”オールド・シネマ・パラダイス”、、時々新作も

長年”映画と愛猫とオーストラリア”だったが札幌へ軟着陸し愛猫も亡くしこの新タイトルで心機一転だ。

”夜の大捜査線”(67年)


先月からFOXさんでは歴代オスカーで作品賞に輝いた秀作を放映している。60~70年代になり昨晩は”夜の大捜査線”が放映された。何となくこのタイトルは後年、邦画の専売特許みたいになっているが原題は”In The Heat Of The Night"(原作を翻訳した時には”夜の熱気の中で”とそのままだった)、主演は若きシドニー・ポワチエロッド・スタイガーで監督はノーマン・ジュイソン、音楽の担当がクインシー・ジョーンズと人気抜群の布陣だった。

確かオスカーでは主演男優賞にシドニー・ポワチエじゃなくロッド・スタイガーが選ばれ”ええっ~、、あっちが主演かぁ?”とびっくりした記憶がある。それにシドニーはノミネートもされずこりゃ絶対偏見だな、、と感じたものだ。

映画が制作された当時、やはりアメリカ南部では平然とこんな差別があった。ニューヨークなどの大都会では全く感じなかったのだがロッド・スタイガーが演じたちっこい町の警察署長は恐らく皆さんこんなもんだったろうと推察される。原作ではカリフォルニアから来た刑事だったがこの映画では東部のフィラデルフィア辺りから派遣されて来たのが優秀な殺人課の刑事、ヴァージル(S・ポワチエ)で映画ではいきなり駅構内で拘束されてしまう。もうこの辺りから”黒人”は怪しい、、という雰囲気が満載だ。

イメージ 1ギレスビー署長(R・スタイガー)はやっとヴァージルの身分を確認し上司に照合し彼が優秀な刑事だと判ってもどうしても気に入らない、”この殺人事件はオラが町で起きた単純な事件さ、オレ達で解決するから帰ってくれろ、”、の一点張りだ。

そんな出だしで現場から逃げる白人の札付きもんを全員で追跡しやっとの事で捕らえ、これで一件落着と見栄を切った署長さん、ヴァージルにコイツは左利き、でもホンボシは右利きだぞ、、と言われ死体から財布を抜き取っただけって事が判るのだ。この辺りの脚本は素晴らしい、、そりゃ署長をやり込めるヴァージルに拍手を送りたくなるがアホで殺人事件の捜査経験もない白人の署長が哀れになる。

しかし一転二転するが最後はヴァージルの大活躍で事件も解決、署長もホッと胸を撫で下ろす。あれだけいがみ合った黒人刑事とも不思議な友情を結びもうアメリカ、南部版、”さらば友よ”になっていた。

やはり秀作ってのはオーケストラの演奏と同じで脚本、配役、その他全ての要素が上手く重ならないと良い映画にはならないのだ。それともう一つ重要な事は実社会で起きている事をスクリーンにタイムリーに反映させる事、これはこの数年のオスカーの作品賞受賞を見ても顕著になっている気がするのだ。