主演はモーガン・フリーマンと奥さん役にダイアン・キートンが扮しニューヨークを舞台に”夫婦再生”を描いた良作だ。まあ”夫婦再生”とは言っても互いがそんなに深刻な悩みを抱えている訳じゃなし40年つれ添った夫婦がこれから先どうやってお互い向き合って生きて行くかを再確認すると言うお話だ。うん、そうやって考えると40年を超えた我が家にもピッタリ重なる題材かも知れない、、。
トロントの映画祭で上映された時のタイトルは”Ruth & Alex"、と夫婦の名前が原題だったようだがアメリカでは”5Flights Up”となっていて5階にあるアパートを指し二人が住む部屋がタイトルになっている。それが邦題だともう完全にネタバレ状態でその階上の部屋を売却する騒動がそのままタイトルだ。
画家のアレックス(M・フリーマン)は駆け出しの頃にモデルとして派遣されて来たルース(D・キートン)と恋に落ち周囲の反対にも耳を貸さず結婚してしまった。それから40年が経過し今じゃ黒人&白人の結婚だって珍しくないニューヨークで子供には恵まれなかったが10歳になる愛犬、ドロシーと幸せな熟年生活を送っている。
眺望は良いし便利な地域、二寝室ある一方をアレックスはアトリエとして使っていて申し分のない生活振りだが問題が一つ、それはエレベーターがなく5階まで階段を上がり降りする事だ。
遂にはドロシーも階段を嫌がるようになり二人は友人の不動産屋、リリーに頼んでどのくらいで売却出来るものか試してみる事にする。この辺の描写は実にリアルだ、、最近のとは言っても映画が公開されたのは8年も前になるがその頃でエレベーターなしの二寝室(日本風に言えば2LDK)、しかも築年数は楽に半世紀は超していて広さは140平米は越す物件に88万ドルからの値が付くようだ。
もう殆ど当時の為替でも1億円って事で如何にもニューヨークの住宅事情は大変かが判るのだ。その後、他の同じような物件が出て来るがやはり上限が110万ドル程度、って事は今なら1億6千万とこりゃもう東京の物件は格安に感じる状況だ。
お話は案の定、不動産屋の暴露劇になって行き値段を競り上げより高いオファー(提示額)をした方に売却される仕組みで売り手と買い手の虚々実々の駆け引きになってしまう。そんな駆け引きにウンザリするアレックスだがルースの提案で今度は売却後に自分たちが住む部屋を探す事になりそれまでは売り手として提示される金額を検証する立場が一転、逆に自分たちがオファーを出す立場へ、。
そんな不動産物件を巡る騒動に発展してしまう。その間にはドロシーの急病、入院、手術があったりするのだがストーリー的には山なし、谷なしでそれ程大きな転機はやって来ない。それでもアレックスとルースが近い将来を見据えて頑張る姿は心地良く二人が実に味のある”夫婦40年選手”を演じている、派手さは全くないのだが地にしっかりと根を張ったニューヨーカー振りは見ていても羨ましい。
終盤は多分そうなるんだろうな、、っと思う通りの展開でドロシーも無事退院、シニア夫婦も決心を新たに二人で支え合って生きて行く決心をする訳であります。