”オールド・シネマ・パラダイス”、、時々新作も

長年”映画と愛猫とオーストラリア”だったが札幌へ軟着陸し愛猫も亡くしこの新タイトルで心機一転だ。

”レイズ・ザ・タイタニック”(80年)

この映画の元ネタになっている原作はクライブ・カッスラーが書いた一連のダーク・ピットシリーズの初期の頃の作品で原作が翻訳された時は”タイタニックを引き揚げろ”(原題は”Raise The Titanic”)だった。因みにクライブ・カッスラーの執筆歴は60年代の半ば頃からだがは73年頃からこのダーク・ピットを登場させ海洋劇のヒーローとして007張りの大活躍を繰り広げている。

 

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シリーズは合計30冊以上が出版され世界中で大ヒットしているのだが映画化されたのはこれと”死のサハラを脱出せよ”(映画化では”サハラ”だけで邦題の副題に脱出が付く)だけだ。

翻訳は一貫して中山善之だが末尾に”せよ”とか”追え”とか指令調になっているのが特徴だ。ベストセラーとしてもてはやされていた頃はどの空港の売店でもこれとかパトリシア・コーンウェルが描くところのスカーペッタ・シリーズの単行本が売られていたし機内には必ずやそれらを愛読している乗客がいたものだ、、今やすっかり文庫本は過去のものなのか、同じ読むでも近年は機内ではキンドルとか電子ブックが主流らしい、。

まあこの本筋も奇想天外と言っちゃそれまでだが冒頭、北極圏ロシア領の凍り付く原野から特殊で貴重な物質を含む鉱山が盗まれる(架空の物質)、、その貴重な物質をイギリスまで運び出し船に乗せ港を出たのは良いのだがその場所を辿るとサウザンプトンで船名は”タイタニック”だった事が判る、。原作はもっともっとずっと緊迫してミステリアスだったのだが映画じゃその辺の描写がちょっと物足りない。

そしてサンデッカー提督(ジェイソン・ロバーツ)と言うNUMAの長官(これも全く架空の団体)が登場、そして部下のダーク・ピット(リチャード・ジョーダン)がそのタイタニックを探しに大掛かりな船団を組み北大西洋へ乗り出して行くと言う冒険劇になっている。

原作を上手く生かしそれなりの配役で元ネタを生かせばかなり面白いシリーズが出来たんだと思うと実に残念だ。007を誕生させたイアン・フレミングだって自分が実生活で垣間見た事を脚色しただけなのに没後、半世紀以上も継続して映画化が続き映画界に多大な影響を及ぼしているとは想像も出来なかったハズだ。まさにこれが脚本家でも監督でもなく主演を演じた俳優の功績以上にプロデューサーの手腕なんだろうか?

このダーク・ピットにしてもそれなりに先遣の目が利く野心的なプロデューサーの目に留まっておればジェームス・ボンド超えも可能性が無かったとは言えない?