”オールド・シネマ・パラダイス”、、時々新作も

長年”映画と愛猫とオーストラリア”だったが札幌へ軟着陸し愛猫も亡くしこの新タイトルで心機一転だ。

”ヒンデンブルグ”(75年)

この映画”The Hindenburg”はドイツの巨大飛行船を扱ったもので史実に基づいて書かれた原作を巨匠ロバート・ワイズが監督したものだ。主演にはジョージ・C・スコット、そして伯爵夫人としてアン・バンクロフトが配役されている。

まあ一種のパニック映画になるのだが時代背景は1937年、フランクフルトを出航してアメリカはニューヨークへ航行する数日を描いている。背景よし、題材よし、監督よしなんだがどうも見終わってスッキリしないのだ。そりゃ悲劇の飛行船だからハッピーエンドには出来ないものの道中の緊迫感が足りないし、爆弾を仕掛けたと言う整備員の扱いやその犯人を特定するまでのプロットがビックリする程にツマンネーのだ。

 

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ロバート・ワイズ監督に敬意を表して最後までちゃんと見たのだが良かった面を探すのに苦労しちまった。冒頭はアメリカのミルウォーキー、何やら女性が手紙を書いている。それにはどうやらその”ヒンデンブルグ号を爆破するぞ、、”と警告文になっているようで次のシーンでは一気にドイツ軍の司令部に飛び、今回の飛行に備えて特別に警備責任者を任命してアメリカまで道中の安全を保持させようとする。その任務に抜擢されるのがリッター大佐(G・C・スコット)でゲシュタポの秘密工作員と同室になる。

この手の常套手段として一癖も二癖もある乗客が乗り合わせ、群集劇風にはなっているがキャラクターの性格描写が不足している。一応怪しいヤツを炙りだそうとするのだがそれがどうも中途半端で一番怪しいのは乗船している整備員ってのがシマリがないのだ。それに動機も何となくあるようでない、みたいな中途半端なものなので見ている側にはちっとも緊迫感が迫って来ない。

そう言えば実際にこの墜落炎上事件が起きたのは1934年の5月6日、ニュージャージーでの事だった。しかし当時の事故調査委員会ではこの事故が故意に起こされた爆破テロとは断定していないのだ。静電気の発生から水素ガスに引火して爆発を引き起こした説や鉄骨の組み具合に不備があったとか諸説ある。このロバート・ワイズ監督版では整備士の一人が小型時限爆弾を仕掛けた事になっている。

それにしても終盤の爆破シーンに繋がる場面から画面が突然モノクロになってしまい明らかにこりゃニュース映像を要所要所挿入しているんじゃなかろうか、と思わせる演出にはかなり抵抗を覚えた。記録によると乗員、乗客97名が乗り込んでいてそのうちの62名の生存が確認されたようだ。

もっと迫りくる時間と爆破予告、それに犯人捜しを縦糸に緊迫感ある演出が出来なかったのかな?