”オールド・シネマ・パラダイス”、、時々新作も

長年”映画と愛猫とオーストラリア”だったが札幌へ軟着陸し愛猫も亡くしこの新タイトルで心機一転だ。

”警視グレイス”(21年)

本格派イギリスの犯罪ミステリーで本邦初公開だそうな、、元ネタはベストセラーになった”ロイ・グレイス”シリーズらしいがこれまでに”刑事モース”や”ルイス警部”等で脚本を担当したラッセル・ルイスなので見ないと言う選択肢はゼロだ。

原題の”Grace"ってのはてっきり女性の名前だと思っていた。グレイス・ケリーを始め知人にもいるがラスト・ネームってのには意表をつかれた。そのグレイス警視は6年前に奥さんが突然失踪してしまいそれっきり消息が判らないと言う設定で舞台はロンドンではなくて風光明媚な海岸の街、ブライトンである。

冒頭、結婚を控えた若いマイケルは仲間の3人と独身生活最後の飲み会で盛り上がっていた。そしてバンを運転し森の中へ、、悪ふざけの延長で荷台にあった棺桶にマイケルを入れホースを一本通しただけで釘を打ち付け土中へ落としてしまう。3人は冗談の積りで2~3時間したら戻って来る予定だったが何と酔っぱらい運転の挙句、交通事故を起こしてしまい二人は死亡、もう一人は意識不明のままバンが路肩から崖下へ落ちた状態で発見される。

 

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そんな出だしでありゃこれじゃ警視殿の出番がない?と思いきや事故にあった連中にはもう一人仲間がいたんじゃないか、、と前夜彼らが飲み明かしていた酒場からの情報で捜査活動に、。それにマイケルが結婚するハズだった相手の女性は泣くばかりでどうにも要領を得ないしもう一人マイケルの同僚で仕事上のパートナーでもあるマークは当日の飲み会へは出席できずにいた事が判って来る。

副題に”届かぬ声”とあるのだがその辺りからやっとその意味が判明する。それは仲間同士で使っていたウォーキートーキーの片割れがどうした事かマイケルの棺桶に、そしてもう一方が事故現場から密かに何者かの手によって盗まれているのだ。そのウォーキートーキーを見つけたマイケルは必死に話し掛けるのだが誰からも応答がない。事故現場にあったのなら警察の事故処理班が答えているのだが、、。

そんな背景でグレイス警視(ジョン・シム)と同僚のブランソン刑事(リッチー・キャンベル)は不可思議な事件の捜査に没頭して行く。このグレイス警視は一風変わった男で捜査に”心霊術”を取り入れたりした過去があり警察内部でも批判が出ている。実際に真犯人逮捕にそんな手法を使ったのか、、と非難され審理中の殺人事件でもその可否が焦点になったりと警察の信用問題にも発展しそうな経緯があるのだ。

今回もマイケルの所在を確かめる為にその”占い師”の元を訪ねたりするが全体的にはやはり英国風の極上な犯罪ドラマに仕上がっていた。思い過ごしから一転二転して真犯人に辿り着く手法は健在だ。

やはり脚本がしっかりしているのでアクションなど無くてもちっともダレないし署内で浮いても全然動じないグレイス警視は同僚のブランソン刑事を立てながらも自身では核心をつく捜査を諦めず短い会話の中から重要なヒントを得てクライマックスでは海外逃亡寸前の真犯人確保に漕ぎつける。

う~ん、こりゃ継続して制作されても良いような、、第一6年も前に突然失踪した奥さんの所在が不明のままじゃ終われないだろう??見ている側だって要求不満になっちまうぜ。このグレイス警視を演じたジョン・シムは以前”ホワイト・ドラゴン”でも主演を演じていたが最後の最後までどうしても風貌が”トランスポーター”シリーズでフランスの警部役で出て来るフランソワ・べーレランドに似ていて目が離せなかった、。