”オールド・シネマ・パラダイス”、、時々新作も

長年”映画と愛猫とオーストラリア”だったが札幌へ軟着陸し愛猫も亡くしこの新タイトルで心機一転だ。

”針の目” (81年)

原題は”Eye Of The Needle"と言うのだがイギリス人作家のケン・フォレットが書き下ろした極上のスパイ小説の映画化である。ドイツからイギリスへ潜入して来た”フェイバー”と呼ばれるスパイが”針”と言う作戦名の元、大戦末期のノルマンディ作戦時に連合軍が何処へ上陸するのかを探るのが役目だ。

 

そのフェイバー(ドナルド・サザーランド)は護身用と言うか好みの武器として細身のナイフを携帯している事から付いたあだ名で映画は冒頭イギリスの断崖を背にした海岸へ小型舟で潜入して来るところから始まる。

嵐の晩だったが断崖を登りきると人里離れたところに民家がありその小屋に避難するのだが其処には車椅子生活の主人デイビットと献身的な妻のルーシー(ケイト・ネリガン)が住んでいる。ルーシーはフェイバーを温かく迎え体力が回復するまで面倒を看る事になるのだが、、。

そんな冒頭でフェイバーは回復するなり早速あちこちへ出向き情報収集にあたるのだが何時しかルーシーと相思相愛の中になって行く、当然のようにそれを良く思わないデイビッドだが車椅子じゃどうにもならない。

 

 

他の小説でもそうだがこのケン・フォレットと言う作家はアクションは勿論だが妙にねちっこい作家で濡れ場の状況説明が実に上手いのだ。映画化でもフェイバーとルーシーの描写が刺激的で何時かフェイバーも自身の任務を忘れちまうのだ。

そしてデイビッドは元軍人だけあってフェイバーの挙動不審な日常を怪しむようになって行く。でもルーシーはそんな心配を他所にフェイバーにぞっこん、しまいにはデイビッドを崖から突き落として二人で逃げようなんてよからぬ相談を持ちかける始末だ。

この辺りの三者三様の駆け引きが戦争末期のイギリス海峡を背景に描かれて行く。さあフェイバーは連合軍の予定する上陸地を見つける事が出来るのか、、デイビッドの懸念は当たるのか、、そしてルーシーは恋するフェイバーと一緒に逃げられるのか?

そんな異色のスパイもので”針”を演じたドナルド・サザーランドが実に巧い、一種のサイコパス的な不気味な存在感はこの映画でしっかり確立されている。多くの映画で善人、悪人、そして何を考えているのか不明で影のある役柄もやっているがそんな不気味さが一番似合っている気がする。

終盤は時間との戦い、海峡沖にドイツのUボート潜水艦がやって来てフェイバーを”回収”する予定だがそれまでに上陸地を探し出せるのか、ルーシーはどうするのか?目が離せない展開はやはりスパイ映画ならではの秀作でした。