”オールド・シネマ・パラダイス”、、時々新作も

長年”映画と愛猫とオーストラリア”だったが札幌へ軟着陸し愛猫も亡くしこの新タイトルで心機一転だ。

”野生のエルザ”(66年)

この原作は1960年にジョイ・アダムソンが刊行したドキュメンタリーが元ネタで66年にはイギリスで映画化、それ以降TVドラマ化やアニメ化もされ続編まで作られている。最初の映画化では”Born Free”とタイトルが付けられ同名のオリジナル曲をジョン・バリーが書き、それをマット・モンローが歌い世界的に大ヒットさせた。

 


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映画はジョイにバージニア・マッケナがそして夫のジョージにはビル・トラバースが扮し(実生活でもご夫婦)、まさに大きなネコ科のライオンを扱った心温まる物語になっていた、。1971年にはスタッフやキャストを一新し”永遠のエルザ”(”Living Free")が制作され公開されている。

原作ではこんなお話だ、;

1956年、ケニアの狩猟監視官であるジョージ・アダムソンは、人食い事件で雌雄のライオンを射殺し、その子供である三頭の赤ん坊を家に連れ帰った。ジョージの妻ジョイは、前例のない子ライオンの人工保育を成功させ、三頭はアダムソン家で育っていった。しかし、野生の生活を知らないライオンは檻の中で生きるしかない。ジョイは泣く泣く二頭をオランダの動物園に送ったが、一番小さいエルザだけはどうしても手放すことができなかった。

成長したエルザは近くの現地人の村で騒ぎを起こし、放し飼いを禁じられた。ジョージには、狩猟監視官に定められた一年間の長期休暇で英国に帰る日も近づいていた。動物園ならエルザは安全に暮らせると、ジョイを諭すジョージ。しかしジョイは、エルザを野生に返すという驚くべき決意を口にした。

三か月の猶予を得たジョイ達はサバンナにキャンプを張り、エルザに狩りを教えるための訓練を開始した。しかし、前代未聞の試みはなかなか上手く行かず、衰弱したエルザは重い病気を患った。日数も残り少なくなり、諦めかけた頃、ついにエルザは獲物を倒し、野生のライオンの群れに迎え入れられた。

その後、長期休暇に入ったジョイとジョージは、早めに日程を切り上げてケニアに戻り、エルザと別れた自然保護区を訪れた。エルザの姿を確認できないまま最終日を迎え、諦めてキャンプを畳もうとした時、三頭の子ライオンを連れたエルザが元気な姿を見せた。以前と変わらずジョイ達に甘えるエルザは、野生と人間界の懸け橋となったのだった。

 

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っとまあこんなお話なんだが本当にライオンってのはそんな感情を持ち合わせているんだろうか?何れにせよそんなツッコミよりこのラストは自然界へ戻り、自身の子ライオンをジョイとジョージに見せに来る、こりゃもう感激するっきゃなかろう?第一、ドキュメンタリーなんだからノンフィクショナルなお話しとしてこのマット・モンローの歌声にシビレようではないか?

 

 

 

”ファーザー”(20年)

これはチョイと読み逃せない。一昨日だったかに投稿されていた新聞記事の一部なんだがフロリアン・ゼレール監督がインタビューに応えてこんな事を、、;

映画化に当たり、認知症の父親役として頭に唯一浮かんだ顏がアンソニー・ホプキンズだった。”存命する俳優の中で最も素晴らしい役者だ。老いを表現するのは勇気のいる事だが、彼ならすごい演技をすると確信していた”と書かれている。

そしてご自身はフランス人なので”フランスで作った方が簡単だったがアンソニーと一緒に仕事をしたかったので英国を舞台に英語で撮る事にした”。更には脚本では主人公の名前、生年月日をホプキンズ自身と同じ設定に共同執筆者と共に俳優にあてて書き直したとまで書かれている。

その監督の意図するものは”アンソニーさんなりの老いや死に対する恐怖をそのまま出して欲しかった。それによって作品自体が何か真実に迫るインパクトのある力強いものになると信じたからだ”。そうなるとこれはもう俳優さん本人の考え方や内面を映画制作に売り渡しているんじゃないのか?と感じたほどだ。

そして次には、、”ホプキンズ圧巻の演技は、子供のように母親を求めて泣く最後のシーンと断言する。現場のスタッフもみな泣いていた”。監督の思惑通り、ホプキンズは”あるがままの姿、自分のもろさを、カメラの前にさらけ出していた”。撮影しながら思わず”奇跡のような瞬間だ”と感じ”圧倒されるものを見せてくれた”。

本作では観客自身が、主人公の脳裏に入り込んだような感覚で、認知症による記憶の喪失と時間の混乱を追体験することになる。この作品はその効果を狙って設計されている。観客は迷路のような場所に置かれて、方向感覚を失った感じになり、即ちストーリーの一部をして能動的に参加する映画にしたかった、、と締めくくっている。

 

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これが掲載されていたインタビューの一部なんだが映画は”ファーザー”、(”The Father") そして今年のアカデミー賞では見事に主演男優賞と脚本賞を受賞している。

監督にこんな事を言われたらそりゃもう見に行かないと、、と早速検索したらどうやら札幌でも映画館での公開が予定されているらしい。ところが例の”感染防止法”が適応され映画館は人数制限に、どうやら観客数は半分に抑えての上映らしい、。まあしかしそれ以前に”不要不急の外出はお控え下さい”、とか”用事があっても感染防止策を取らない限り出掛けるな”とTVを点けりゃ否応なしに画面に表示されている。

さてこの映画観戦は”不要不急”なのか、、観戦に行って感染したんじゃ笑い話にもならん、。っであと一押しのボタンに指が伸びてそのままフリーズしているのだ。でもふざけるな絶対に見に行ってやる、、と心には誓っている。

 

 

 

 

 

 

”女刑事ペパー”(74~78年)

邦題は”女刑事ペパー”だが原題は”Police Woman"でアンジー・ディッキンソン扮する”ペッパー警部”が活躍するTVシリーズだ。この”ペッパー警部”が後年、あのピンクレディの大ヒット曲に繋がったんじゃなかったかな?

そのペパーは最初に放映されたシリーズ序章ではリサ・ボーモントだった、それがリクルートされてロス市警の特別犯罪班へ入る事になりそれ以降はペパー・アンダーソンとして主に潜入捜査、おとり班として毎回違う服装や名前を使い悪の摘発にあたると言う展開になっている。なので制服姿で出て来る事はないし直属の上司、ビル(アール・ホリマン)以下4人のチームがバックアップして丸となって活躍していた、。

 

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アンジー・ディキンソンは”リオ・ブラボー”(59年)でスクリーンデビュー、ジョン・ウェインと共演しその後、オリジナルの”オーシャンと十一人の仲間”(60年)ではフランク・シナトラディーン・マーティン等と共演、”恋愛専科”(62年)ではトロイ・ドナヒューとスザンヌ・プレシェットに挟まれ、”逃亡地帯”(66年)にはマーロン・ブランドと共演、そして翌年には”ポイント・ブランク”(殺しの分け前)でリー・マービンと共演、これがイチバンの当たり役になった。

その後、ブライアン・デ・パルマ監督のサイコスリラー、”殺しのドレス”(80年)で敢え無くシャワールームで殺人鬼に殺害されてしまいその後はオッパイ丸出しの映画とか(ご本人じゃない)冴えない映画ばかりでオレのレーダー網からも消えてしまった、。別に彼女が目的で見ていた映画じゃなくて見れば彼女が出ていた、、ってのが真相かもしれないがそれだけ集中して良作に引っ張り出されていたって事は彼方でもかなり人気があったんじゃなかろうか?

その”ペッパー警部”だがこれまた時代が74年のロスアンジェルスでオレにはぴったりそのままの背景だった。日本から新婚旅行でやって来た〇〇さんの新妻がダウンタウンの裏道で銃撃されて死亡、、何てビックリするニュースが飛び込んで来たのは丁度オレがその犯行現場のすぐ近くにあったヒルトンホテル内にあったバーカウンターだった。

当時こりゃ気の毒に、、と我ら日本貿易振興会の有志会員が募金を募って残された夫君に手渡したっけ、そしたらなんとまあ皆さんご存じの顛末に、ありゃビックリだった、。ペッパー警部が対処していたらあんな事にはならなかったのに、。

それにして良く考えるとこのアンジー・ディッキンソンってのは1931年生まれ、って事はオレの母親にかなり近かったんだ。その母の面影よりアンジーの面影がしっかり残っているってのはマズいんじゃなかろうか?あっちで逢ったら何と言い訳するかな?

ダメだ、、最近こんな古い時代の映画やTVシリーズから目が離せなくなっている。まあ新作を一切見てないので無理もないか、。

 

”ロックフォードの事件メモ”(74~80年)

TVシリーズとして制作されシーズン6まで放映されている。主演はジェームス・ガーナーで舞台はロス・アンジェルス、そしてそのジム・ロックフォードは5年も無実の罪で服役して来たと言う設定の私立探偵だ。

ジェームス・ガーナーは”大脱走”で脚光を浴びるまでは56年頃に映画デビューし10本近くの作品に出ているがこれがメージャー出演になりドイツ軍の収容所では何でも調達して来る便利屋ヘンドリーを演じていた。劇中、盲目になってしまうドナルド・プレセンスの相棒として最後まで行動を共にし、戦闘機に乗り込んだ時にはこりゃ彼らが脱出唯一の成功者か、と思わせたもんだ。

それ以降お笑い系のコメディやジュリー・アンドリュースと共演もしているが1965年には異色戦争映画、”36時間”でエヴァ・マリー・セイントとも共演していた。この映画では記憶を無くした連合軍の将校役、敵のドイツ軍参謀がロッド・テイラーで飛行機事故から回復したジェームス・ガードナーを既に戦争は終わり、連合軍の勝利だった、と信じ込ませ連合軍が果たしてノルマンディーを含む何処の海岸へ上陸するのか聞き出そうと言う映画だった。

 

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それからは西部劇が多くなって”砦の29人”、”墓石と決闘”、”夕陽に立つ保安官”等があった。66年には”グラン・プリ”で三船敏郎イブ・モンタン、そして又もやエヴァ・マリー・セイントと共演している。そんな映画歴の後にこの”ロックフォードの事件メモ”に出る事になったが以前活躍していたTVシリーズの”マーベリック”とは全く違う役柄で毎回ロケが敢行されたロスの各地を見るのも楽しみの一つだった。

私立探偵特有の”ハードボイルド”さは余りない、ちょいとソフトで頼りなげな探偵振りで女性にはすこぶる弱い、ロス市警に昔馴染みがいて毎回捜査にはそれとなく便宜を図ってくれる。依頼される事件も警察じゃ手を出せない案件が多くその辺は持ちつ持たれつの関係が継続されていく、。

どの事件も殺しが絡むものだが全編ロス市内でのロケ撮影を中心に撮られている。セットは彼の事務所兼住居、警察署内でその撮影場所が良く知ったホテルだったりレストランだったりでTV画面で知った場所や食べた事があるレストランが出て来ると妙に懐かしい。それに彼の乗っているクルマ(カマロの2ドアスポーツクーペ)とかが出て来ると妙に嬉しくなってしまう。

 

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2000年には”スペース・カウボーイ”と言う映画でクリント・イーストウッドドナルド・サザーランドトミー・リー・ジョーンズの面々とロートル飛行士が再度招集されてシャトルで宇宙へ飛んで行くなんて映画もあったっけ、。

 

”ジャン=クロード・ヴァン・ダム / ファイナル・ブロッド”(17年)

この映画は原題が”Kill 'Em All”と言って”全員殺っちまえ”みたいな物騒なタイトルだが邦題はもっと穏やかに主演俳優の名前を付けて”ジャン=クロード・ヴァン・ダム / ファイナル・ブロッド”と余計に訳の判らないものになっている。

ジャン=クロード・ヴァン・ダムと言えばベルギー出身のアクション派俳優でスタローンやシュワルツェネッガーの肉体派、更にはジェット・リーやスティーブン・セガール等の空手やキック・ボクシングの使い手として同列に語られていた事もあったがそれももう還暦を過ぎてしまい今や”昔の名前で出ています”状態になっている。

映画の舞台はロスアンジェルス、そして病院内での出来事なんだが微妙にお話が前後する、、過去や未来に飛んで行く訳じゃないのだが病院へ押し込んで来る殺し屋風情の一個師団、どうも彼らは誰かを探している様子、。そこでいきなりフィリップ(JCヴァン・ダム)を巻き込んで殺戮が始まってしまう。

そして次の場面ではFBIの捜査官に尋問を受けている女性が、名前はスザンヌ(オータム・リーサー)、病院内で保護された看護師さんで先の殺戮現場で隠れている所を発見された目撃者と言う事らしい、。

FBIの担当官が二人、執拗に彼女を尋問するのだが別に彼女が当事者って訳じゃなくあくまでもフィリップと一個師団が戦っていた様子を聞き出そうとしているのだ。画面で展開された派手な殺し合いと対決振りを見たままに供述しているのだがFBIの二人はどうもスザンヌの言う事を100%信じているようには見えない。

 

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そして又、冒頭のシーンに戻りフィリップとこの殺し屋軍団は一緒に病院へやって来て上層階で治療を受けている大ボスの口封じが目的らしいと判って来る。最初は全員仲間と思いきやフィリップと殺し屋連中は殺し合いに発展し看護師だったスザンヌが怪我をしたフィリップを介抱したりしている。

そんなでドンパチ、ドンドンバギューンの連続、するとこのスザンヌも黒帯8段とかで滅法強いのだ、かくして殺し屋軍団に襲われて命を狙われ二人で窮地を脱する為にあの手この手で防戦だ。

やっとフィリップは上層階へ辿り着きベットに寝ている大ボスに弾丸を浴びせ目的を達成したらしい、。どうもコヤツが20数年前のセルビア時代に父親を殺害した真犯人でその復讐劇と言う事だったらしい。そして再度、助け出されたスザンヌを尋問するFBIの尋問室へ、やっと彼女は尋問を終え無罪放免となるのだが、、、。

そこから先は名作”ユージュアル・サスペクツ”の90%リメイクだ。スザンヌには特殊能力がありFBIの担当者が書類を手にして尋問している時でも彼のメガネに反射して写った文字をちゃんと読み取り、優等生的回答をしていたのだ。それに気付いて建物を出て行くスザンヌを追うがもう後の祭り、何処にもいない。一方建物から出て来たスザンヌはカツラを捨て綺麗な金髪へ、、そう病院からの最新報告でホンモノのスザンヌは物置場に縛られて押し込まれていたらしい、。

すると地下の駐車場を歩いていたスザンヌの脇に高級車が停まりドアが開くと、、何とそこには逃亡してしまったと持っていたフィリップが笑いながら彼女を乗せ何処かへ去っていくのでした。この最後の5分にはやられちまった、なんの事はない二人はグルで長年の願い、復讐を遂げたのでありましたとさ。