”オールド・シネマ・パラダイス”、、時々新作も

長年”映画と愛猫とオーストラリア”だったが札幌へ軟着陸し愛猫も亡くしこの新タイトルで心機一転だ。

”ゴーストライター”(10年)

ロマン・ポランスキーが監督だが脚本も手掛け、プロデューサーも兼務している。ジャンルから行くとポリティカル・スリラーと言うらしいが主演はユアン・マクレガーピアース・ブロスナンで元ネタの原作はロバート・ハリスが書いた長編小説、同名”ゴーストライター”(”The Ghost Writer”)である.。

 

 

お話はいきなり海岸線へ男の水死体が流れ着く場面で幕開け、でも画面は一転してイギリスの出版社に移り其処へプロのゴーストライターユアン・マクレガー)が面接を受けにやって来る。同席しているのは出版社の社長、そしてゴーストライター代理人でもある弁護士、そして政府の重鎮だと思われる男だ。

どうやら彼は6人目の候補者らしくその役目は元イギリス首相(ピアース・ブロスナン)の自叙伝を出版する為にゴーストライターとして執筆する事らしい。そこでやっと判るのだが冒頭、海岸へ流れ着いた水死体は前任者のマカラで中途半端になった自叙伝を再読して完成させる事が任務らしい。人が書いたモノを手直しするのは気が進まないが代理人からもその過分な報酬を受諾するように言われ4週間の予定でアメリカ東部のボストン近郊にある小島で療養中のアダム・ラング元首相の別荘へ向かう。

緊迫感が満載って訳じゃないのだがどうもこりゃ一筋縄ではいくまいな、と思わせ先の水死体は事故かそれとも作為的になされた事なのか見ている側に不安感を増幅させる演出はロマン・ポランスキー独特のらしさが満載だ。面白いのはこのゴーストライターには名前がなく終始一人称で物語が語られて行くのも謎っぽいのだ。

そんな展開だが死んだ前任者のマカラが残した分厚い原稿と部屋の整理をしてて偶然引き出しの裏側に貼り付けてあった写真や謎の電話番号、新聞記事などを発見してから俄然展開が変わって来る。もしマカラの死が誰かの仕業としたら自分だってその立場は危うい筈で一気に緊迫感が増して来る。

更に残された原稿を読み進み残された情報を交互に読むとラング元首相の経歴にも不自然な箇所が見つかるのだ。どうもそれらにはアメリカのCIAが深く関与している節があるのだ。その最中、ラング元首相が狙撃されると言う事態に、、其処からは元首相の夫人のルースやアメリカ側の政府高官が出て来て目が離せなくなる。

終わってみれば派手なアクションは一切ないのだがラング元首相の役目、CIAとの関係、それに前任者のマカラは何故不慮の死を迎えたのか、、ルース夫人は一体何をしていたのかそして肝心のゴーストライターはどんな運命を辿る事になったのか?秘密が秘密に包まれて結局自叙伝は発刊され、ベストセラーになるのだが謎は残ったまま終わってしまった。上出来のゴースト作戦だった。