”オールド・シネマ・パラダイス”、、時々新作も

長年”映画と愛猫とオーストラリア”だったが札幌へ軟着陸し愛猫も亡くしこの新タイトルで心機一転だ。

オスカー受賞作、”フェンス”が何故一般公開されないのか?

デンゼル・ワシントンが監督、主演、更にはブロデューサーにも名を連ねていた”フェンス”(原題は”Fences")は今年の作品賞、主演男優賞、助演女優賞、それに脚本賞の4部門でノミネートされ結果、ヴィオラデイビス助演女優賞の栄光に輝いた秀作なんであるが、、日本国内では劇場未公開になっている。

ワタシも普段からこんな状況が嘆かわしいな、、と思っていたらちゃんと記事に書かれている方がいた。読売新聞調査研究本部と言うとても新聞社の部署とは思えない研究室におられる福永聖二さんである。

イメージ 1この映画の元ネタは舞台劇で実は87年にブロードウェイで上演されている。デンゼル・ワシントンは10年に再演された時に主演を務めヴィオラデイビスも映画と同じ彼の奥さん役で舞台に立っている。こんなケースはかなり多い、、古くは”奇跡の人”、”マイフェア・レディ”もそうだし”お熱いのがお好き”だってそうだった。うん、アレは逆かな?映画が先だったかも知れない、。

そんな背景があるのでデンゼル・ワシントンは映画化にあたりかなり力も入っていたと想像出来るしプロデューサーとしても活躍したと推察されるのだ、。でもそんな彼の努力ぶりは残念ながら日本ではスルー、、誰も配給元として劇場公開に手を差し伸べてはくれなかったようだ。

映画の舞台は50年代後半、まだ歴然と差別がはびこる鉄鋼の町、ピッツバーグである。主人公のトロイ(D・ワシントン)は初老の清掃作業員、若い頃はニグロ・リーグで活躍した元野球選手で奥さんがローズ(V・デイビス)、肌の色の違いから自分はメージャーリーグに行けなかったと頑なに信じている頑徹なオヤジになっている。物語はその頑固なオヤジ、奥さん、そしてそんな生き方に抵抗する息子と自分の指図通りに将来の道を歩ませたい、、そんな”もめ事”が炸裂する秀作だ。

確かに地味だし日本ではなかなかこの手の人種差別は見過ごされがちで理解もされ難いのは判る。でもこの福永さんは、、;

背景には、外国映画の興行が困難になっているという構造的な問題がある。

と書かれている。そして収益の割合から見ると、、;

映画館の総入場料金を表す興行収入(興収)で、邦画と洋画の割合を見ると、90年代はおおむね4対6で洋画が優勢だった。「ハリー・ポッターと賢者の石」「モンスターズ・インク」「スター・ウォーズ エピソード2 クローンの逆襲」などが公開された2002年には、洋画の割合が72.9%にまで高まった。

だが、この02年以降じわじわと邦画の割合が増える。06年には、邦画が興収の53.2%を占める事態となり、1985年以来、21年ぶりに洋画を上回った。近年は邦画の割合がおおむね6割前後で推移。昨年は邦画の興収が前年比23.5%も増やしたのに対し、洋画は10.2%減で、邦画の割合が63.1%を占めた。かつて4対6だった邦画と洋画の割合は、6対4と完全に逆転している。


昔はどんな小品でもそれなりの邦題を付け、国内で上映してくれる小屋を探し、それなりの販促を計画し努力するプロの宣伝マンがいたと聞くのがだ今やそんなケースは皆無とか、、実情はシネコンの台頭でそんな賭けには応じられない、と言うのが本音らしいのだがこの映画のように幾ら秀作でも”大衆受け”しそうもないましてや若者には振り向いても貰えない作品の公開は危険過ぎると言う事になるらしい。

そして最後にこう書かれている、、;

映画はビジネスそして同時に文化でもある。だが、近年は映画会社もビジネス優先に主義となり効率性が第一。夫々の作品を大切に扱う余裕もなくなっている。ヒット作が集中しているディズニー以外の洋画配給会社は、体力的にも厳しく、どうしてもリスクを避けたがる。

しかし、今ここで力を入れなければ、外国映画の人気はずるずると低下するばかりではないだろうか。大作でなくとも、これぞという作品には、宣伝に知恵を絞って取り組み、優秀な邦題を付け観客を集める努力をすることが望まれる。それを続けていく以外に、観客の足を劇場に向けさせることは難しい。このまま放置していれば、優れた外国映画が観客に届かないまま埋もれてしまうばかり。「フェンス」のようにアカデミー賞を受賞している秀作が公開されないケースは、今後も増えていきそうだ。

この最後の杞憂は一映画ファンであるワタシでも全くその通りだと普段から感じていた。ならばこのネット時代、もう少し違う展開が出来ないものだろうか?しかしながら幾ら課金したとしてもそれをやっちまうとやはり映画館への動員数は減ってしまうのでこの案はなしだ、、。でも普段から感じていた事を実に的確に述べて貰ったお陰で気分がスッキリした。こんな事を書く前に”オマエももっと映画館へ行けよ、、それにこの秀作だって早く見ろよ”、、、ハイ。