”オールド・シネマ・パラダイス”、、時々新作も

長年”映画と愛猫とオーストラリア”だったが札幌へ軟着陸し愛猫も亡くしこの新タイトルで心機一転だ。

”裏切りのサーカス”(11年)

原題それに74年にジョン・ル・カレによって書かれた原作のタイトルは”ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ”である。ティンカーとは”下手な職人”テイラーは”仕立て屋”、そしてソルジャーは”兵士”、、即ちイギリス情報部のトップに君臨していた”コントロール”がスパイ戦で大失態を起こしてしまいその情報漏えいを突き止める為に部下に命名したあだ名だ。

それがこの邦題だ、、確かに”サーカス”と言うのはその秘密情報部があった所在地なのでこの奇をてらった邦題も間違いではない、それに裏切り者を探す訳だからこれも良いとは思う、でもジョン・ル・カレがこの邦題を英語にして”Betrayed Circus"としたら恐らくビックリするだろうなぁ~、、。せめて”Circus Has Betrayed"なら許して貰えるかも、、そうなると”裏切られたサーカス”としないとダメかも知れない。

映画の事は過去にもう何回も書いているし今回はこれでもう7、8回目になる。でもこんだけ見てやっと監督の意図、それに全体の流れが判って来た気がする。個人的には実に素晴らしい、大好きな名作と言っても良いだろう。何せ無駄なカメラワークが一切ないし何れも次の画面に繋がる重要なショットの連続である。

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今回はこんなアンチョコを見ながら再見したのだがこの相関図で誰が誰で誰と組んでいる、、ってのが判明した。コントロールジョン・ハート)に呼び出された現場工作員のジム(マーク・ストロング)がブダペストへ任務遂行で行かされる。指令は極く単純なものでハンガリーの軍幹部からイギリスに潜り込んでいると思われるスパイの名前を聞き出して来い、、と言うのだ。

ところがその作戦は大失敗、ジムも撃たれて敵のロシア陣営に捕らわれてしまう。それに一般人にも死傷者が出る始末、この一件でコントロールは失脚、ナンバートゥーの立場だったスマイリー(ゲイリー・オールドマン)も帯同して早期退職を迫られる、。そんな出だしで此処までは緊迫度の高い、実に本当のスパイ映画らしい見事な展開だ(そうは言っても現実はどうなのか知らないが、、)。

そんな中、今度はコントロールが不審な死を遂げる、政府上層部ではこの情報部にスパイが潜んでいると想定しスパイ、もぐら探しをスマイリーに命じ、彼は部下にピーター(ベネディクト・カンバーバッチ)を選出し密かにスパイ狩りに向かうのだが、、派手なアクションは一切ないし銃撃戦やらカーチェイスも一切なしだ。それにお話がブダペストへ行った時から時系列ではなく前後して進むので”うん、一体これは何時だ?”となりしっかり見てないとこんがらがって来る。唯一スマイリーのメガネの色が違うのでああ、これは今だ、或いは過去だ、と判る仕組み。

それに疑惑を掛けられる4人も誰か一人が裏切り者って訳ではなく敵側に何らかの形で繋がっているので余計理解しにくいのだ。無論最後は一人に絞られるがその特定する場面でも一人がのこのこ出て来るのではなく何回見ても”さてオレはちゃんと判っているんだろうか?”と自問してしまう。特にスマイリーと奥さん、それに絡むビル・ヘイドン(コリン・ファース)、、そして今度はそのビルとジムの関係、、あっちこっちの映画ファンのブログや解説ネタバレには”親友”と片付けられているのだがおっさんの見方は”愛人”の関係だったと解釈しているのだ、かように8回も見てもひょっとして判ってないんだろうか??でもやはりフリオ・イグレシアスが歌う”ラ・メール”やひっそり飾ってあった二人の写真からいくと”親友”と片付けられる関係ではないような、、。

しかし配役、音楽、脚本にカメラ、、やはり名作と言われる映画はジジイが見ても判るのだ。こんな映画は酒や飯より断然お気に入りだ。