”オールド・シネマ・パラダイス”、、時々新作も

長年”映画と愛猫とオーストラリア”だったが札幌へ軟着陸し愛猫も亡くしこの新タイトルで心機一転だ。

”我等の生涯の最良の年”(46年)

原題はそのまま”The Best Years of Our Lives”、とそのままだが邦題は”の”だらけ、、これには初めて見た時には違和感を感じたのだが名作には違いない。監督がウィリアム・ワイラーで主演にフレデリック・マーチ、ダナ・アンドリュース、そしてハロルド・ラッセルの三人が第二次世界大戦から帰還した兵士を演じてる。

 

 

f:id:guch63:20210812171739j:plain

 

これは自説だがこの映画がポスト・第二次世界大戦を演じているならマイケル・チミーノ監督の”デアー・ハンター”はポスト・ベトナム戦を描い秀作ではなかろうか?

映画が公開されたのは1946年でまさに戦後すぐ、リアルタイムでご覧になったファンはまさに自身の周りで起きていた事がスクリーンに再現されていた訳でドキュメンタリーを見るような感覚だったんじゃなかろうか。

舞台になっている場所は架空の街でブーンシティと呼ばれているがどうもオハイオ州内らしい、、ホーマー(H・ラッセル)は水兵で乗っていた空母が撃沈された際に両手に火傷を負い今は両方とも義手、陸軍の連隊長だったアル(F・マーチ)は長い間、銀行員だったが妻のミリー(マーナ・ロイ)と息子、娘のペギー(テレサ・ライト)がいる。フレッド(D・アンドリュース)は爆撃機に乗り優秀な爆撃手だったが以前はドラッグ・ストアでクリーム・ソーダを売っていて出兵時にはナイトクラブで働く妻のマリー(ヴァージニア・メイヨ)がいる。そんな彼らが同じ故郷へ帰る為に乗り合わせた軍用機で偶然顔を合わせ無事に帰れる事を互いに喜ぶ。

その彼らの帰還後の物語でホーマーには幼馴染で婚約者だった彼女がいるのだが自分の障害を思うとスンナリ元の関係に戻れない。アルは娘が大きくなり心配だ、、でも幸いにも出征前に勤めていた銀行の頭取から声を掛けられ今度は貸付の部署で副頭取と言う待遇で職場復帰となる。フレッドは妻のマリーは帰還を喜んではくれたが金銭的にも余裕がない生活がイヤで自分でも夜の商売へ戻る気が満々だ。

映画は丁寧に彼らの事情と置かれた立ち位置を検証しながら進んで行く。この辺りの各自が無事に故郷へ帰りながらも置かれた環境に何となく馴染めず財政的にも不安を感じている様子が良くわかる。

映画はその後、一転二転、まあ小さい山あり谷ありで淡々と進んでいくのだが見ている側は多分、ああなってこうなるんだろうな、、と思った通りに進む。終盤はフレッドとペギーがどうなるのか?そしてホーマーはしっかりと恋人の愛を受け止められるんだろうかに焦点が移っていく。アルは一見、順風満帆に見えた妻のミリーとは一度ならず何回も騒動があった様子でそれを娘のペギーに打ち明ける、。

全編172分とこの時代の映画にしては画期的に長いのだが全然そんな事を感じる余裕はなかった。終わってみればもう夜メシの時間に近かった。

第9回のアカデミー賞ではトータル10部門でノミネートされ作品賞、主演男優賞を始め9部門を制覇して1989年にはアメリカ国立フィルム登録簿に登録されている。”デアー・ハンター”と違い衝撃的描写とかはないのだが同じ戦争から帰還してPTSD(心的外傷後ストレス障害)に悩む兵士と社会復帰を取り上げた傑作だ。

やはり素晴らしい映画は何回見ても褪せる事がない。モノクロだって事さえ忘れてしまうのだ。