”オールド・シネマ・パラダイス”、、時々新作も

長年”映画と愛猫とオーストラリア”だったが札幌へ軟着陸し愛猫も亡くしこの新タイトルで心機一転だ。

”深夜の告白” (44年)

これは長い間見たい、見たいとオーストラリアでもFOXに願い出たり書庫を散々探ったが遂に放映される事もなくビデオライブラリーにも見つける事が出来なかった。恐らくアマゾンプライム辺りなら買えたかも知れないがそれをBSNHKが放映してくれ苦節うん十年、やっと見る事が出来た。

監督はビリー・ワイルダーで原作はジェームズ・ケインが書いているが映画化では脚本をレイモンド・チャンドラーが手掛け実に見事な”フィルム・ノワール”になっている。どんでん返しの金字塔的な映画、”情婦”が57年の映画だったがビリー監督はデビューから僅か4作目、”情婦”より13年も前にこれを撮っていたんだ。

背景は40年代のロスアンジェルス、保険金会社に勤めるやり手の営業マン、ネフ(フレッド・マクマレイ)は石油の採掘で財産を作った実業家ディートリクソンの自動車保険の契約更改に向かう。そこで出会ったのは若く美しい後妻のフェリス(バーバラ・スタンウィック)で一目でネフはフェリスの魅力に惹かれてしまう。

 

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そんな彼女との出会いが語られるのは映画の冒頭、深夜に猛スピードで自分の事務所へ帰り着き速記録音機に”深夜の告白”と言う形で過去を振り返りながらの”半落ち”場面になっている。更にはフェリスの魅力に負けご主人が知らないうちにこの映画の原題になっている”Double Indemnity”(倍額保障増保険)に加入させた経緯が語られる。

要するにフェリスと共謀してご主人を抹殺し保険金をせ占めると言う計画なんだがその行く手を阻むのはその保険会社の選任調査員、キーズ(エドワードG・ロビンソン)や先妻の娘、ローラ(ジーン・ヘザー)などが参画して来る。それにどうも胡散臭いローラの恋人、ニノ・ザゲティたち、、。

普通の保険金詐欺なら日本の”〇〇サスペンス劇場”とか”〇〇ミステリー”でもお馴染みだがそこは制作から70年以上が経過していてもそうは簡単に超えられない脚本、編集、演技力、そしてそれら全部を取り仕切った監督の圧倒的な裁量と素晴らしい感性があるのだ。

愛し合うネフとフェリスの計画は実に綿密に計画され熟練調査員のキーズでもなかなか真相に辿り着けない。最も保険会社としては何とか保険金の支払いをしないで済むように色々と調査をし万全を期すのだがそれを実行したのはやはり腕利きの保険外交員のネフだ。キーズは何とか真相へ、、と思うがネフは何とか真相を明かされないようにと二人が違う面から必死になって行く様子がこれまた実に見事だ。

これまで数回リメイクされているようだが80年代以降はそんな気配もない、、そろそろハリウッドでやっても良いんじゃないかな?でもやっぱりこのオリジナルは超えるのは大変かも知れないなあ~、。

そんな展開でモノクロ画面だって事もすっかり忘れてしまう犯罪映画でした。映画が米国内で公開された44年は6月には連合軍がノルマンディへ上陸を果たし”史上最大の作戦”が遂行中、日本軍はサイパンで全滅、沖縄にも米軍のB29が押し寄せていた激動の時代だったんだ、。

完成度:☆☆☆☆