”オールド・シネマ・パラダイス”、、時々新作も

長年”映画と愛猫とオーストラリア”だったが札幌へ軟着陸し愛猫も亡くしこの新タイトルで心機一転だ。

”太陽の帝王”(63年)

これは実に珍しい、うちじゃJ:COMに加入してて映画専門チャンネルってのが8つくらいあるのだが60年前に映画館で見て以来、テレビ放送では初めてお目に掛るかも知れない。50年代に設立されたザ・ミリシュ・コンパニーってのが制作元で大手のユナイテッド・アーティストや後年はMGM社と共同して多くの秀作を送り出している。

”お熱いのお好き”、”ウェスト・サイド物語”、”荒野の七人”とか”アパートの鍵貸します”から”大脱走”に”華麗なる賭け”、”ピンクの豹”なんてのは全部この時代にこの会社が制作に関与していたものだ、。世界的に大ヒットした作品は繰り返しテレビでも放映されているのだがこれとか”暗闇でどっきり”や”633爆撃機”等はテレビ配給から漏れてしまったようでこれまでなかなか放映されない。恐らくこれは版権のせいかも知れないがずっと見たくても見れない状態で来ていたのだ。

 

その肝心の作品だがユル・ブリナーとジョージ・チャキリスが主演で失われて行ったマヤ文明の最後になった王様を巡るお話になっている。63年当時、映画館で見た時は半分も理解出来てなかった気がするが改めて拝見するとやはりひらったい作品であったのは間違いない。

 

アクションシーンだってそりゃ当時は大量のエクストラを投入して大掛かりな撮影をしてはいるのだが脚本が情けないしクライマックスに至るまでがちょっと中たるみ気味で王様であるジョージ・チャキリスの貫禄不足は否めない。

ユカタン半島を豪族に追われてしまい大勢の民を引き連れて海を渡る事にするバラム王(G・チャキリス)は長い航海を終えやっと見つけた大地に落ち着こうとする。其処へこの国の酋長、ブラックイーグル(Y・ブリナー)が偵察にやって来る。激しい戦いの後に囚われの身となったブラックイーグルは怪我が癒えるまで部落に留まるのだがそこで高度な文明を持つ部族とその指導者バラム王に心を動かされてしまう。

バラム王が密かに好意を寄せているイクチェル(シャーリー・アン・フィールド)が献身的にブラックイーグルを世話をするうちに妙な感情が芽生える二人、、でも彼女は将来王妃となる身でありながらこの捕虜に心を動かされて、、。っとまあこれは二次的な逸話であるのだがバラム王とブラックイーグルは争って部族を失う事よりお互いの良い部分を認める事でこの地で共存しようと思い始めるのだ。

ところがやはりこれじゃ終われない、、バラム王が元の国から逃れて来た原因の蛮族民たちが遠くの海の彼方に一大船舶団を伴い追いかけて来るのだ。さあこれからがクライマックス、、大船団を相手にまだ鉄の武器を持たないバラム王達は勝てるのか、全員がぼっこを手にして敵を殴り殺すだけじゃ勝てるもんじゃあるまい、。

さてインカ帝国は滅亡するのか、、?と言うお話でそんな目を見張るもんじゃないのだが公開当時は確かスクリーンに釘付けだった気がする。こんな映画は、デジタル化、CG化で特殊撮影を駆使してこの時代にリメイクしても良いのではなかろうか?間違いなくオリジナルを超えられる作品が出来そうなんだがなあ~、、。

″1923″ (22年)→ ”イェローストーン” (18年〜)


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これはアメリカ国内でもやっとこさ今月になり配信される予定のミニ・シリーズでごく簡単に”1923″とタイトルのついた西部劇である。主演はハリソン・フォードで奥さん役にヘレン・ミレンが配役されている。

時代設定はタイトル通りとすれば日本じゃ関東大震災の起きた年、アメリカじゃ諸外国から移民して来た人や東部から一攫千金を狙って一斉に西部へ移動していた頃である。実はこのドラマは同じシリーズもの「イエローストーン」のスピンオフ、前哨とでも言える内容で2018年にスタートして現在はシーズン5まで進んだ現在進行形のドラマである。

広大な牧場を経営するダットン・ファミリーのお話で主演はケヴィン・コスナー、そして寡暮らしの彼が長女のベス、長男のジェイミー、次男のケイスと協力し合い家族を守るドラマになっている。彼らの敵は時として外から参入して来る開発業者、悪徳仲介不動産やら原住民に土地を聖地として取り戻すべく合作する悪人ども、、腐敗まみれの州政府議会に市長さんまでエンドレスの戦いである。

そのダットン家がその広大な牧場を自分達のものにし事業の基盤を作るまでが描かれて行くものだと思うが時代が1923年と言う事はジョン・ダットン(ケヴィン・コスナー)の父親がジェイコブ(ハリソン・フォード)で母親役のカーラがヘレン・ミレンって事になるんだろう。配役陣にジョン・ダットンSrとあるのでそれが息子の一人で多分ジョンの父親か?

何れにせよこうやって過去に遡ったりスピンオフして主役じゃなかった人物を主役に据えて新しくドラマを作って行く手法は今に始まった事ではない。長く続くシリーズ化されているものでも常套手段だが本編が成功したからこそ出来る企画なんだろう、。興行的に失敗したものがこの手法で蘇ったケースはないかも知れない。

でもこうやって本国じゃ今にも放映されると言うのにこの時代、日本じゃ配信どころか放映の予定さえもない。ネットで何でも出来るならこんなドラマだって日米同時配信なんて事は出来ないのだろうか?劇場用映画で出来るなら技術的に出来ない訳はないと思うのだが、、そうなって来ればAmazonだろうがNetflixだろうがWOWOWでもこっちは課金されても構わない。NHKさん、、紅白歌合戦なんか放送するよりオレは100%支持しますが、。

次期ジェームズ・ボンド役、、?

日本じゃ余り話題にもなっていないようだが本国ではいよいよボンド探しが始まっているようだ。先週、ある若手俳優さんがプロデューサーのバーバラ・ブロッコリと制作元のイオンプロダクションと面談したそうだ。その候補者とは、、;

 

Aaron Taylor-Johnson(アーロン・テイラー=ジョンソン)と言う32歳の若手でかなり有望らしい。バーバラさんも”なかなか良いじゃない?”っと言ったかどうかかなりお気に入りだそうでデモテープとスクリーンテストは及第点だったそうだ。

確か先の”ブレット・トレイン”ではプラッド・ピットと共演していたらしいが生粋のイギリス人で(バッキンガムシャイヤー生まれ)若いのに芸歴は古く2002年頃から映画には出演している(って事は子役か?)。

近年は”テネット”(20年)、”キングスマン/ファーストエージェント”(21年)等にも出ているようだがボクは気が付かなかった、、ああイケネー、見てなかった。でも見ている”ゴジラ”(14年)や”ザ・ウォール”(17年)、”ノクターナル・アニマルズ”(16年)での印象はゼロコロナだった。

まあこれで決まりって事はないだろうがかなり有力である事は間違いないらしい、、。過去の例から行くとティモシー・ダルトンピアース・ブロスナンに決まった時に似ているかも?誰になるにせよこれがオレに取っちゃ映画鑑賞、唯一の楽しみなので本編を早く作ってくれないと、、

 

 

 

プッチーニ ”蝶々夫人” (19年)

メトロポリタンオペラで公演された”Madam Butterfly”、演出者にアンソニー・ミンゲラの名前を見付け今回初めて3時間超えのフル公演を最後まで堪能した。ミンゲラ監督はこれまでに”イングリッシュ・ペイシェント”等の劇場映画で高評価を得ているがそんな監督がオペラの演出まですると言うのが驚きだった。

 

でも待てよ、、確か2008年には54歳の若さで亡くなっているのだ、それが2019年に公演された”蝶々夫人”の演出が出来たんだろうか?ニューヨークのメトロポリタン歌劇場で収録されたのが2019年の11月だったハズで死後10年が経過しているぞ。

 

まあオペラ歌劇はこれまで嫌いではなかったのだがなかなか見るチャンスがないのが現実で今回だってやっとこさWOWOWが有料配信してくれた。WOWOWの解説にはこう書かれていた、、;

 

日本を舞台にした泣けるオペラの代表作。METの中でもひときわ輝く伝説的プロダクション、東洋美を凝縮したアカデミー賞受賞監督A・ミンゲラの幻想的な演出は必見。

鏡張りの天井に映る影と鮮やかな衣装のコントラスト、ヒロインの心理で刻々と変わる幻想的な照明、日本の文楽人形に着想を得た渾身の演出は東洋美を凝縮させたまさに夢の世界。本作には、故ミンゲラが演技指導をしている貴重なメイキングもあり、その中で「愕然とするほどの悲痛を描きたい」と話す彼が目指したものに胸を打たれる。

 

と書かれておりもうオレがとやかく言う必要はない、、それ程に素晴らしい舞台劇であった。歌唱は全てイタリア語だが日本語の字幕が入るので意味は全部判る。それにしても出演者全員の歌唱力に圧倒されてしまい見終わったこっちもかなり疲れた。

 

蝶々夫人に扮していたのがホイ・へー、ピンカートンにはテノール歌唱のブルース・スレッジと恐らくその世界では第一人者なんだろうが其処まではオレは詳しくない。でも舞台に釘付けされトイレ休憩も忘れて3時間半を楽しんでしまった。

 

何と言っても一番知名度の高い曲目は第二幕冒頭に歌われる”Un bel dì,vedremo(ある晴れた日に)でこれが最大の見せ場である。歌詞の意訳は、、;

 


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ある晴れた日に、私たちは見るの
一筋の煙がたつのを
水平線の遠くに

そして そのあとに 船が現れるの
そして その白い船
港に入り あいさつ(の空砲)をとどろかせます

 

アメリカへ帰ってしまったピンカートンの帰りを待ちながら高台の家で遠くに見える港を見下ろしながら蝶々夫人が胸の内を歌うアリアは何時の時代に誰が歌っても感動出来る名曲ではなかろうか?

 

実はボクがこよなく愛するイギリスの刑事ドラマで若い頃のモース警部を描いた”刑事モース、オックスフォード事件簿”ってのがある。そのシーズン1の第一話で挿入歌として使われているのだ。副題にも”ある晴れた日に”と付けられているのだが元有名なオペラ歌手が最後の舞台でこれを歌う、、それが舞台袖から眺める刑事モースと重なるようで実に素晴らしかった。恐らくプロのオペラ歌手の吹き替えだとは思うのだがその場面はYoutubeにもアップされておらず今だに誰か判らない、、。

 

ともあれ素晴らしいオペラに大満足した一夜でありました。

スピルバーグ監督、”ブリット”(68年)をリメイク

オリジナルの”ブリット”はスティーブ・マクイーンの代表作でピーター・イエーツ監督に取っても恐らく最高傑作と言えるのではなかろうか?60年代のサンフランシスコを疾走するブリット刑事のムスタングと追う殺し屋二人組の乗るダッジ・チャージャーのカーチェイスは迫力満点で今でも”フレンチ・コネクション”のポパイ刑事の追跡劇と並び映画史に燦然と輝いている。

 

 

その刑事ドラマの名作をスピルバーグ監督がブラッドリー・クーパーを主演に据えてリメイクすると発表された。これで”ウェスト・サイド・ストーリー”に続き60年代の名作を連続してリメイクする事になる。

個人的にはそんな名作に再挑戦するよりスピルバーグのブランド名を駆使してもっと斬新な構想で新しい映画作りをして欲しいのだがダメなのかな?

まさかオリジナルと同じ背景、舞台、設定って訳には行かないだろうがならば”ブリット”ってタイトルじゃなくても良さそうな気もする。しかしリメイクとならばカーチェイスは外せないし、仕事に厳しく、無口で寡黙なブリット刑事像はそのまま継承するきゃなかろう?

オリジナルではシカゴのギャング団組織の金庫から大金を盗みサンフランシスコへ逃げて来た会計担当の男が議会で証人喚問に出席するのを援助する上院議員と市警、ブリット刑事との対立が横糸になりその証人を抹殺する目的で送られて来た殺し屋と死闘を演じるストーリーだった。

その背景には当時の裏社会、犯罪を利用して自身の出世に利用としようとする上院議員が三つ巴の絡み合いを演じる訳で犯罪憎し、しかしそれさえも利用すべしと言う明確なテーマがあった。それを現代に持って来るとなると構図はトランプ元大統領VS古き良き民主主義社会って事にでもなるのか?

まあその辺りはどんな構図になるのか興味はあるのだが果たしてブラッドリー・クーパーがスティーブ・マクイーンの魅力に迫れるのか?先の”ウェスト・サイド・ストーリー”でベルナルドを演じたデイビット・アルバレズがオリジナルでベルナルドを演じたジョージ・チャキリスの足元にも及ばなかったのと同じ事になるのではないかと心配である。