいてこのブレンダ・ブレシンの芸歴は古く80年代から主にTV界で活躍している。

同僚の刑事(部下)が6人くらい居てそれがヴェラの精鋭部隊チームとして事件解決にあたるのだが部下への指示がかなり居丈高で上から目線だ。日本だったらこりゃパワハラだ~、、と部下に言われそうな事もあるが妙に彼らからの信頼度は高く文句は言ってもちゃんと最後まで仕事をこなして行く。

不可解な殺人事件が常だが先ず死因の特定、そして身元確認、更には殺された場所の特定から動機のありそうな関係者を総当たりでチームが対処して行く。ロンドン等の大都会と違って監視カメラや街道筋に設置された交通車両を判別するカメラが少ないので捜査の原点は関係者への聞き込みだ。

それも半分は嘘なので容疑者を特定するまでにかなりな時間と労力を要する。その尋問のなかで誰がウソっこなのか、真実の解明に苦心惨憺する”信念の女刑事”振りが毎回の見せ場である。

日本の刑事モノとは違い毎回同じセリフなんてものは一切ない、それに捜査一課長に敬礼、、とか”絶対に犯人を挙げる”とか叱咤激励する場面なんかありゃしない、。なので此処はやはり演出も大事だが脚本がしっかりしてないと真実味が出て来ないしキャラクターの魅力だって出て来ないのだ。

実際の殺人事件の捜査はどうなっているのか知る由もないし知人、友人にも警察関係者はいないのでこうしてドラマで拝見するのが関の山だ。

これで先週から既に4話で事件が解決していて残るは2話だけになっている、、これが終わると又、来年まで逢えないとなるとチョイと寂しいかな?

”ワイルド・ギース” (78年)

1978年に公開された戦争、と言ってもアフリカの内戦を描いた作品だがまさに”オールド・シネマ・パラダイス”に相応しい映画だ。

主演はリチャード・バートンロジャー・ムーアリチャード・ハリス、ハーディ・クルーガーに陰で傭兵を雇っている悪代官にスチュアート・グレンジャーそして監督はアンドリュー・V・マクラグレン(西部劇、アクションとヒット作を連発)と当時第一線で映画界を牽引していた連中でダニエル・カーニーと言うホンモノの傭兵が自身の体験談を書き上げた手記が原作になっている。

 

同じようなアフリカの内戦モノに”ティアーズ・オブ・ザ・サン”と言うブルース・ウィリス、モニカ・ベルーチ主演の映画があったが此方はアフリカの小国の大統領を救う為に寄せ集められて派遣される傭兵たちのお話で全編激しい戦闘場面が続く。

フォークナー大佐(R・バートン)がイギリスの富豪、マターソン卿(S・グレンジャー)の依頼で幽閉されている大統領を救出しに行く訳だが仲間集めの過程は”荒野の七人”等で使われている手法、その分野の専門家を集めて行く訳でフィン(R・ムーア)、レイファー(R・ハリス)、ピーター(H・クルーガー)が選ばれて参加する事になる。

最終的には50名の精鋭部隊を編成しアフリカへ乗り込んで行くのだがそうは簡単に大統領を助け出す訳には行かないのだ。迎えに飛んで来た輸送機が上空でUターンして引揚行ってしまい裏切られたり敵の思いがけない反撃で味方が全滅に近い状態になったりで50名いた戦士たちが最後には13名とかに減ってしまう。

一応、終盤に近く重傷を負った大統領が格言めいた言葉で闘争の意味やら諸外国から入って来る白人資本に対する辛辣な意見から白人傭兵として参加している連中を諭す場面もあるがまあ肩の凝らない戦争映画に仕上がっている。

 

”優駿 Oracion” (88年)

サラブレッドのスーパーヒーローを迎えて語られる感動巨編、人馬一体となった感動のドラマ、、果たしてヒーローは勝てるのか?”と書かれていて解説には、、;

一頭のサラブレッドをめぐる牧場主や馬主、調教師、厩務員、騎手などさまざまな人人の生き様を描く。宮本輝原作の同名小説の映画化で、脚本はTV「ここの岸より」の池端俊策が執筆。監督はこれが第一作となるTV「北の国から」の杉田成道、撮影は「密約 外務省機密漏洩事件」の斎藤孝雄がそれぞれ担当。

 

っと来りゃ競馬ファンじゃなくても気になるしその感動とやらを味わってみようとHNKBSにチャンネルを合わせちまった。

配役は北海道の馬の生産牧場主に(当然のように)緒形拳、そして一人息子には緒方直人(親子共演)、そして生まれたての仔馬を3000万円で買う社長さんが仲代達矢、その娘に斉藤由貴、腹違いの弟に吉岡秀隆、更には加賀まりこ三木のり平平幹二郎やら石坂浩二田中邦衛(北海道が舞台のこんな映画には欠かせない)、等で配役陣はまあチョイ役でも凄い事になっていた。30年以上も前の映画なのでこれならオレでも全員の名前と顔が一致するわな、。

物語りは冒頭、北海道の牧場で仔馬が誕生するところから始まる。そしてその仔馬を買い付けるのが仲代達矢社長、、でもどうやら会社の経営状態が悪くて大手に吸収合併を持ち掛けられているらしい、、それなのにいきなり3千万円の出費かい?

更に不可解なのは買ったばかりの馬を娘の名義にしてしまい、。そりゃ会社が万が一の場合は会社保有とは一線を画して置こうと言う魂胆は判るが何の説明もないのだ。それからもっとヘンテコな事にこの社長には正妻さんの他に産ませた息子がいる、そしてその息子は肝移植をしないと余命がいくばくもないらしい、。実の父親からの臓器移植じゃないとダメなので加賀まりこが一生懸命頼み込むのだが全く聞く耳を持たず、。

そんな出来事の最中、何故か仔馬を相続した一人娘が急接近でその弟(吉岡秀隆)と妙に親しくなっている。そしてあろう事かその仔馬の譲渡契約を勝手に結んでしまい何れ弟に譲るって事になってしまう。

そりゃ多少仔馬のトレーニング風景はあるし周りの関係者に見守られ大切にされて行くのだが、、しかしもっと不可解な事件が起きる。それはその大切な仔馬を茨城の厩舎へ届けるのにプロの運搬会社を使わずに息子の緒方直人が一人トレーラーを長距離運転して行くのだ。

そして事故、、オラシオンと名付けられた大事な馬の脚に怪我を負わせてしまう。もうそんな普通じゃ考えられないようなツッコミどころが満載でハラハラするより見ている側は”こりゃおかしいよ”、となってしまう。何処にも感動の”か”の字も出て来ない。中盤の斉藤由貴吉岡秀隆の逸話が実に長く、かと言って父親を説得させようとしたり母親が出しゃばって来る場面もありゃしないのだ。

どうもコレは原作だけにして置けば良かったんだろうか、、余りに欲張って素晴らしい配役陣を使っているが為に話があっちへこっちへと右往左往するばかりでちっとも関係者一同がレースに勝てるような名馬にしようと努力する場面が欠落している。

もっと一同が必死になって強い競走馬にして行く苦労、絆、馬を愛する気持ちが出て来ないので感動なんかしたくても出来やしない、。期待したオレが悪かった??

”21 ブリッジ” (19年)

以前から配信されていたが余り見る気にもならず放り出していたが野球中継が早くに終わってしまい札幌は昼からずっと雨、豪雨でもなくしとしとピッチャンでもない、そうかと思うと突然突風が、もう山の天気みたいに激しく変化する。

そうなるとやはり映画に走るっきゃない、。ジャンルとしてはニューヨークを舞台にした犯罪モノだが邦題の”21ブリッジ”(原題もそのまま”21Bridges")の意味はNYのマンハッタン島にかかる橋が全部で21あると言うだけで犯人が逃げ出さないように全部を閉鎖するって意味だが別に犯人はその橋を使って逃げようとする訳でもないしタイトルと主題が全く一致しないと言う不思議な設定だった。

マイケルとレイの二人組はアフガン帰りの軍人で戦場では優秀だったようだが今は犯罪歴を重ねプロの盗人になっている。その二人が30kgだかのドラッグが町のレストラン内のワインセラーに隠されていると言う情報を元に盗みに入るのだが其処には300kgを越す大量のドラッグが保管されていた。

 

 

自分たちで運べるだけの量を持ち逃げようとしたところへ85分署に所属する警官やら刑事等が駆け付けて来て銃撃戦になってしまう。警察側に8人もの殉職者を出してしまうが二人は辛うじて逃走する、。デイビス刑事(チャドウィック・ボースマン)とバーンズ刑事(シエナ・ミラー)が担当する事になり早速マンハッタン島に掛かる21の橋全部に交通規制を敷き誰も出て行けないように手配をするのだが、、。

っとそんな犯罪モノで予定してたドラッグの量が半端なく多い事からこりゃナンか裏がありそうだ、と気付くマイケルとレイだが何せ8人もの警察官を殺しているのでNY市警の追及の手は厳しく署員全員が犯人逮捕に駆り出されてしまう。

部下を8人も銃撃された85分署のマッケナ警部(J・K・シモンズ)は署長として早期解決を目指し乗り出して来たFBIから捜査権を奪い朝までの6時間で事件解決を約束してしまうのだが、、。

この辺りまではスピーディで面白い展開が続く、まあ想定以上のドラッグが金庫にあったと言うのに見ている側でも不審に感じるのだがデイビス&バーンズ刑事の活躍で仲介人が割れ、犯人像もハッキリする。

そして彼ら二人組を追って街中の監視カメラやスピード違反車から徐々に追い詰めて行くところは定番ではあるがそれなりに巧い演出だ。最後は謎解きになるのだがやはり配役陣で一番名前が売れているJ・K・シモンズが一番怪しいよなぁ~、、そして最初に出て来た”85分署”の意味が判って来る。

邦画だと確か”踊る捜査線”ってのがこんな雰囲気だったんじゃなかろうか?こっちはもう少し配役にお金をつぎ込んで最後まで真相を明かさなけりゃ設定や演出は良かったのでクライム・アクションとしてダントツで面白くなったのにと残念な結果でした。