イングリッド・バーグマンが今度はグレゴリー・ペックと恋に落ちるサイコチックなスリラー、監督はアルフレッド・ヒッチコックだ。
背景はどうやらセリフからいくとバーモントでニューヨークに近い架空の医療施設でそれも精神病棟だ。その施設で病理学者として診察もする女医さんがコンスタンス(I・バーグマン)だ。映画の冒頭ではその療養施設に新任の病院長としてやって来たのがエドワーズ博士(G・ペック)、、まあこれが一目惚れって典型的なやつなんだが初対面で二人は一気に恋に落ちる。
原題の”Spellbound”と言うのはうっとりと相手の魅力に目の焦点を失うみたいな意味なのでてっきりこの場面を強調したくて付けたタイトルだと思っていたのだが違った。このエドワーズ博士は”白地に黒い縦じま模様”を見ると動悸が激しくなり失神するようなのだ、、最初は夕食のテーブルでコンスタンスが何気なくテーブルクロスに描いた模様に激しく反応してしまう、、次には彼女のガウン、そして今度はベッドカバーの模様にも動揺してしまうのだ。
疾患診療もするコンスタンスはこれは何かから逃げ惑っている反応ではないのかと推察するのだが次に彼はどうやら記憶喪失で本当の自分の名前さえ覚えてないという事に気が付く。流石にヒッチコック爺さんはこのじわじわとやって来る緊迫感を盛り上げるのが上手い。コンスタンスが書斎で彼の著作、出版されている医学書を手にすると其処にあるエドワーズ博士の署名とこの彼が書いた字体が全く合致しない。
其処からいよいよサイコチックなミステリーになって行く。私は誰、貴方は誰って展開になるのだが記憶の断片を繋ぎ合せるとどうもこのエドワーズを名乗る人物は”俺が本物のエドワーズ博士を殺した”と言いだすのだ。
其処から先はネタバレになっちゃうので詳細は書けないが二人は愛の逃避行とばかりバーモントを出てニューヨーク、、更にはコンスタンスが以前、恩師と仰いだアレックス博士を頼ってニューヨークを北上して行く。そして衝撃の結末へ向かって”大滑走”をする羽目になる、そんな道中コンスタンスはこの謎の男に襲われるんじゃなかろうかアレックス博士も道連れにされたらどうしようと、恐怖に怯えるのであります。
制作されたのは1945年、流石にオレだって生まれる前だ、イングリッド・バーグマンが30歳、グレゴリー・ペックが一つ違いと映画界ではこの二人の美男美女振りは最盛期だったんじゃなかろうか?映画館にこの二人を見たいが為に押し寄せたファンの気持ちが良く判る。
ではこのところイングリッド・バーグマンの映画が続いているので勝手にボクの好きなベストファイブを、、;
”ガス燈”(44年)
”誰が為に鐘は鳴る”(43年)
”追想”(56年)
”汚名”(46年)
”白い恐怖”(45年)
”カサブランカ”(42年)
ありゃ5本じゃ収まらなかった、、どうしても一番輝いていた40年代からの作品になってしまう。