この映画の背景はニューヨークの大手商品取引金融機関であの世界を震撼させたリーマン・ブラザースの金融危機顛末をモデルにした映画で原題もそのまま”Margin Call”だ。本国ではかなり評判は良かったのに日本では劇場公開される事もなくいきなりDVDデビューになったらしい。
ある金融機関でいきなり解雇を宣言されるのが危機管理部門で責任者を勤めていたエリック(スタンリー・トゥッチ)で私物をまとめて出て行く時に信頼出来る部下にUSBメモリーを渡して去っていく。
そしてそのUSBには会社が保有する全資産と過去の取引データ、それに伴う資産運用実績が記されていた。エリックは自分なりにかなり詳細にこのデータを分析していたようでやりかけだった計算式を進めて行くと何と会社が保有する全資産が近いうちに25%も下落してしまう事が判る。
事態は急を要する、そこで直属の上司サム(ケヴィン・スペーシー)に進言し解決策を講じる事になるのだが今度は危機管理部門の専門家サラ(デミ・ムーア)にも話が行き更に上層部に進言する。
その次に登場して来るのが統括責任者のジャレッド(サイモン・ベイカー)で真夜中になって常任役員会を招集する事になる。そして又、経営トップのジョン(ジェレミー・アイアンズ)が深夜ヘリコプターでビルの屋上へ到着、、っと次から次へと会社の首脳陣が集まって来るのだ。この辺りの演出は実に巧みで最初は疑念を抱いていた分析結果が何時の間にか現実のものとなり全員が対処方法を練り直す。
既に夜中の2時半でそれから最初にUSBを作成したエリックを連れ戻すべく自宅へ急行するのだが本人は”オレはもう首になった人間だ、君らで対処しろ”と冷たく断られてしまう。そして夜が明け、朝からが勝負だ。役員会の承認事項として損金を出しても何とか不良債権を売ってしまえ、と言う指示にトレーダーたちは一丸となって取り掛かる、、即ちこれがリーマン・ショックの前兆と言う訳だ。
確かに日本じゃ公開されなかった理由は判る、、でも配役は適格でケヴィン・スペーシーやジェレミー・アイアンズ、それにデミ・ムーアも存分に存在感を示している。そもそもアメリカ、、だけじゃなくて金融取引の仕組みが理解出来ないと混乱するが要するに自社が保有している財産以上に不良化しそうな債権を保有しているのでそれをある程度売却しないと会社の存続が危うくなる、と言うお話だ。
僅か一日半の出来事に過ぎないがこうして”ババ抜きのババを他社へ売買”した事からかつてない金融危機がアメリカを中心に広がり他国へも飛び火した事は事実である。まあ日本でも証券会社が先物買い投資で失敗し焦げ付き発生って事があるがそのスケールがデカくなるとこんな事態が起きてしまう。
配役も良かったし緊迫感ある内容は期待以上に楽しめた。