”オールド・シネマ・パラダイス”、、時々新作も

長年”映画と愛猫とオーストラリア”だったが札幌へ軟着陸し愛猫も亡くしこの新タイトルで心機一転だ。

”13F”(99年)

ナンとまあ簡単な邦題だ、、ドイツ映画らしいが原題は英語で”The Thirteenth Floor"でそのまんま、。セリフは英語だがジャンルでいけばSFになるんだろうか?でも宇宙へ行っている訳じゃないしこの地球でのお話、バーチャルで作られた世界と行ったり来たりするのでキアヌ・リーブスが主演した”マトリックス”系って事になるんだろう。

しかし考えたら制作されたのは1999年でそれからもう20年から時代は進んでいる。それにしちゃまだスマホが無い時代だと言うのにかなり斬新なアイデアで今でも充分通用する主旨で作られた映画だった。まあ個人的にはもうオレには着いて行けない世界のお話で残念ながら途中からもう訳が判らなかった、、。

原作は1964年に発表された”Simulacron-3”と言う小説でダニエル・ガロイと言う人が英語版で出版しているらしいがそんな半世紀も前にコンピューターで作動するバーチャルリアルティを描いていたとはビックリする。

 

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映画の概要は、、;

時代設定は1999年で既にバーチャルリアルティの研究をしているダグラス(ジョン・ファーガソン)はコンピュータ内に1937年のロスアンジェルスを構築、再現しようとしている。それがある日、目覚めると手元に血にまみれたシャツがあり自分の記憶も曖昧になっている事に気が付く。

其処へ上司のフラー(アーミン・ミュラー=スタール)が何者かによって殺されたと言う知らせが入る。しかしアリバイのないダグラスに容疑がかかり警察に追われる事になる。そこで自身の潔白を証明する為にフラーが最後にナニを研究していたのか調べて行くとどうやら1937年のロスアンジェルス、その仮想世界と現実とを行き来していた事が判る、。そこで今度は自分がその仮想世界へ入り込み事件の真相を暴こうとするのだが、、、もうこの辺りからオレには理解不能になって来た。

そりゃ強制的に夢を見させてその中に入り込むってのは判らないではないのだが自分の分身、アバターみたいなヤツが出て来たりするともうどうなってんだかお手上げだ。

別に作られた場所があって其処へ入り込むと言う訳じゃなさそうでそれら全てが夢の中での出来事だとするとこれはもうワカンネー、。原題の”13階”と言うのはビルの中の13階にダグラスが働く会社がありそこから1937年のロスへ飛んで行っているって訳、最初はてっきりこりゃタイムマシンものかと思いきやそうじゃなくてあくまでも仮想に作られた世界って事らしい、。

どうせならタイムマシンで決められた世界へ行ったり来たりと言う方が理解し易いのだがどうも寝ている間のアタマの中で見ている夢ってのが最後まで理解出来なかった。そう言えば”マトリックス”もサッパリだったっけ、、。

 

 

”奇跡の絆”(17年)

この映画はどうも国内では劇場公開されていないのだがアマゾンさんが配給してたらしい、、我が家にはアマゾンからJ:COMを経由してムービーチャンネルで見る事が出来た。邦題が”奇跡の絆”っとなるとこりゃ震災モノと勘違いしそうだなぁ~、、っで良く見ると原題は”Same Kind of Different as Me”となっていた。

 

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こりゃもう完全にデザスター映画じゃないじゃないか?要するに”私にもある同じ種類の違い”って事なんだが端的には”内に秘めた夫々の個性”って事に行き着く。

主演はグレッグ・キニアとレニー・ゼラウィガーで元ネタは実在した主演を演じたロン(G・キニア)とデンバージャイモン・フンスー)の二人が共同執筆した実話のストーリーである。概略は、、;

裕福なロンは結婚して15年、二人のティーンエージャーもいて立派なお屋敷に住み献身的な妻のデボラ(R・ゼラウィガー)は奉仕活動に忙しい。そんな彼の浮気がバレる、、この場面はかなりいける。デボラは怒りもせずロンのスマホで浮気相手の彼女を呼び出し”私はロンの妻のデボラよ、”と名乗り次に”電話を切らないでと訴え、私たちは幸せな家庭を築いているの、それを壊すような事はしないで。金輪際ロンとは別れて”と迫るのだ。こりゃ見事だ、、無論演出があって脚本もあるのだがこんな事を言われたらもう彼女が浮気相手で存在する事自体”インポッシブル”じゃなかろうか?

まあその代償とでもなるんだろうか、、デボラはその後自分が支援しているホームレス救済のシェルターへロンを連れて行き嫌がるロンに奉仕活動を強いる。そのシェルターで知り合うのがデンバー(J・フンスー)、”グラディエーター”ではラッセル・クロウの奴隷仲間、それに”アミスタッド”にも出演、で最初は暴力的で怒りに任せて周りの窓ガラスや机を壊している姿を見てロンもデボラも驚愕する。

そんな出会いで役者は揃うのだが、、ああもう一人、ロンのパパ(ジョン・ヴォイト)がいた、。酒浸りのオヤジで奥さんもいるし何不自由ないリタイア生活振りだが口が悪い、、息子のロンにも一言ごとに文句や苦情タラタラ、それも家族間の事から世の中をまるで斜めに見ている様子でロンやデボラとも合わないのだ。

その辺りからロンとデボラは親密さを取り戻しひたすらこのシェルターでの奉仕活動、そしてデンバーとの関係を構築して行く。デンバーの生い立ちも彼の口から説明されるが両親の顔さえ知らず祖母に引き取られ学校へも行かずに綿花農場で働いていた。

時代設定から行けば恐らく60~70年代だが黒人のデンバーには良い思い出は一切ないのだ。南部では歴然と差別があり公共の施設でも”黒人用”、”白人用”と別々の施設が当たり前のように残っていた。そんな生活から今度は殺人容疑で長い間、刑務所暮らしだった等とやっと親密度を増したロンに打ち明けるのだ。

こんな雰囲気の映画は以前サンドラ・ブロック主演の映画にもあったような、、確か黒人のフットボーラーと交流する感動編だった、”しあわせの隠れ場所”(”The Blind Side”)でオスカーも受賞していた。

この映画のレニー・ゼラウィガーは僅か数年前の事だが全く自分が知っている映画とは印象が違うのにはビックリした。何時出て来るんだ、、と思いきや何と最初っから奥さんのデボラ役で出ていたのがご当人だったとは、。ありゃ痩せたと言うか加齢したとかじゃないような変わり様で二度ビックリだ。

 

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この映画でのデボラ役、、

 

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以前の良く知った顔、、、

 

映画は100%事実と最初にタイトルに出ていたようにかれら三人の交流に絞られて行く、そしてその彼らが後年、各地を回り公演活動をし彼らホームレスの為に基金を設立していた事がエンド・タイトルの後に実写として紹介される。大手制作会社による感動大作巨編とは言わないが独立系のネット配信業者でも充分に満足出来る秀作が出来ると言う好例かも知れない。アマゾンもやるじゃないか?

 

”我等の生涯の最良の年”(46年)

原題はそのまま”The Best Years of Our Lives”、とそのままだが邦題は”の”だらけ、、これには初めて見た時には違和感を感じたのだが名作には違いない。監督がウィリアム・ワイラーで主演にフレデリック・マーチ、ダナ・アンドリュース、そしてハロルド・ラッセルの三人が第二次世界大戦から帰還した兵士を演じてる。

 

 

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これは自説だがこの映画がポスト・第二次世界大戦を演じているならマイケル・チミーノ監督の”デアー・ハンター”はポスト・ベトナム戦を描い秀作ではなかろうか?

映画が公開されたのは1946年でまさに戦後すぐ、リアルタイムでご覧になったファンはまさに自身の周りで起きていた事がスクリーンに再現されていた訳でドキュメンタリーを見るような感覚だったんじゃなかろうか。

舞台になっている場所は架空の街でブーンシティと呼ばれているがどうもオハイオ州内らしい、、ホーマー(H・ラッセル)は水兵で乗っていた空母が撃沈された際に両手に火傷を負い今は両方とも義手、陸軍の連隊長だったアル(F・マーチ)は長い間、銀行員だったが妻のミリー(マーナ・ロイ)と息子、娘のペギー(テレサ・ライト)がいる。フレッド(D・アンドリュース)は爆撃機に乗り優秀な爆撃手だったが以前はドラッグ・ストアでクリーム・ソーダを売っていて出兵時にはナイトクラブで働く妻のマリー(ヴァージニア・メイヨ)がいる。そんな彼らが同じ故郷へ帰る為に乗り合わせた軍用機で偶然顔を合わせ無事に帰れる事を互いに喜ぶ。

その彼らの帰還後の物語でホーマーには幼馴染で婚約者だった彼女がいるのだが自分の障害を思うとスンナリ元の関係に戻れない。アルは娘が大きくなり心配だ、、でも幸いにも出征前に勤めていた銀行の頭取から声を掛けられ今度は貸付の部署で副頭取と言う待遇で職場復帰となる。フレッドは妻のマリーは帰還を喜んではくれたが金銭的にも余裕がない生活がイヤで自分でも夜の商売へ戻る気が満々だ。

映画は丁寧に彼らの事情と置かれた立ち位置を検証しながら進んで行く。この辺りの各自が無事に故郷へ帰りながらも置かれた環境に何となく馴染めず財政的にも不安を感じている様子が良くわかる。

映画はその後、一転二転、まあ小さい山あり谷ありで淡々と進んでいくのだが見ている側は多分、ああなってこうなるんだろうな、、と思った通りに進む。終盤はフレッドとペギーがどうなるのか?そしてホーマーはしっかりと恋人の愛を受け止められるんだろうかに焦点が移っていく。アルは一見、順風満帆に見えた妻のミリーとは一度ならず何回も騒動があった様子でそれを娘のペギーに打ち明ける、。

全編172分とこの時代の映画にしては画期的に長いのだが全然そんな事を感じる余裕はなかった。終わってみればもう夜メシの時間に近かった。

第9回のアカデミー賞ではトータル10部門でノミネートされ作品賞、主演男優賞を始め9部門を制覇して1989年にはアメリカ国立フィルム登録簿に登録されている。”デアー・ハンター”と違い衝撃的描写とかはないのだが同じ戦争から帰還してPTSD(心的外傷後ストレス障害)に悩む兵士と社会復帰を取り上げた傑作だ。

やはり素晴らしい映画は何回見ても褪せる事がない。モノクロだって事さえ忘れてしまうのだ。

 

”マイ・スパイ”(20年)

こりゃ新作だし絶対に見てない、、それにキーワードの”スパイ”が付くので見るっきゃないだろう?チョイと”マイ”等と所有格が付くのが気になるが、。

主演はデイブ・バティスタ、、近年メキメキ売り出し中の元プロレスラーだ。これまでアーノルド・シュワルツネッガーは重量挙げ、シルベスター・スタローンはボクシング、ジェイソン・ステイサムはイギリスの飛び込み代表選手、ドウェイン・ジョンソンは”ザ・ロック”と呼ばれるプロ・レスラーと過去の経歴からそのままアクション派スターとして映画界でデビューしている仲間の一人だ。

 

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近年”007/スペクター”、”ブレードランナー2049”等では殺し屋かメチャ強いレプリカント役でとても頭脳明晰、スマートが身上のスパイ役には合わないと思っていた。この映画でものっけからテロ組織のプロトニウム、武器調達場面でいきなり大活躍しちまうが要はCIAの腕利きスパイ役だ。囮捜査ちゅうに身元がバレて、、と言う設定なんだが194cm、125kgと言う体形を生かしてのアクションは迫力がある。

そして大方の関係者が殺害されてしまった後に今度はボビーと言うIT専門の女性の相棒と先の逃げてしまった首謀者、マルケスの死んだ兄貴の奥さん一家の家を24時間体制で監視する事になる。そんな半分コメディータッチのスパイものだった、、その監視を始めたアパートにはケイトとソフィーと言う9歳の女の子がいて監視を続けるうちに彼らと仲が良くなってしまうと言う筋書きだ。

これまでスパイ映画の金字塔としてこよなく愛して来た”寒い国から帰ったスパイ”、や”裏切りのサーカス”、”スパイ・ゲーム”、”国際諜報局”、それに007ではショーン・コネリーの”ロシアより愛を込めて”、ダニエル・クレイグの”カジノ・ロワイヤル”、、アメリカからはイーサン・ハントに扮したトム・クルーズが活躍する初期の”ミッション・インポッシブル”等はトップ・テンにランクインが間違いない映画だがこっちは残念ながら下の方から数えたワーストテンに入りそうだ。

確かに他にもお笑い系のスパイもの、、例えば”ジョニー・イングリッシュ”シリーズもあるがアレはローウェン・アトキンスが出て来るだけで笑えるのだ。でもこっちのはいかついデイブ・バティスタじゃ笑えないしどうしても向かうところ敵なしを想像してしまう。ハッキリ言ってミスキャストじゃなかろうか?

劇中に映画、”ノッティングヒルの恋人”からアンナ・スコットのセリフを登用したり笑わせる箇所はあるのだが如何せんごついJJ(D・バティスタ)には似合わない。彼の相棒として出てたボビー(クリスティン。シャール)は巧い配役で不思議な魅力で笑わせてくれたのが救いじゃなかろうか?

 

 

”エイリアン”(79年)

もう公開された時に生まれた次女がアラフォーで孫sが二人もいる、、光陰矢の如しとは言うけれど参っちまうな、確かこれはロス・アンゼルスに居た時に見ているのだが何処の映画館だったかどうしても思い出せない。まだシネコンがはびこる前だし独立系の映画館へ行ったのは間違いないのだが、。

監督はリドリー・スコットで主演はシーガニー・ウィーバーそしてSF映画としてはジャンルはホラーに近いモノがあるが歴代のSFトップ・テン入りは間違いない。何せ巨大宇宙船、ノストロモ号のなかを徘徊するエイリアンがなかなか姿を見せずそれが一体どんな化け物なのかと想像しつつグイグイと映画に引き込まれる。

 

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主役に抜擢されたシーガニー・ウィーバーはこの映画の二年前に”アニー・ホール”に出ているがこれが初めて主役に抜擢された作品で当時は30歳と若い。この作品でのエレン・リプリー役が大当たりでその後、続編の2、そして3、4でも主演を演じている。

3とか4になるとリプリーはもう”エイリアン”のママになってしまい全く想定外の展開になって行くが火炎放射器や機関銃を手にエイリアンに一人向かっていく強い航海士役は実に勇敢で見事だった。

監督のリドリー・スコットもこれが出世作品、77年に”デュエリスト”でデビューしたばかりでこの後にはSFの金字塔になる”ブレードランナー”を、89年には日本で”ブラック・レイン”を撮っている。2000年に公開された”グラディエーター”では遂にオスカーを総どりしてしまい押しも押されもしない名匠として業界一の評価を得ている。

まあアクションものやSF、色々なジャンルで撮っているが意表をつく作品、”プロバンスの贈り物”(06年)では再度ラッセル・クロウを抜擢して軽いタッチのロマンスものを監督している。これはフランスのプロバンスを背景にしたものだが共演がマリオン・コティヤールでかなり好きな一本だ。