”フランス軍中尉の女”(81年)
このジョン・ファウルスの原作を映画化する際に主役に抜擢されたのは”ディア・ハンター”、”クレーマーVSクレーマー”で脚光を浴びたアラサーになったばかりのメリル・ストリープで相対するのはジェレミー・アイアンズだ。
物語の背景は80年5月のイギリス、、だが映画はヴィクトリア時代、1876年のイギリスでアンナ(M・ストリープ)はアメリカの女優だ。そしてイギリス界、若手の俳優、マイク(J・アイアンズ)の二人が主演で映画の撮影中なのだ、、その映画のタイトルが”フランス軍中尉の女”って事になる。そのヴィクトリア時代の二人はサラとチャールスと言う役名で映画に登場するので現代(1980年)と映画の中の時代(1876年)とを行き来すると言うチョイとややこしい背景である。
と書かれているのだがそんな簡単に一行で終わるではなく実に奥が深いのだ、、現実の世界のアンナとマイク、、それが映画の世界ではサラとチャールスになり映画が進行するにつれその距離が徐々に縮まってしまう。見ている側は半分ほど進んだところから”うん、これはどっちの心理描写だ?”と感じるようになる。同じ恋愛ものでもうちょっと軽かったのは”ノッティングヒルの恋人”、あっちはハリウッド一の女優、アンナがロンドンのしがない本屋の兄ちゃんと恋に落ちると言うものだったがこっちはそんなに軽くない、、アンナとマイクの場合はダブル不倫の関係だが映画の中ではサラは処女だったりして状況はもっと深刻なんである。

この当時ならワインステインみたいなセクハラ爺はハリウッドには大勢いたと思う。その中でパワハラやその他諸々のハラスメントにもメゲず自身のやりたい役を引き寄せられた、、これはそう簡単に出来ることではないように思うのだが。
作品、監督、共演者に恵まれこうして今でも第一線で大活躍しているメリル・ストリープの原点に触れたような映画だった。