”オールド・シネマ・パラダイス”、、時々新作も

長年”映画と愛猫とオーストラリア”だったが札幌へ軟着陸し愛猫も亡くしこの新タイトルで心機一転だ。

海を渡った花嫁たち(04年)

これはギリシャ映画の傑作である。公開されたのは04年なんだが当時ギリシャでは過去一番の制作費が掛かったそうな、、監督はパンテリス・ボルガリスと言う人で主演に迎えたのはイギリスからデミアン・ルイス、そしてギリシャ人のビクトリア・ハララビドウと言うエキゾチックな女優さんだ。

ギリシャ語の原題は”Nyfes"、英語のタイトルはそれに該当する”Brides"、直訳すると”花嫁達”なのだがそれじゃ余りにも端的過ぎるので私が勝手に”海を渡ら”せた、、。

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時代は1922年、、背景はギリシャがトルコと戦った希土戦争でギリシャが敗北、成人男子は戦争に駆り出され貧しい生活を余儀なくされていたギリシャ全土。そして主人公、ニッキーの生家がある小さな島では多くの娘たちを食べさせる余裕もなく遥々新天地アメリカへ”メール・オーダーブライド”として送り出すところから始まる。ニッキーの妹が先の航海でアメリカへ渡ったのだがどうにも馴染めずこの島へ出戻って来る。困った一家、それを見かねた姉のニッキーは今度は自分が相手の写真一枚携えて海を渡る決心を、、、そこまではまだ何の繋がりもないノーマン(ダミアン・ルイス)はトルコ国内を回る写真家、各地で構図を選び写真を撮ってはアメリカの雑誌社に送っているのだが思うような仕事先が見つからない。これ以上外国にいても仕事はないし結婚はとっくに破綻しているのだがやむなくアメリカへ帰る決心をして大切なカメラを売り払ってしまう。
 
この二人が偶然にも乗り遭わせる船がSSキング・アレキサンダー、其処にはギリシャからはニッキーを初めオデッサやその他ロシアの地方ら総勢700人からの”花嫁”さんが乗り合わせている。全員まだ会った事もない未来の”夫”の写真を胸にアメリカへ渡る決心をした娘たちである。
 
アメリカではこの頃、ワシントンで軍縮会議が開かれており日本の太平洋と東アジア諸国における活動を制約する動きが活発化、又、移民関係では当時ロシア革命十月革命、ロシア内戦などで短期間にロシアからの移民が急上昇、そんな背景があり花嫁さん候補はアメリカへ渡る事が比較的容易だった。
 
こんな背景を知ると余計映画にも引き込まれる、、最初この映画を見た時は何で行きたくもないアメリカへ渡るのかな、、、とか良くそんなに沢山の移民を受け入れるもんだ、、と漠然と考えていたものだ。そう言えばこの頃コルシカからドン・コルリオーネ一家(後年”ゴッドファーザー”になる)が遥々ニューヨークへ向かっていたんじゃなかったか、、。
 
映画のほうは裁縫が得意のニッキー、、シカゴで洋服屋を営むギリシャ人に嫁ぐ予定、なのだがノーマンの目にとまり船内で行なわれるステージ向け衣装を縫う仕事を紹介する。彼のほうは700人からの花嫁さんの花嫁衣裳姿を個別に記念写真として撮る為に船内で忙しくなる。そんなでギリシャからアメリカへの航海が始まるのだが、、、中にはロシア人でこのメール・オーダーの元締めみたいな悪どい親父、、スティーブン・バーコフが美人局をやって花嫁さんを船長や他の乗客に世話をしたりとエピソードが入るのだが、、、基本はこのニッキーとノーマンだ。
 
最初出合った時にノーマンが”キミの出身地は?”と聞く、、それに対するニッキーの答えが”もう二度と見る事が叶わない土地よ、、”、、もうこの辺りから涙腺がユルっ、、感じ。更に初めて写真を撮る為に船内の”エコノミー・クラス”へ降りてみると、、、”花嫁衣裳が満開で野に咲く花フレークだ、、”とかの描写がある。二人には恋愛感情が芽生えノーマンはニッキーに”知らない人に嫁ぐ、、よりボクと一緒に来てくれ”、、と迫るのだが。この辺りは”日本婦道記”もさもありなん、、と言うようなニッキーの答え、”これはもうワタシ個人だけの問題じゃないのよ、、妹の名誉そして我が家の名誉の為にも途中で放り出す事なんか出来ないの、、”、、もうこれでユルユルッ、、て感じ。
 
そしてとどめは、、It's not a punishment to remember someone you love. The punishment is to forget. ”愛した人を想うのは決して罰ではなく、、罰は忘れようとする事なの、、”こんな胸を締め付けるようなセリフが満載です。ニューヨークの港へ船が入る直前にこの二人が交わす言葉、、この辺りはもう涙腺崩壊、、。
 
画面は一転、今はシカゴの洋服屋のおかみさん、、お腹が大きいって事はもう下船してから数ヶ月が経過、ご主人が”そろそろ店仕舞いすべ~よ、、”、”あたしゃ働くのだけが取り得だよ~、、”で幸せそうな二人。そのニッキー、家に帰ってタンスからノーマンがせっせと撮った花嫁姿の写真を取り出して見ているとその一番底にノーマンからの手紙が、、もうその内容は、思い出すだけで書けません、、ラストシーンは街角に立つノーマン、、雑誌売り場を見ると彼が船内で撮ったニッキーの顔写真が週刊誌の一面を飾っている、更にアップになると彼のネクタイピンはニッキーが別れ際に自分の右耳から外して彼の手に握らせたイヤリングが、、、。
 
この年、ギリシャでは作品賞、主演女優賞、撮影、音楽など主要10部門を制覇する快挙を遂げた。アメリカのIMDbの評価でも高い評価を得ているのだが、、、何故か日本では未公開、DVDさえ出ていない。こりゃダメでしょ、、Youtubeでは見れるようだがやっぱりなぁ~、、アマゾンさんにお世話になりこれはワタシだけのDVDの一本として大切に保存している。

もうこの映画の事を書くのは3回目くらいになる、、ご容赦を。

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