”オールド・シネマ・パラダイス”、、時々新作も

長年”映画と愛猫とオーストラリア”だったが札幌へ軟着陸し愛猫も亡くしこの新タイトルで心機一転だ。

”6才のボクが、大人になるまで”(14年)

やっとこさオスカーの授賞式前に見ることが出来た。本年度最優秀作品賞の”大本命”映画である。アメリカ本国では昨年7月に限定公開され評判の良さに後押しされて各地に拡大公開となり興行的にも大成功となったらしい。何せ制作に12年の歳月を掛け一人の少年が6才から18才になるまでを捉えた映画だ。まさに監督やスタッフ、他の共演者もリアル・タイムで夫々の年月を”演技”していたと言うドキュメンタリーとでも言える映画になっていた。

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これが主演のメイソン君を演じたエラー・コルトレーンの6才から18才になるまでの発育振りだ。6才の頃は可愛かったが最後の18才の頃はもう完全におっさん風情だ。

記録は12年間を集約したものだが2時間40分と映画としてはとても長い、、これが息もつかせぬアクションとかミステリー映画なら兎も角、平坦な道のり(映画としては)”山なし谷なしの展開”で続けるのは大変なご苦労だったろう。何でも毎年制作スタッフが集合してそれまでの一年を振り返る方式で撮影を進めたらしのだがこの根気だけでそりゃ”賞”さんものだろう、と思ってしまった。

舞台はテキサス、シングル・マザーのもとで暮らすメイソンと妹のサマンサ(ローレライ・リンクレイター)、、、監督、リチャード・リンクレイターの実の娘、、は突然子供二人を連れて祖母にいるヒューストンへ引っ越して行く。この母親オリヴィアを演じたのがパトリシア・アークエットで別れたパパがイーサン・ホークだ。

そこから”6才のボク”を中心に(妹を演じたローレライがすこぶる巧い)物語が展開と言うか、、ドキュメンタリーが綴られて行く。

オリヴィアが再婚した相手は大学教授、学位を取るために自分でも通っていた大学の担当教授。やはり離婚を経て男女の子供がいるのだが年齢もサマンサとメーソンに近い。しかしこの相手がもう殆どアル中教授だ、、再婚して上手く行きそうだったのにメーソンにも辛くあたるようになり家庭内暴力に走ってしまう。ママは慌てて着の身着のまま二人の子供連れて飛び出す。そして敢え無くこの二度目の結婚もちょん。

懲りないママは、、やはりこの辺りはアメリカの実社会を垣間見る思いがするのだが(まあオーストラリアでも同じなんだが、)”気に入った異性が周りにいないと生きていけない”、、かと言って無類の男好きって訳でもないのだが、、っで又、今度は新たに知り合った男性と一緒に生活するようになる。この期間、メーソンがまだ小学校高学年から中学、高校へ行く頃なので僅か3-4年の間に結婚、離婚、そして又、別の男とくっついているって事になる。

確かに子供の事を願い自分は品行方正、聖人君子のような生活をしろよ、、とは思わないがこんなに自立心のないママじゃ子供たちに与える影響だってよかろうハズがないだろう、、。救いは最初に別れた実のパパ、アラスカへ出稼ぎに行っていたとしか判らずどうも定職に就いている雰囲気じゃないのだが週末や夏休みには子供たちを連れて街へ遊びに行ったりキャンプへ行ったりと良いパパ振りを発揮する。一緒に生活をしていると夫婦間、喧嘩が絶えず子供たちも両親の顔色を伺う生活を強いられるのだがこうしてタマに会うだけなら双方、満願の笑で楽しい時間を過ごせるのだ、、。

この映画が評論家諸氏、そしてアメリカの映画ファンに圧倒的支持を得る、と言う事はこんなママの生活ぶり、そしてそれに振り回される子供達の生活が普段の生活に非常に密着してるという事の裏返しではなかろうか??劇中、パパも後半再婚して赤ん坊が誕生する、、そうなると”叔父、”叔母”、”従兄弟”に”義兄弟”、、、もうその繋がりは天文学的人数になるぞ。離婚したパパとママには夫々両親がいるんだし、兄弟もいる、何せこの二人は23才で結婚、メーソンとサマンサが生まれている、、って事は”ボクが6才”の時にはパパが29才、、その後ママが再婚し血の繋がらない子供二人がいたんだからそれは”義兄弟”、、別れたパパが再婚して子供が出来れば此方も又、”義兄弟”、、映画の良さに酔いしれる前にそんなこんがらかった人間模様が頭に残ってしまった。

結論、、、12年の歳月をかけて撮った記録映画、これには頭が下がる。恐らく当初は収益など度外視して制作されたハズだ、、そしてその12年を2時間40分に集約した手腕にも驚かされる、、しかしどうしても”映画芸術”として見る以前に日本人の眼で鑑賞し感じてしまう。”精一杯人生、その時を生きて子供を育てそれなりの豊かな生活をしたい、、でも夫たちとは別れ、子供たちも最後には学業だ何だと去っていく”、、これがママがエンディングに呟く言葉、。これにこの映画の全てが集約されている、、でももうちょっとは我慢し、子供たちにももっと違った形での愛情を注いでいればと、、これは単一民族ならではの日本人の感想である。

耐えて耐えて耐え忍ぶ、、そんな山本周五郎が描くところの”日本婦道記”の主人公みたいな女性はアメリカじゃ生きていけないんだろうな~、、これは独り言。


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