”オールド・シネマ・パラダイス”、、時々新作も

長年”映画と愛猫とオーストラリア”だったが札幌へ軟着陸し愛猫も亡くしこの新タイトルで心機一転だ。

”007 カジノ・ロワイヤル”(06年)

イアン・フレミング爺が書いたオリジナル原作、007/ジェームズ・ボンドを主人公に据えた長編小説は1953年に初めて出版された。そのタイトルが”Casino Royale/You Askd For It”だった。

1967年に映画化されたモノはジェームズ・ボンド役をデイビット・ニーブンが演じ何とも珍妙なパロディー映画として記憶に残る事になった、、唯一高評価だったのはダスティ・スプリングフィールドが歌った”ルック・オブ・ラブ”、それと全編をハーブ・アルバートが音楽を担当した事くらいか?

そして2006年にそれまでピアース・ブロスナンが演じていた割とシリアスなボンドを更にリブートして高速用ハイオクタン・ガソリンを注入した新・007としてダニエル・クレイグが大抜擢され、演じる事になった。思えば今から14年も経過しているのでダニエルも38歳と大分若い。イアン・フレミングが描くところのボンドは劇中38歳の設定なのでまさにドンピシャリ、2020年になって見直すと実に若いし体力的にも一番乗っている時期だった。

 

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"Casino Royale" 2006

オリジナルに出て来る悪役のル・シッフルはそのままだがこの新作にはスメルシュもスペクターも出て来ない。その辺は近年のリアル・テロ組織を巧く映画に使い彼らから現金を預かりそれを運用し組織のマネー・ロンダリングみたいな事に手を染めているル・シッフルが登場して来る。

それらの演出は実に見事でオープニングのダブル・プレビュー・シークエンスにもモノクロ画像で007が最初の暗殺2件を遂行する場面と携帯電話を持って逃げまくり最後には大使館での容疑者暗殺、爆破に繋がっている。確かに荒唐無稽ではあるがダニエル・ボンド初登場に賭けたプロデューサー二人、マイケル・ウィルソンバーバラ・ブロッコリの大勝利ではなかろうか?

それともう一つ特記すべき演出はジェームズとヴェスパー(エヴァ・グリーン)の絡みで、これは過去のどの作品でも007がこれ程に相手と恋に落ちる場面はなかったような、、過去の作品で一番として評価の高いショーン・コネリー版、”ロシアより愛をこめて”や”ゴールドフィンガー”でも二人が愛を語る場面はなかったのでこの”カジノ・ロワイヤル”は究極の”スパイ・ロマンス映画”と言っても過言ではないのでは?

特にヴェスパーが初めてモンテネグロへ向かう列車内でジェームズに会う場面などは互いの主義主張が素晴らしく(無論これは脚本の良さなんだが)その場面をスマホで録画して言語と字幕の対比までやってしまった。実はこの投稿でそれを証明しようと思ったのだが英語のセリフは簡単にコピペが出来るが字幕の方が大変で、、途中で諦めた。

 

 

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Vesper : What else can you surmise, Mr. Bond?

他にどう推察します。ボンドさん?

James : About you, Miss Lynd? Well, your beauty's a problem. You worry you won't be taken seriously.

キミの事かい、ミス・リンド?う~ん、君の美貌が問題、、自分のマイナスだと思っている。

Vesper : Which one can say of any attractive woman with half a brain.

そうね、脳みそがある女はそう思うわ、。

James : True. But this one overcompensates by wearing slightly masculine clothing. Being more aggressive than her female colleagues. Which gives her a somewhat *prickly* demeanor, and ironically enough, makes it less likely for her to be accepted and promoted by her male superiors, who mistake her insecurities for arrogance. Now, I'd have normally gone with "only child," but, you see, by the way you ignored the quip about your parents... I'm gonna have to go with "orphan."

そう言う女は男っぽい服を選び女性にしては攻撃的物腰もトゲトゲしい、皮肉にも男性上司は彼女の不安を怠慢と勘違いする。そして彼女を正しく評価しない、、。

そう言う女性は一人っ子が多いが、。さっき両親の話になるとしなかった。っとなると君は孤児?

Vesper : All right... by the cut of your suit, you went to Oxford or wherever. Naturally you think human beings dress like that. But you wear it with such disdain, my guess is you didn't come from money, and your school friends never let you forget it. Which means you were at that school by the grace of someone else's charity - hence that chip on your shoulder. And since your first thought about me ran to "orphan," that's what I'd say you are.

Vesper : Oh, you are? I like this poker thing. And that makes perfect sense! Since MI6 looks for maladjusted young men, who give little thought to sacrificing others in order to protect Queen and country. You know... former SAS types with easy smiles and expensive watches.

 

判ったわ、貴男のスーツから推察するとオクスフォードかそれに近い有名校出身、でもイヤイヤ着ている。貧乏だったから何時も仲間外れで学費は誰かのお情け、それが心のしこりになっている。私を孤児と決めつけたけど貴男がそうなんじゃない?図星ね。

私もポーカーが出来るわね。貴男は順応性に欠けているからMI6に採用女王とお国のために人殺しが出来るタイプ、笑顔と高級腕時計を着けた元特殊部隊工作員

 

Vesper : Rolex?

James : Omega.

Vesper : Beautiful. Now, having just met you, I wouldn't go as far as calling you a cold-hearted bastard...

会ったばかりの人を冷血漢とは呼ばないわ。

James : No, of course not.

勿論さ、そんな事は言わない。

Vesper : But it wouldn't be a stretch to imagine. You think of women as disposable pleasures, rather than meaningful pursuits. So as charming as you are, Mr. Bond, I will be keeping my eye on our government's money - and off your perfectly-formed arse.

でも想像は出来るわ。女性にはのめり込まずその場限りの快楽だけの付き合い。貴男は魅力的だけど私はその恰好良いおしりより政府のお金に目を光らせているわ。

James : You noticed?

判った?

っとまあ実に見事な脚本なのです。字幕にするとやはりその微妙なニュアンスまでは読み取れないのが残念だ、、当然字数の制限だってあるんだしセリフを全部字幕に起こしてたらもう読む方は目が回ってしまう、。だから吹替さ、、何てのはナシですよ。

 

兎に角、この列車での二人の出会い、これが中盤、終盤へと”愛の物語”として進んで行くとしたらこりゃもう007のアクション編とは言えないかも?それにしてもこの”カジノ・ロワイヤル”はこれまでのシリーズ24話中、一番の出来である事はそのストーリーの展開、仕掛け、次作へと続くエンディングとドレを取っても素晴らしいジェームズ・ボンド作品になっている。アア~、今日は疲れた。