1931にイギリスで生まれたDavid John Moore Cornwell(本名)は63年に初めてスパイの長編小説を書き上げた。その二年前にジョン・ル・カレと言う作家名で書いた”死者にかかってきた電話”が本当のデビュー作だが63年の”寒い国から帰ったスパイ”が大ベストセラーになってしまい二作目が処女作とされているのだ。
2020年に89歳で亡くなるまでに多くのスパイ小説を書いているのだが映画化、テレビでのシリーズ化された作品は半端なく多い事でも知られている。
以下の作品群は何れも映画化され上々の評価を得ているのだが中でも”寒い国から帰ったスパイ”(リチャード・バートン主演)、”ロシア・ハウス”(ショーン・コネリー主演)、”裏切りのサーカス”(ゲイリー・オールドマン主演)、”誰よりも狙われた男”(フィリップ・シーモア・ホフマン)はダントツで秀作だった。
- 寒い国から帰ったスパイ(1965年) - 『寒い国から帰ってきたスパイ』の映画化。マーティン・リット監督。
- 恐怖との遭遇(1966年) - 『死者にかかってきた電話』の映画化。シドニー・ルメット監督。
- 鏡の国の戦争(1968年) - フランク・ピアソン監督。
- リトル・ドラマー・ガール(1984年) - ジョージ・ロイ・ヒル監督、ル・カレ共同脚本。
- ロシア・ハウス(1990年) - フレッド・スケピシ監督。
- テイラー・オブ・パナマ(2001年) - 『パナマの仕立屋』の映画化。ジョン・ブアマン監督、ル・カレ共同脚本。
- ナイロビの蜂(2005年) - フェルナンド・メイレレス監督、ル・カレ脚本監修。
- 裏切りのサーカス(2011年) - 『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』の映画化。 トーマス・アルフレッドソン監督。
- 誰よりも狙われた男(2014年) - アントン・コービン監督。本人がカメオ出演している。
- われらが背きし者(2016年) - スザンナ・ホワイト監督。
此方の作品群はテレビでミニ・シリーズ化されたものだが”ナイト・マネージャー”はトム・ヒドルストンが主役でこれが又、素晴らしいスパイドラマになっていた。
- 『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』(1979年) - BBC ミニシリーズ
- 『スマイリーと仲間たち』(1982年) - BBC ミニシリーズ
- 『パーフェクト・スパイ』(1987年) - BBC ミニシリーズ
- 『高貴なる殺人』(1991年) - ITV テレビ映画
- 『ナイト・マネジャー』(2016年) - BBC ミニシリーズ
- 『リトル・ドラマー・ガール 愛を演じるスパイ』(2018年) - BBC ミニシリーズ
思えばアメリカの作家にもスパイものを書く人は居るが原点がCIAになってしまい英ソの情報合戦とは作風がかなり違っている。
突出して素晴らしと思うスパイ映画は”ミッション・インポッシブル”、(TVでシリーズ化されていたオリジナルの原案はアメリカVSヨーロッパ諸国の構図)で派手な立ち回りは一切なかった。
仮想敵国はソ連を始めとするヨーロッパの小国だが敵同士の対立を企てIMF(架空のスパイ組織)では直接手を下す事無く敵同士が共倒れする作戦を実施するのが本筋だった。そして映画化された中でもずば抜けた秀作は”スパイ・ゲーム”(ロバート・レッドフォードとブラッド・ピット主演)だが元ネタになっている原作はないのだ。
なのでアメリカには本来は地味であろう筈のスパイの活躍を描いた長編小説は少ないのだ。どうしてもトム・クランシーとかが描くところのスパイ=CIAの活躍が主体で派手な作風に終始しているような気がする。
イアン・フレミングが描くところのジェームス・ボンドはその点アメリカ受けする派手さが売りだったんだろうか?何れにせよこのお二人は実際にイギリス情報部に勤務されていたので守秘義務を放り出して作家として自分が多少なりとも関わっていた事件や逸話を元ネタにしていた事は間違いない、。