これは刑務所から出所、自宅へ戻ろうとするシャルル(ジャン・ギャバン)を紹介しながらタイトルバックに流れる印象的なジャズ・テーマ曲、”地下室のメロディー”だ。原題は”Mélodie en sous-sol”。
アメリカで公開された時は英語のタイトルが”Any Number Can Win"(”どんな番号でも勝てる”)となり邦題は原題をそのまま直訳して”地下室のメロディー”に、、でも原作はゼキアル・マルコと言うフランス人が書いた”The Big Grab"(”デカい取り分”)である。
冒頭のタイトルシーンは5年のお務めを終えたシャルルだが街並みがすっかり変わっていて番地を頼りに歩くのだが自宅が何処だか判らない、、やっと周囲の変化から取り残されたような一軒家を見つけ奥さんの待つ我が家へ、、これが出だしの数分の間に説明されていく。
監督はアンリ・ヴェルヌイユ、ジャン・ギャバンとアラン・ドロン、二人の”新旧”俳優を対決させた犯罪映画、それもすこぶる付きの秀作だ。シャルルは娑婆に出たばかりだと言うのに南の保養地へでも行って下宿宿でも経営しようと言う奥さんのいう事に耳を貸さず”これが最後さ、”と言いつつ大きな強奪を計画する。ムショ仲間だったチンピラのフランシス(アラン・ドロン)とその兄貴を誘ってカジノの金庫を襲う算段だ。
2015年にこうやってDVDで再鑑賞してもこの映画の良さは色褪せてない、モノクロ画面だし35mmプリントで音響だってモノ録音、、無論CG画像もないしスタントだって果たして使ったのか??にも関わらず”汚れたタキシード”に目出しマスクがこんなに似合った俳優さんは絶対にいないだろうと、、今でも確信している。やはりプロットと脚本が良けりゃ素晴らしい映画は作れるのだ。
映画ではそのチンピラ、フランシスに高価なスポーツカー、衣装を与えリッチな青年実業家としてカンヌのカジノへ送り込む計画だ、、彼の最初の役目はカジノのホテルで開かれている豪華なステージ・ショー、その舞台裏へ何時でも自由に出入り出来るようにする事。そこでフランシスはそのショーに出演している踊り子のブリジットに目を付け、恋仲に、、。この辺りのアラン・ドロン、恐らくコレが彼の素顔か?と思えるほど、この役柄にピッタリだ。”太陽がいっぱい”でもそうだったが決して洗練された良家のおぼっちゃまではない、むしろ不良っぽい仕草や投げやりな態度、、でもこれが流石フランス映画だと思うのだが、、食事のマナー一つでその”お育ち度”が判る仕組みだ、、。ブリジットと一緒でも急にキレたり、レストランのウェイターに注文一つする姿からこりゃ額面通りのリッチな実業家ではないな、、っと我々にもブリジットにも判る仕組みだ。
一方のシャルルはフランシスの義兄をお抱え運転手に仕立てやはりリッチな紳士としてロールス・ロイスに乗ってカジノへ乗り込んで来る。
この映画でのアラン・ドロン、、”太陽がいっぱい”を始め”若者のすべて””山猫”、”黒いチューリップ”、、、、、、その他ざっと指を折っても両手、両足の指を使わないと数え切れない程の映画に出ているが人気絶頂の頃(特に日本とフランスでは、アメリカではまだ無名に近かった)。そのなかでもこの”地下室のメロディー”はかなり衝撃的だったし印象が深い。この映画でのフランシス、、タバコに火をつける前に鼻の下で横にスライドさせ香りを楽しむ仕草をする、これにすっかりハマリその後うん十年に渡り喫煙グセがついちまった、、こりゃフランシスのせいだぜ。
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