”オールド・シネマ・パラダイス”、、時々新作も

長年”映画と愛猫とオーストラリア”だったが札幌へ軟着陸し愛猫も亡くしこの新タイトルで心機一転だ。

”グリーン・ブック”(18年)

この映画は日本へ帰ってから札幌の駅前映画館で見たのだが先日J:COMで放映されたのを録画して置いた。家内が見たいというので録画したのだが、、最初の3分程度を見て”私、これ見たわ、、”だよ、だから一緒に見に行ったじゃないか、と言ってもオレの言葉を信じてなかった、っでまあ折角録画したのでオレが途中から引き継いだ。

主人公はトニーとドクター・シャーリー、アメリカ南部をグルリと回るロードムービーなんだがこれが実に良く出来ている。完全にオレのストライクゾーン、ド真ん中の映画だ。何と言っても時代設定が1962年でニューヨークはブロンクス、、この翌年の10月にワタシがそのブロンクスの地に初めて足を踏み入れたのだ。

 

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冒頭出て来るトニーの勤務先、ナイトクラブの”コバカバーナ”はバリー・マニロウが歌って大ヒットした曲の舞台だし、ドクター・シャーリーが住んでいたのはかの有名な”カーネギーホール”の上層階だった。そんな背景がすっかり自身のセンチメンタル・ジャーニーになってしまう、。

トニーを演じたヴィゴ・モーテンセンは”ロード・オブ・ザ・リング”からは想像も出来ないほどのイタリアンに変身していたしドクター・シャーリーを演じたマハーシャラ・アリは言葉使いから身だしなみ、その教養を備えた風情はトニーとは正反対で実に対照的に描かれている。

兎に角、無鉄砲なトニーは大食い競争でホットドッグを26本も平らげるしケンタッキー・フライド・チキンはデカいファミリー用バケツ仕様を買って来るし、モーテルじゃこれまたデカいピザを半分に重ねていきなりガブリと、ナイフとフォークを使って食べるドクター・シャーリーとは正反対だ。

この水と油の性格、それプラス肌の違いが歴然としている二人が8週間の演奏旅行中に徐々に互いを認め合い無二の親友としてその後、長い友人付き合いになって行く、。しかもそれが事実となるとこれ以上に観客を引き付ける映画の題材は思いつかない、。

この僅か半世紀前でも歴然と残っていた南部での黒人差別、宿泊場所や食事を提供する場所にトイレさえも”黒人専用”とされた区域が存在していた事が俄かに信じられないのだが(もう東部ではそんな差別は無かった)それでもドクター・シャーリーは南部を回る演奏旅行にはレコード会社からの要請で招聘されこのコンサートツアーを成功裏に終えている。

最初は互いに居心地の悪い思いでスタートした演奏旅行だが次第にそのトニーの粗野で不作法な仕草や言動がドクター・シャーリーの振る舞いや教養に感化されて行き毎日ニューヨークの愛妻に書いていた手紙にも変化がみられるようになって行く、、この辺りは実に微笑ましい。脚本が良いのでこの辺りの二人の会話には笑い転げてしまう。

逆にドクター・シャーリーは家族とは疎遠で独身の身、毎晩決められたようにウィスキーのカティ・サークを一本用意させ自身の殻に閉じこもってしまうような生活からするとトニーのような典型的なイタリアンファミリーを持ち、大家族に囲まれ、愛妻と二人の子供に囲まれている身が羨ましく感じ始めるのだ。

終盤に来てこの辺りの二人の微妙なやり取りが実に説得力があり見ている側もホッコリする名場面になっている、。

そう言えば2019年のアカデミー賞じゃ堂々と作品賞を受賞したんだった、、、オレがそんなに気張ってこれは秀作だぁ~、、何て言う必要は全くないのだ。これとか”海辺のマンチェスター”等々、、この頃まではボクの好みとアカデミー賞の会員の皆さんとは意見が一致していたんだがなぁ~、。