”オールド・シネマ・パラダイス”、、時々新作も

長年”映画と愛猫とオーストラリア”だったが札幌へ軟着陸し愛猫も亡くしこの新タイトルで心機一転だ。

”私は告白する”(54年)

これまたヒッチコック監督の秀作で制作されたのは1954年になっている。と言う事は主演を演じたモンゴメリー・クリフトが”地上より永遠に”でプルーイット一兵卒を演じていた年だ。この映画では苦悩する牧師さん役で他の配役、アン・バクスターカール・マルデンが共演陣でモンティは知らずに殺人強盗犯として身柄を拘束される役柄だ。

 

f:id:guch63:20210804142107j:plain

モノクロを感じさせない映像で実に巧みな構成、そして脚本が素晴らしい。題材としては日本でもサスペンス劇場等の単発番組にもありそうな展開なんだがやはりヒッチコック爺は落とし何処を心得ている。それにイギリス人の割にラストはアメリカン映画風のエンディングになっているし、、。

映画の舞台はカナダのケベック、街には英語とフランス語が共存している。そんな中で一人の男が殺傷される。見ている側には犯人の顔は見えないがどうやら牧師さんの衣装をまとっているように見える。そして画面は一転、その男が教会の引き戸を開けて中に入って行くのだ、それを二階の自室から見ていたローガン神父(M・クリフト)は不審に思いながら教会へ入って行く男の後を追って中へ入ると、、それは教会内に夫婦住み込みで働くオットー(O・E・ハッセ)だと判る。

オットーは告解したいとローガン神父に告げ”たった今、人を殺して来た”と告白するのだ。この告白には驚くが他言無用である事を誓い二人とも自室へ引き上げる。

ここまでが僅か20分程度に収められている。警察の取り調べに苦悩するのはローガン神父だろうな、、と想像するのは当たり前だ。翌日、先の紳士の死体が発見され目撃者の証言から立ち去った男は神父さんの着衣をまとっていた事が判明する。近所の教会を回って牧師さんの着衣を着て出掛けていた関係者を片っ端からあたるラルー警視にカール・マルデンが扮している。

そんな展開で今度は第一容疑者として不審に思われるローガン神父は本当の事は言えない、、それ以上に現場付近である女性と会っていた事を問い詰められそれにも返答が出来ず容疑は増すしラルー警視以下捜査陣の心証は真っ黒となって行く。

さあどうするのさヒッチコック監督、、そう思う間もなくその女性ルース(A・バクスター)は国会議員の妻でローガンとは幼馴染、今もローガンを愛している事が判って来る。どうやら殺されたビレットは弁護士でありながらルースとローガンの二人の関係を知り恐喝していた事が判って来る。こりゃ益々ローガンの心象は悪くなる、今度は立派な動機まであると言うのでラルー警視はもうローガンは”半落ち”じゃないかと喜ぶのだが、、。

いや~、、プロットが巧みだ。スリラーと言う部類じゃないが犯罪ミステリー映画、それも犯人は判っているのに告発出来ないしかも唯一の証人であるローガン神父が神の名においても告発された事を開示出来ない、そんな板挟み状態のローガン神父を演じたモンティが実に上手い。

ジェームス・ディーンもそうだったがこのモンティ・クリフトも45歳の若さで世を去ってしまった。愁いのある青年像、しかも苦悩しつつ自分の信念は曲げない恐らくホンモノもそうだったんじゃないだろうか、、と思わせるのだが45歳は若過ぎる。