”オールド・シネマ・パラダイス”、、時々新作も

長年”映画と愛猫とオーストラリア”だったが札幌へ軟着陸し愛猫も亡くしこの新タイトルで心機一転だ。

”国際諜報局”(65年)

これぞ”オールド・シネマ・パラダイス”を地で行く映画の真骨頂だ。公開された時の邦題は原題をそのままに”イプクレス・ファイル”だったが後年何と改題され”国際諜報局”になってしまった。(日本で公開された時期は不在で原題の”The Ipcress File”として見ていたので後年、日本で改題されたと勘違いしていた。)

007シリーズのヒットに興じて制作されたスパイものだが此方は原作がレン・デイトンイアン・フレミングとは違い“派手”なところなど一切ない“質素”なスパイ映画である。ハリーはそりゃ無類の女好きだしグルメ、ここまではジェームス・ボンドに通じるところがあるのだが新しい任務に着く時に“これで給料は上がるんですか?”と上司に聞いたり諸経費の手続き方法を確認するなどスパイあるまじき問答が続く。しかも近所のスーパーマーケットで買い物かごを押したりしているシーンがあったりで誠に庶民的なスパイである。by guch

 

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主演のマイケル・ケインは当時32歳とまだ若い、実直そうながら頑固そうでしかもメガネまで掛けている、当時スパイの主役がメガネを掛けているって事は皆無だったのでいったい殴り合いになったらどうするのかと余計な心配をしてしまった、。殴り合う前にちゃんとメガネを外して胸のポケットに仕舞うって事でもやもやしていたのが晴れた。それと美貌の女スパイ、ジーン(スー・ロイド)との絡み、、彼女が“彼方は46時中メガネを掛けているの?”と問いただす場面、ハリーはそれに答えて“イヤ、寝る時は外すさ”、、そこでジーンがおもむろに彼のメガネを外してやる、、具体的に描かなくても暗にその後の展開を観客にそっと教えると言う洒落た演出もあった。

 

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このジーン、情報部ではハリーより先輩なのだがご主人を東京で亡くした後、上層部に抜擢され今度は自分がスパイになった経緯が語られる、実はハリーの直属の上司から新任のハリーを見張るように言いつかって送り込まれたのだが結局ハリーとは良い仲になってしまう。こんな魅力的なスパイなら二重でも三重でも拉致でも誘拐でも拷問にでもかかっても良い、、まあ結果、ハリーもそうなるのだが、、、。

展開はイギリスの著名な科学者が相次いで不可解な行動をとり始める。なかでも著名な教授が車内から拉致され護衛の死体が駅構内で発見されて情報部は色めき立つ。

2ヶ月も人家を見張る地味な仕事から上司に抜擢されこの捜査班に加わるハリー・パーマー、早速独自の捜査を開始する。そんな出だしで全編快調、彼の暮らしぶりからロンドンの街角や西東、入り乱れてのスパイ合戦、敵のアジトと思われる場所から発見された“イプクレス・ファイル”と記された録音テープの切れ端、これが拉致された科学者たちを洗脳する為に使われていたテープだと判明、そしてその敵との金銭での人質交換、携帯電話のやり取りやGPSだのコンピューターを使っての追跡から大掛かりなカースタントやアクションも何もないがじっくりじわじわとスパイの世界に引き込まれて行く。

もう半世紀も昔の映画だが昨日今日制作された映画よりずっとずっと、ずーっと秀作だ。by guch

 

今の基準から行けば派手なカーチェイス、ガンアクションにCGだってありゃしない、、007シリーズやトム・クルーズの”MI”に比べたら制作費なんかは恐らく主演男優さんの出演料くらいじゃなかろうか??でもウィットは利いているし主要な俳優さんの数も限定されるのでその分、露出度が高いのだ。こんなスパイ映画群、”寒い国から来たスパイ”とか”スパイ・ゲーム”、”裏切りのサーカス”、、、、等々何れも甲乙などつけられるものじゃない、。