”オールド・シネマ・パラダイス”、、時々新作も

長年”映画と愛猫とオーストラリア”だったが札幌へ軟着陸し愛猫も亡くしこの新タイトルで心機一転だ。

”ホテルローヤル”(20年)

何故か分厚い原作を買ってしまったのはまだ札幌が雪に埋もれている時期だった。何気なくNHKの番組でインタビューに答えていた直木賞を受賞したばかりの桜木紫乃氏がとても新鮮で魅力的に感じた。それに北海道も釧路市出身で実際にご実家はラブホを経営されていたと伺ってからは興味津々だった。

 

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アメリカのNY州にあるコーネル大学、其処のホテル経営学科ではそのラブホってのは世界を見回しても他に類を見ない程に収益率の高い営業形態でそれを検証するコースまである。コスパの算出から立地条件、建設費、更には一室あたりの売上予想額、修理修繕費の積立金確保と幅広い学習内容になっていて当時15人程度のクラスの中には日本人はオレだけ、、教壇に立つ教授から何度となく配布された資料の検証、補足説明、そして概略説明や運営方法を伝授して欲しいと持ち上げられ檀上にも立たされた。

日本人なら全員が行った経験があるんじゃない、、と思われるのが嫌だったし”オレは入った事がない”、とクラスの全員に納得させるのに余計な時間を費やされたっけ、。Y教授も実に人が悪い、オレは都内でも有数のシティ・ホテルから来ていると言うのに知らんぷりで聞く耳を持っていなかったのだ。

現に東京都内の一流ホテルじゃ宿泊費の売り上げの数倍を結婚式やその他宴会で確保しているのだぞ、と言う説明をなかなか信じて貰えなかったっけ。無理もないアメリカ国内のホテルじゃ宿泊に占める収益が全体の80%以上になっている時代だった。

ああ、イケネーこりゃ脱線した。その現実社会での桜木紫乃が映画では田中雅代になりそれを波瑠が演じている。原作はてっきり長編小説だと思っていたのだがそうじゃなくて短編集、映画でもオムニバス形式でその”ホテルローヤル”でつかの間の休息を得る主に3つのカップルの群像劇だった。

主役の波瑠は知ってはいたが映画でお目に掛るのは初めてかも知れない、。メガネ姿は妙にご本人に似ている雰囲気だが若い時はあんなに無口だったんだろうか?映画化はかなり原作に近く、、と言うかそっくりそのままなのでナニがどうなるかはすっかりこっちもお見通し、衝撃的な違いは発見出来なかったし予想通りに淡々と各エピソードが描写されて行く。

こんな場合は原作を先に読んじまった事でどうなるかを予想する面白さは半減する。字面で勝手に判断していた登場人物がかなり人物像としてマッチしているのは嬉しいし役者さんの別の一面を垣間見る事が出来た、、とは言ってもオレの知っている俳優さんはかなり限定されているので先入観は一切なかった。

海外では古くはアーサー・ヘイリー原作の”ホテル”、近年ではウェス・アンダーソン監督の”グランド・ブダペスト・ホテル”等々秀作が多くある何れも多くの宿泊者やホテル側の人間が登場しサスペンス調ありコメディありで絢爛豪華な背景が見どころだった。まあラブホが舞台じゃそれ程多くの登場人物は想定出来ないし此処は桜木志乃のトゥルーストーリーって事に落ち着くんだろう。