”オールド・シネマ・パラダイス”、、時々新作も

長年”映画と愛猫とオーストラリア”だったが札幌へ軟着陸し愛猫も亡くしこの新タイトルで心機一転だ。

”ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります” (14年)

主演はモーガン・フリーマンと奥さん役にダイアン・キートンが扮しニューヨークを舞台に”夫婦再生”を描いた良作だ。まあ”夫婦再生”とは言っても互いがそんなに深刻な悩みを抱えている訳じゃなし40年つれ添った夫婦がこれから先どうやってお互い向き合って生きて行くかを再確認すると言うお話だ。うん、そうやって考えると40年を超えた我が家にもピッタリ重なる題材かも知れない、、。

 

トロントの映画祭で上映された時のタイトルは”Ruth & Alex"、と夫婦の名前が原題だったようだがアメリカでは”5Flights Up”となっていて5階にあるアパートを指し二人が住む部屋がタイトルになっている。それが邦題だともう完全にネタバレ状態でその階上の部屋を売却する騒動がそのままタイトルだ。

画家のアレックス(M・フリーマン)は駆け出しの頃にモデルとして派遣されて来たルース(D・キートン)と恋に落ち周囲の反対にも耳を貸さず結婚してしまった。それから40年が経過し今じゃ黒人&白人の結婚だって珍しくないニューヨークで子供には恵まれなかったが10歳になる愛犬、ドロシーと幸せな熟年生活を送っている。

眺望は良いし便利な地域、二寝室ある一方をアレックスはアトリエとして使っていて申し分のない生活振りだが問題が一つ、それはエレベーターがなく5階まで階段を上がり降りする事だ。

 

 

遂にはドロシーも階段を嫌がるようになり二人は友人の不動産屋、リリーに頼んでどのくらいで売却出来るものか試してみる事にする。この辺の描写は実にリアルだ、、最近のとは言っても映画が公開されたのは8年も前になるがその頃でエレベーターなしの二寝室(日本風に言えば2LDK)、しかも築年数は楽に半世紀は超していて広さは140平米は越す物件に88万ドルからの値が付くようだ。

もう殆ど当時の為替でも1億円って事で如何にもニューヨークの住宅事情は大変かが判るのだ。その後、他の同じような物件が出て来るがやはり上限が110万ドル程度、って事は今なら1億6千万とこりゃもう東京の物件は格安に感じる状況だ。

お話は案の定、不動産屋の暴露劇になって行き値段を競り上げより高いオファー(提示額)をした方に売却される仕組みで売り手と買い手の虚々実々の駆け引きになってしまう。そんな駆け引きにウンザリするアレックスだがルースの提案で今度は売却後に自分たちが住む部屋を探す事になりそれまでは売り手として提示される金額を検証する立場が一転、逆に自分たちがオファーを出す立場へ、。

そんな不動産物件を巡る騒動に発展してしまう。その間にはドロシーの急病、入院、手術があったりするのだがストーリー的には山なし、谷なしでそれ程大きな転機はやって来ない。それでもアレックスとルースが近い将来を見据えて頑張る姿は心地良く二人が実に味のある”夫婦40年選手”を演じている、派手さは全くないのだが地にしっかりと根を張ったニューヨーカー振りは見ていても羨ましい。

終盤は多分そうなるんだろうな、、っと思う通りの展開でドロシーも無事退院、シニア夫婦も決心を新たに二人で支え合って生きて行く決心をする訳であります。

 

 

 

”マンチェスター・バイ・ザ・シー” (16年)

この映画は前回見た後で何故邦題を”海辺のマンチェスター”にしないのか、と疑問を呈した事がある、。でも良く調べてみたら原題の”Manchester By The Sea”と言うのはそのまま町の名前なので”海辺”にしてはいけなかったのだ。情けない事に公開から6年が経過してやっとその邦題の真意に気が着いたと言う訳だ。

映画はその実在する町、”マンチェスター”が背景だが主人公のリー(ケイシー・アフレック)はボストン近郊の住宅街で住み込みの管理人兼便利屋をやっている。担当する集合住宅2棟で戸数は判らないがそれこそ雪かきからゴミ出し、簡単な配線やら配管修理まで(この辺りの描写は妙にオレとダブる)、中には理不尽な事を言って来る住人や居丈高にリーをこき使う連中もいるが寡黙で口下手なリーは悪態をついては住人としょっちゅう揉めている。

 

 

そんなリーの元へある日実兄が死んだと連絡が入る。以前から心臓に難病を抱えていて長生きは出来ないと診断されていたものの大分以前に出て行って離婚した奥さんと一人息子のパトリック(ルーカス・ヘッジス)がいる。

リーは病院へ駆け付けるがボストンからは一時間半も掛かり臨終のベッドには立ち会えなかったが後日、弁護士事務所で開封された遺言状には16歳になる息子のパトリックの後見人としてリーが指名されている事が判るのだ。

残された釣り船、家、家財道具一切の権利、そしてパトリックの養育費はちゃんと相続されるように手配はされているのだが息子の面倒を看る事になると今の仕事を辞めてボストンから越して来る事になる。逆にパトリックを”マンチェスター”へ連れて行くには部屋は狭いし本人が高校生活の真っ最中で絶対に越したくないと拒否されてしまう。

 

 

そんな思いがけない展開から映画はフラッシュバックを通じてリーの過去へ遡って行く、、其処にはまだ小さいパトリックが居て兄と三人で船に乗り魚釣りに出掛けた事やパトリックのママがアル中で家の事は一切やらず遂には家出してしまった事、更にはリーには愛妻のランディー(ミッシェル・ウィリアムズ)との間に三人も子供いて幸せな結婚生活を送っていた事も判って来る。

なかでも衝撃的な事件は仲間内で自宅で酒盛りをした後、全員が帰った後に一人飲み足りないリーは徒歩で近所の酒屋へ酒を買いに行き徒歩で20分かけて帰宅して見ると家が激しい炎に包まれていたのだ。どうやら出掛ける前に暖炉へくべた丸太が転がり出て出火したようで一階で寝ていたランディーは救助されたものの二階に居た子供たち全員が犠牲になってしまったのだ。

それがきっかけでランディーとは上手く行かなくなり離婚、リーはいまだにその時の後悔と自責の念から自暴自棄で寡黙な殻に閉じ籠ってしまっている。そんなリーが甥のパトリックの後見人として生活を支えて行くのは至難の技である。

映画はその後、パトリックが密かに実母とメールでやり取りをしていた事やランディーは再婚して一人息子に恵まれている事、、そして善き友人でもあるジョージ夫妻の献身的な協力でこの二人を支える姿が描かれて行く。

リーもやっと過去を振り切ってこの甥っ子と二人で自活していく決意をするのだがこの人生再生とも言えるケイシー・アフレックが実に巧い、兄貴のベン・アフレックの陰になってしまったがこの映画では見事にオスカーで主演男優賞を受賞しているし兄貴とはチト違う路線で活躍中である。

制作費だって850万ドル程度しか掛かっておらずプロデューサーにはケネス・ロナーガンマット・デイモンが名を連ねてはいるが”TV用映画”(Amazonが配給)と言っても過言ではない程の小品である。しかしその映画の”実力”たるや素晴らしいものがある。たまにかも知れないがこんな映画に出会えるうちは映画ファンを献上する訳には行かないぞ。

 

 

 

史上最長だった映画鑑賞

五味川順平の”人間の条件”、の原作は何時、何処で読んだのか記憶は曖昧だが映画の方は1968年の夏だったかに映画館で一気イッキ見したのを覚えている。最初に国内で公開されたのが1959年頃なのでこれは恐らくリバイバル上映でしかも全6部構成を一挙に上映すると言う試みだった。

 

不定期にだったが一挙上映するのが映画館の売りで”丸の内松竹”(有楽町の松竹ピカデリーの地下)と言う二番館で上映されていた。兎に角、長い、、合計9時間以上になるので朝にパンと牛乳を持って入り途中で昼夜と休憩時に弁当を食べ又、スクリーンに釘付け、上映が全部終わって映画館を出て来るともう9時を過ぎていた。

 

6部構成なので間にトイレ休憩はあったものの暗い館内でじっとひたすらモノクロの画面から目が反らせない、若くなきゃ絶対に出来ない、イヤ、思いもしない映画鑑賞法である。映画はかなり悲惨な物語だが配役は当時の日本映画界を代表する人達のオンパレード、、詳細はもう記憶の彼方だが仲代達矢新珠三千代の二人が最初から最後まで出ずっぱりの主演でモノクロ画面からでもその魅力が感じられたものだ。

 

当時はロードショーはそりゃ一本だが二番館になると二本立て、三本立てってのも珍しくなかった、しかも入れ替えなんてのはないので座ったらそのままずっと館内に腰を落ち着けていても誰からも文句は出なかった。それに今から思い出すとゾッとするが二階席は喫煙可だったんじゃなかろうか?

 

しかも館内の真ん中の辺りの席にはご丁寧にも白いカバーが掛かっていてそれが指定席だった。従ってそのすぐ後ろか隣が一番良い席なので狙い目はその直ぐ後ろだ。確か指定席になると3倍くらいに跳ね上がるので学生には無理、そんな事より一本でも多く見たくて足げに通っていた。

 

一緒に付き合ってくれた彼女はこの夏だけの間柄だったがさあその後、どうしているんだろう?パブリカと言う小型車に乗っていて良くドライブにも行ったのだがその後、オレも軽自動車を買い乗り回し始めたのでそれっきりに、、まさにそんな時期の嗚呼青春だ、、。

 

”ヴォイス・オブ・ラブ” (20年)

この邦題じゃオレには”歌番組か?”、程度の認識しかなくて歌手の伝記映画とまでは思いつかなかった。原題は”Aline”としか表記されてないので”A-ライン”は何処ぞの航空会社って雰囲気だ。

まあ最初の10分も見ればどんな映画か判るだろうと再生ボタンをポチン、、すると背景はカナダでもフランス語を主に話す地区でのお話だった。若い夫婦に毎年のように子供が生まれて行く、そして14人目が生まれたと聞いてありゃこりゃひょっとしてあの歌手の伝記かな、と思い当たった。そして主演のまだ13歳になるかどうかの歌手の名前が”Aline”(エーラインじゃなくてアリーヌ、そりゃあり得ぬ)、、だ。確かにフランス語圏ならアリエールかも知れない。

 

 

そしてやっぱり想像した通りその少女はセリーヌ・ディオンだった。まあそうなると話は早い、若くして親子以上に年の離れた音楽プロデューサーと結婚し、長男そして双子の娘達に恵まれるって事はボクでも知っているぞ。おまけに大ヒットを連発している絶頂期に喉をやられて向こう3ヶ月は声も出せなかったんだ。そしてラスベガスでは連日満員御礼で会場を満席にして世界一の歌姫として君臨している。

しかし一時間半だかの間に12歳くらいからつい最近までの活躍を凝縮しているので彼女の其処までの人生を早送りで見ているようなどうにも落ち着かない気分にさせられてしまった。何と言ってもクライマックスに至るヒット曲は”マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン”で映画”タイタニック”の主題歌だったと思うのだが劇中のセリフでは最初にデモテープを渡され、”ワタシに合わない”と切り捨てるだけ、。そして結果は、オスカーを受賞したと簡単に片づけられてしまい歌唱場面も数小節だけで終わってしまった。

この辺りが歌手の伝記映画は難しい、、じっくり聞かせて欲しいがそうなるとミュージカルだし演じているのがご本人じゃなくてヴァレリー・ルメルシェと言う人で歌唱場面は又、別の人が代役しているらしい。確かに容姿も声もご本人に似てなくもないのだがどの曲もさわりだけで欲求不満気味だった。

どれかヒット曲を限定してそれが誕生するまでのご主人と二人の努力する様子が描写されていても良かったんじゃなかろうか?余りに広範囲に活躍する場を追いかけてしまったので最初に彼女を見出してくれプロモーター兼プロデューサー、後には最愛の夫とし奔走するギイ=クロード(シルヴァン・マルセル)と二人三脚で苦労する様子が中途半端にスルーされてしまったのは残念だった。

 

”警視 ヴァン・デル・ファルク アムステルダムの事件簿” (20年)

毎度お馴染みの”AXNミステリー”チャンネルが配信するイギリスで制作された刑事モノだが舞台はオランダのアムステルダムである。主演の警視どのにはマーク・ウォーレン(”華麗なるペテン師たち”)が扮し彼の相棒のルシエンヌにはメイミーマッコイが配役されている。その他には分析能力が抜群な部下、食いしん坊、検視官そして上司の警視と毎回6人のメンバーがレギュラーで複雑に絡んだ殺人事件の捜査に大活躍する。

シーズン2まであり毎回完結するが夫々に3話あってシーズン1は絶対以前に見ているハズだが今回再鑑賞、最後まで思い出さなかったがどうも最初にシーズン2を見てしまっているのかも知れない。

 

 

 

何れにせよイギリスの刑事ドラマはごまんとあるので刑事さんの名前だけじゃどれだったか思い出せない。余程個性が強い人か個性的な犯罪でもなけりゃ怪奇殺人程度じゃもうオレの頭のなかではごちゃごちゃになっている。

このヴァン・デル・ファルク警視に関しては主演のマーク・ウォーレンがかなり個性的だしアクが強い、それと相棒のルシエンヌがレズ刑事だったりしてやはり個性的なのだ。舞台もアムステルダムの街並みが実に印象的だし運河がとっても良く似合う。

更には各事件がアムステルダムらしく服装業界、フェルメールの絵画、それに環境問題など現実に直面している事柄が描かれていて毎回居ながらにしてオランダ旅行を楽しんでいる雰囲気には好感が持てる。

オレの知っているアムステルダムはもう40年も昔の姿なので例え行った事がある場所でロケされていても全く判らないし知ったホテルが出て来る事もないだろう、、第一地理的にだって西も東も判らない。記憶にあるのはスキポール国際空港と泊っていたホテルへの道のりだけだ、。

参ったなぁ、、写真を検索してて思い出した、過去にも同じ事を書いて投稿しているんじゃなかろうか?此処まで書いたので削除する訳には行かないご了承を、。