”オールド・シネマ・パラダイス”、、時々新作も

長年”映画と愛猫とオーストラリア”だったが札幌へ軟着陸し愛猫も亡くしこの新タイトルで心機一転だ。

”スリー・ビルボード”(17年)

このアメリカ中心部と言えば良いのかミズーリ州、一番大きな都会はカンザス・シティだ、なので南部のあの”かったるそう”な雰囲気の街とはちょっと違う。映画の背景になっているのはその田舎町、エビングと言う架空の街だ。でも実際撮影されたのはノース・カロライナと南部だったんだ、。

大分時間は経過しちまったがこれで今年のオスカーにノミネートされた最有力候補二本を見たことになる。先の”水の形”そしてこの”三枚看板”、昨年末から各国の映画賞レースではこっちの”三枚看板”が圧倒的に有利と見られていた。それが蓋を開けたら9回裏のサヨナラホームランみたいに大方の予想を覆してあっちの”水の形”へ、この”三枚看板”は主演女優賞のフランシス・マクダーマンド、助演男優賞サム・ロックウェルの授賞で下馬評で言われていた作品賞授賞には至らなかったのだ。

今さら遅いよ、、と言われてもしょうがないがこりゃどっちを選ぶか?確かに”シェイプ・オブ・ウォーター”の良さは判る、しかしこっちの”スリー・ビルボード”だって主演のフランシス・マクダーマンド、サム・ロックウェル、、それにウッディ・ハレルソンが素晴らしい演技を見せてくれているし背景に流れる音楽、これは双方甲乙付けられない、、それに編集や脚本、、その他。

個人的にはおとぎ話的な恋愛 VS 超現実的な心理劇として比較するとやはり現実により近い”三枚看板”を推したくなるのだ。娘を亡くし苦悩する母親、最後になってしまった娘との会話、それを後悔するママの辛い心情、そして何も捜査が進まない現実、更には捜査の責任者であるウェルビー署長、その彼も末期ガン、それを知りつつやはり事件解明に進む母親、これをやらないと今度は自分が生きていけない、、そんなところまで追い込まれたミルドレッドを実に巧く見せている。

まあ双方ともセリフはスゴい事になっている、、もう女性だろうが親同士が子供の前であろうが”F"に”S"に”MF"のオンパレードだ、、何時からこんな事になっちまったんだろうなぁ~、。でも最近の傾向を見ているとこうして現実的な脚本やセリフがどうも高評価の原動力になっているような気がする。人間ってのはどんどん麻痺していくのでもう今さら目くじらを立てる問題でもないのだろう、、でもジイさん世代には実に聞き苦しいのだ。

イメージ 1映画の描写と言うか画像はあっちの”水の形”はいきなり主人公の本当の”濡れ場”、それに指が転がったり日本ならボカシが入る場面も多い、こっちは映像的にはそんなにドキドキする場面はないし最後まで”緊迫”とは言わないまでもどうなるどうなるで気が抜けない。



でもあのエンディング、ミズーリからアイダホまでの道中、恐らく3~4日は掛かる筈だが、もう二人共帰って来る積もりはなかったんだろうか??それと放火されて焼け落ちた看板下に突然現れた鹿、、そこでミルドレッドが本音を吐露する場面、あれがこの映画のハイライトだったんだろう。

監督のマーティン・マクドノウは98年に南部を旅行中に実際に目にした未解決事件を伝えるビルボードを元ネタに脚本も書き下ろしている。最初からフランシスを念頭に置いていたらしいが原案では殺されたのは孫娘で主演のフランシスを祖母に設定する積もりだったそうだ、でもチョイとそれじゃ気の毒だし若過ぎるのでフランシスは躊躇したもののご主人のジョエル・コーエンに後押しされて承諾したようだ。まあ結果、母娘になっていたのだが、、。

このところ連続して途中で寝てしまったがこの映画は寝ている暇は一切なかった。大まかな流れは知っていたが詳細には一切触れずに最後まで、☆☆☆☆ を堪能出来る作品でした、。