”オールド・シネマ・パラダイス”、、時々新作も

長年”映画と愛猫とオーストラリア”だったが札幌へ軟着陸し愛猫も亡くしこの新タイトルで心機一転だ。

”キャッシュトラック”(21年)

原題は”Wrath Of Man"(”怒れる男”って意味なんだが、、)その昔、映画化されたスタインベックの名作は”The Grapes Of Wrath”(”怒りの葡萄”)だったが今回の邦題はより内容を的確に表現している。

監督はガイ・リッチーで主演はジェイソン・ステイサムと来ればどんな映画か想像出来る。目新しいところはない犯罪、強奪事件映画だがクリント・イーストウッドの息子、スコット・イーストウッドがなかなかな悪役を演じていたのが印象深い。

映画の手法としてはリッチー監督得意の時間移動が駆使されていて現状からいきなり3週間前に戻ったり半年後とかになるのでしっかり見てないと混乱する。でもまあ主役が殺される事はないのでゆったり構えて見てられるのだが、、まさかもう007みたいなエンディングは無かろう。

 

 

主役の”H"(J・ステイサム)の素性は明らかではないがFBIの指揮官らしいキング(アンディ・ガルシア)から情報を得ているので普通の警備員じゃないだろう、、と予想は出来る。そして潜入捜査風な筋書きからある警備会社、フォーティコへ入社する。現金輸送が専門で大型武装トラックで銀行間から現金を回収する業務らしい、。

そこでいきなり3週間前に戻り、そのフォーティコの現金輸送車が襲撃されたまたま通り掛かった”H"親子が巻き添えを食ってしまう。更には”H"がフードトラックでランチを買っている最中に車外に出てしまった息子が銃弾を浴びて殺害されてしまう。

っとそんなお話で現在と過去を行ったり来たりしている間に”H"、、は実際にはパトリック・ヒル又は、メイソン・ハーグリーブスと言う名前である事が判りどうやら一連の潜入捜査は息子を殺された事への復讐らしいと見ている方にも判って来るのだ。

クライマックス君に続く終盤は”為五郎”は出て来ないがやっと息子殺しの難いヤツの素性が判り仇討ち成功となり現金強奪班一味は(もう殆ど殺されてしまったが)ドアから入って来たFBIキング捜査官に引き継がれ、、”H"は街中へと去って行くのであります。

まあガイ・リッチー監督(これがジェイソン・ステイサムと組む4作目)らしいアクション満載映画と言えば良いのだろうがスカッとする復讐劇で御座います。

 

 

 

”マクドナルド&ドッズ 窓際刑事ドッズの捜査手帳”(20~22年)

原題は”McDonald & Dodd”だけで窓際とか捜査手帳は何処にもない。本国イギリスで放映開始されたのが2020年でこれまでシーズン1が2話、シーズン2が3話、そしてシーズン3が3話からなる本格犯罪捜査ものだ。

主役の二人にジェイソン・ワトキンズ(ドッズ)とタラ・グヴェイア(ローレン・マクドナルド)が扮していてドッズは11年振りに捜査に復帰した窓際万年巡査部長刑事で一方の女敏腕警部はロンドンからやって来た上昇志向丸出し刑事。

この二人が絶妙なコンビ振りで難事件を解決して行くもので背景はバースと言う世界遺産にも登録されている風光明媚な市だ。元ネタを英国で大ヒット請負人でもある制作陣が取っていてこれまでに制作された”ヴェラ~信念の女警部~”、”シェットランド”、”主任警部 アラン・バンクス”、等の脚本家が務めている。

今回はシーズン3の1話が放映されている。タイトルは”ベルベディーア”(お屋敷名)で以下こんな感じ、、;

 

 

公園で若い女性が微笑をたたえて死んでいるのが見つかった。身元さえも分からない中、マクドナルド警部とドッズ巡査部長たちチームは現場の状況と目撃証言から手掛かりをつかもうとする。マクドナルドは事件当日に犠牲者を市庁舎で見たことを思い出し、そこで講義を行っていたジョージ・ギラン教授の家へドッズと共に向かう。「ベルベディア」と呼ばれるその場所に、教授は100歳を迎える母親と住んでいた。

 

一番の見どころは辛辣で抜群の行動力を持つマクドナルド警部とドッズ刑事のやり取りだが一見頼りなさそうなおっさんが的確に謎を解き明かしマクドナルドには及びもつかない頭脳明晰さで事件解決に尽力する様子が実に爽快だ。プロットも実に複雑でとても見ながら真犯人を探す事は出来ない、、そんな展開である。

シーズン3は後、2話あって来週その先へと続くのでこりゃ見逃せない。このところずっとイギリス物もアメリカ物も空振りの連続だったがやっとこさ次週が楽しみなミステリー犯罪モノに出会えたぞ。

 

 

 

爆笑映画館とスタンディング・オベーション

映画館へ入って予告編や本編が始まる前に大笑いした事があった。見た映画は”裏切りのサーカス”だったので確か2011年の9月頃だったと思う。今のようにネットで席を買ったり、指定席だったりする以前なので上映時間を確かめ、窓口のおねいさんに見たい映画を告げて現金を出す方式だった。

 

 

何時ものようにボクの指定席、後方真ん中に確保したのだがその映画館は真ん中に通路があり左右に進んで席に着いた。そしたら前列を同じように右側へ進んで行くデカいおっちゃんが目に着いた。そのオージー、しきりに ”excuse us”と言いながら行く、何せデカいので席に着いている人達は一旦立ち上がらないと通れない。

 

もう館内は8割がた埋まっているので立つ方も大変だ、。だが待てよ ”excuse us”って言ってなかったか?するとそのおっさんが立ち上がった人たちに”thank you, thank you”と言いながら”mrs”が後から来るんだよ、そっちの方がオレよりデカいからね、、っとか言っている。そしてそのご婦人の登場だ、両手にそれ全部食うの?と言うくらいのバケツ状のポップコーンを抱えている。

 

確かにおっちゃんが関脇ならこっちのおばちゃんは大関だ、そしてやっと座ろうとしてた人達を再度立たせて旦那の後を追って一番奥の席へ軟着陸した。この経緯に同列と後方列の観客から大爆笑が起こったのだ。まあご本人はウケを狙った訳じゃなくごく自然に振舞っている姿が妙に和やかで我々も思わず噴き出したと言う訳だ。

 

そしたら今度は係員が数人の客と最前列へ出て来て”皆さん、この回は満席です。何処かお隣に空席はないでしょうか?”と言い出した。するとすかさず別のおっちゃんが後方から”お~い、此処に一席なら空いているぜ、、でも若い女性の専用席だがね、、”とやったもんだから又もや場内が大爆笑に包まれた。

 

これがオージーのアスタマニアーナ精神だと気が着いたがユーモア満点なやり取りは映画以上に笑えた。館内を見まわすとどうも近所の老人ホームから団体で来ているのかと思う程にオールシニアだったがその2時間後には全員がこの傑作スパイ映画を堪能して笑顔で席を立って行った事が懐かしい、、。こんな経験は日本じゃ出来ないんだろうな、と映画館を後にしたものだ、。

 

それと年代は遡るのだが映画のエンディングを見ながら満席の観客が全員立ち上がって拍手喝采をした場面を、、映画は”ロッキー”、最初にスタローンが主演したスポ根もので連日映画館は満席の状況と伝え聞いていた。映画館はハリウッドのもっと北側でウェストウッドと言う町、普段からUCLA分校がある事から学生街として有名なところ。公開されたのが1976年なので確かその秋口だった気がする。

 

 

日本じゃ入場券を買うのに映画館に並ぶのだがあっちは入場券を買ってから列に並ぶ方式だ。すんなりと券が買えたので”おお、こりゃラッキー、空いているじゃないか?”と思いきや冗談じゃない、。まだシネコンになる前の単独映画館だったが何とその周りを2周も並んでいるじゃないか。

 

もうとてもその回には入場出来ず次の回へ、そして大満足して見終わった途端、館内の全員が立ち上がって拍手喝采、これにはビックリしたものだ。それまで映画館で見終わった後に大拍手するなんて経験はなかったぞ。エンドロールが出ている間、ずっと拍手が鳴りやまない。無論オレも一緒になって拍手していたものだ、、、。

戦場の女たち NHK ”映像の世紀”

どうも最近、映画館は無論だがTVでもじっくりと腰を据えて観戦する気力が失せている気がする。もう脚色された作品は見たくない、、と言う訳でもないのだがどうもツッコミ所が満載の技法にはうんざりして来ていると言うのが本音かも?

 

映画の世界なんだから何でもOKとは思っているがやはり撃たれても死なない、10人に囲まれて銃撃戦になっても主人公だけはかすり傷一つ負わず生き残る、、さっきまでニューヨーク市内のセントラルパークでカーチェイスしていたのに角を曲がったら其処はもうバテリーパークの海辺だった、、何てのを見せられているとかなり白けてしまう。

 

 

そんな時に出会ったのが正統派ドキュメンタリー映像だ。これは毎回録画しているNHKオンデマンドで放映されている”映像の世紀バタフライエフェクト”と言うシリーズでボクのストライクゾーンど真ん中を射止めた”戦場の女たち”である。

 

第二次世界大戦以前に遡り世界の軍隊で躍進的な活躍を遂げている女性兵士が主人公たちである。最初の一人はソ連軍のスナイパー、リュドミラ・パブリチェンコ敵対するドイツ軍の兵士を狙って公式記録には309人の狙撃を成し遂げたらしい。そして二人目はナチスの天才飛行士、ハンナ・ライチュで戦争末期にゼロ戦でも有名になったが急降下爆撃の技術の開発に携わっていた。

 

そして最後は連合軍のノルマンディー上陸作戦の成功を陰で支援していた連合軍側の女性スパイたちである。この設定は過去には何度なく映画化されているし女性をヒーローとして主人公に持って来るには最適の逸話である。

 

実際には20人以上の多くの女性たちがイギリス国内に集められ過酷な訓練を受け戦地へ潜入、そして現地のレジスタンスと連動してノルマンディーへ続く主要幹線道路、鉄橋などを破壊してドイツ軍が集結出来ないように爆破工作を受け持っていたようだ。

 

半数近い女性兵士は帰らぬ人となっているのだが終盤、記録映画のインタビューに答えて”愛する祖国を守る為に立ち上がりました”と述べているのが実に印象的なエンディングだった。それがこの長い年月を経て同じ言葉をウクライナの女性兵士が今この時代に語っているのを見てやるせない気持ちになってしまった。

 

即ち人間がいる限り争いは続く、、過去の大戦を経ても人間ってのは何も学んでいないのではなかろうか?先のハンナ・ライチュは戦後もヒトラーを心底崇め胸には何時もクローケンハイツの十字を誇らしげに着けていた、、。現代のソビエトの女性兵士たちはプーチンを同じように崇めているとしたらそれは違うでしょ、、とは誰にも言えない?

 

 

 

 

”めぐり逢えたら”(93年)

久し振りに見たこの映画には結構思い入れがある。舞台になっているのがシアトルで次女が結婚した当時、式に出席し10日ばかり滞在したのだが改めて見てみるとロケ地として登場して来た箇所、その殆どへこっちも”めぐって”来たのだ。

 

ストーリーは実に他愛ないラブロマンスだがトム・ハンクスメグ・ライアンも若くて俳優業としてピークにあった時期、そりゃオレだって若かったし。公開されたのは30年も前だが挙式に出たのが2010年なのでもう12年も前、って事は映画が公開されてから17年も経過していたって事になる。

 

それが市内観光のバスや海上へ出る遊覧船に乗っても、、”皆様、彼方に見えるのがトム・ハンクスの自宅です、、”とか”あの駐車場でメグ・ライアントム・ハンクスが初めて出会った場面です、、”とかハリウッドじゃあるまいしロケ地めぐりな案内だった。

 

確かに大ヒットした映画に登場すると観光案内には必ずと言って良い程出て来るし、知名度を利用するもんだがたった一本の映画が観光客の興味をそれ程長い間、繋ぎとめているって事には正直驚いた。

 

 

劇中では何回となく出て来るのだがプロットはケイリー・グランド、デボラ・カー主演の”めぐり逢い”(57年)である。これは原題が”An Affair To Remember"なんだが実はこの映画もリメイクで真のレオ・マッケリー原作版は”邂逅”(39年)でアイリーン・ダンシャルル・ボワイエである。

 

更にはウォーレン・ビーティとキャサリーン・ヘップバーンで作られたのが”めぐり逢い”(94年)と実にややこしいのだ何れも原題は”Love Affair"なので統一されていても混乱する。この”めぐり逢えたら”は”Sleepless In Seattle”と内容はかなり違うしタイトルは全く別モノになっているが最後にカップルがニューヨークのエンパイア・ステート・ビルでめぐり逢う演出は共通している。

 

 

オリジナルの”邂逅”だけは見てないが他の作品は見ている、でもやはり映画の出来具合はケイリー・グランド、デボラ・カー版が一番良かった気がするし一番泣かせてくれる。セリフに関してはこの”シアトル版”は実に映画を映画で語る場面が多くて一人で見ながら思わず笑い転げてしまった。

 

 

それにしても30年前の映画を17年前に現地でロケ地巡りをした気分で当時の風景がそっくりそのままってのも面白かった。まだスタバやアマゾンは出て来なかったし将来、イチローが行くことになったマリナーズの球場は収録されていなかったのは残念でした。