”オールド・シネマ・パラダイス”、、時々新作も

長年”映画と愛猫とオーストラリア”だったが札幌へ軟着陸し愛猫も亡くしこの新タイトルで心機一転だ。

”ザ・フォーリナー”(17年)

この映画、そのままカタカナ化で”フォーリナー”何てするなよ、、と言いたいところだがもうそう決まっているようだ、、原題は”The Foreigner"なので此処はより正確に或いは正統派で”異邦人”、”苦悩する異国人”とでもして欲しい、何せ思いがけないくらいの(シツレイ)秀作君なのだ。

主演はちょっとヨレヨレ気味のジャッキー・チェン、そしてお相手が元007のピアース・ブロスナン、それに何と監督がこれ又、007のマーティン・キャンベルなのである。プロットは以前にシュワルツネッガーやスタローンが演じていた映画にもあったが娘とロンドンで静かに暮らすクワン(J・チェン)、の復讐劇である。彼は妻を亡くした寡夫さんで今はティーンエージャーの面倒を見ながらその成長を楽しみにしている極く普通のおっちゃんだ。

それが市内へ買い物に行きあろうことか無差別爆弾テロに巻き込まれ一人娘が犠牲になってしまう。そんな出だし、、もうお父ちゃんは茫然自失、自分も怪我をしたのだが毎日警察へ捜査の進展具合を聞きに来ては何時間でも担当者に会えるまでロビーで待っている、そんな雰囲気が実に巧い、。この辺りはもう往年のジャッキー節はなりを潜め完全に初老のおじちゃんを好演している。

警察の必死の捜査にも関わらず犯人の見当もつかない、市内の至るところにあるCCTVを解析して怪しい人間を探すのだがそれも決め手がない。そんなある日、テレビのインタビュー番組で見たのがアイルランドの現職副大臣(P・プロスナン)、彼が捜査当局に掛かってきた犯行声明を取り上げこれはIRAの仕業だと断定するのを聞きこの副大臣からもっと詳細を聞くべくアイルランドまで出掛けて来るのだ。

この辺りの描写はそもそもIRAの組織が判っていないとどうもチンプンカンになるのだがウィキの解説では、、;

IRAの目的は、アイルランド自由国成立後は、北部6州と南部26州(共和国)とを統一すること、つまり北アイルランドイギリスから分離させて全アイルランドを統一することにある。歴史上さまざまな組織・集団が「IRA」を名乗っているが、1969年以降の文脈においては、単にIRAといえばIRA暫定派アイルランド共和軍暫定派)を指すことがほとんどである。

とあって現在では武力闘争は確認されていないのだがそんな背景がこの映画、現職であるヘネシー副大臣(P・ブロスナン)の立場になっている。

イメージ 1一向に犯人像も絞られて来ない現状でクワン(J・チェン)はその本性を徐々にあらわして来る、すっかり年を食っちまったがやはりアメリカ軍の特別任務についていた過去が暴かれやはり滅法強いのだ。以前程の切れ味ではないもののアクションをこなし途中から大活躍、、何せ一人で5~6人は素手でやっつけてしまう程の凄腕だ。

そしてそのプロットがかなり練り込まれている、、無論副大臣が爆弾テロを仕掛けた訳でもないし実行犯は全然別の悪人どもなのだが彼自身の政治政策と自身の生き残りをかけた野望があっちこっちに見え隠れする、。

ポリティカル・スリラーとしての筋立てに凄い真実味がある。アイルランドVSイングランドの図式なんだがヘネシー副大臣だって元を辿ればIRAの闘士だったりでクアンはその経歴から今だに組織内に人脈があると踏んでいるのだ。何時の間にかそんな彼とクアンの対立が中心になり執念深いクアンがお手製の爆弾装置を使いじわじわと核心に迫って行く。

そんなで単に娘を亡くした父親がテロ犯に復讐する、と言う単純なお話しからもっと進んで政治の駆け引き、更には英国に対するアイルランドの主張、、そして政府内に裏切り者の存在があったり、所轄とMI5との縄張り争いとかが盛りだくさんでかなりテンポ良く描かれている。

これまでジャッキー・チェンの映画はそれ程見てないし根っからのファンって訳でもないのだがこの映画はすこぶる出来の良い、☆☆☆☆、、じゃなかろか?ジャッキーファンも充分満足出来るし日本でもヒットは間違いないと思う、原題の”The Foreigner"は外国人、即ち中国生まれだがイギリスに帰化しているクアンの事を指しているのだがやっぱり邦題が、”ザ・フォーリナー”かよ、、何とかなりませんかね??

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お~、思い返してもこの映画はかなり完成度が高かった、気になったので調べたら何と原作があるじゃないか、、これは全く知らなかった。その原作のタイトルはそのままズバリ”チャイナマン”、、と言いスティーブン・レザーと言う現在はタイに住むイギリス人作家が92年に発表していた。

ならばこの翻訳時の邦題で良いじゃないの??どうでしょう配給元さん、、”ザ・フォーリナー”なんてぶさいくなタイトルよりこの”チャイナマン”はどうでしょう??

絶対にこっちの方がインパクトがあるしもろジャッキー・チェンそのままじゃないのかな?