”オールド・シネマ・パラダイス”、、時々新作も

長年”映画と愛猫とオーストラリア”だったが札幌へ軟着陸し愛猫も亡くしこの新タイトルで心機一転だ。

”アラバマ物語”(62年)

原題はアメリカの女性作家、ネル・ハーパー・リーが60年に書き上げた”to Kill a Mockingbird”で出版されて直ぐに映画化が決定し主演のアティカス弁護士にグレゴリー・ペックが抜擢された。原作も映画もこれは間違いなく”名作”でいまだにこの原作は小中学生にはサリンジャーの”ライ麦畑でつかまえて”と並び”必ず読んどけ”本として広く知られている。

 

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映画の設定は1932年、アラバマ州は架空の田舎町での出来事。其処で妻を4年前に亡くし男やもめとして10歳のアダムと6歳のスカウト兄妹を育てている弁護士、アティカス(G・ペック)の二夏に渡る物語だ。

この時代(映画が制作された60年代)は良心的なアメリカ映画、それもモノクロで南部の現実を丹念に描いた社会派作品が多かった、。”野のユリ”、”奇跡の人”、後年はこの時代を描いた”グリーンブック”や”ドリーム”等々の秀作も制作されているが何れも心に残る映画として語り継がれている。

グレゴリー・ペック演じる弁護士アティカスは、アメリカの良心を体現したキャラクターとして非常に人気がある。03年に選出された”American Film Institute”の映画史100年のヒーローは?では、アティカスがインディ・ジョーンズジェームズ・ボンドといったスーパーヒーローを抑えヒーロー部門第1位を獲得、再び脚光を浴びた。映画の方は95年に”国立フィルム登録簿”に登録されているが歴代のトップ100では34位にランクイン、07年に更新された投票では25位に順位を上げている。

更には”ベスト法廷ドラマ”では一位にランクされる程この映画の評価は高い。

大まかなストーリーは6歳の少女、スカウトが語る方式だが題材は黒人男がやってもいない犯罪で逮捕されその冤罪を晴らすべくアティカスが奮闘する、、っがしかし事はそんなに単純ではないのだ。一番の争点は12人の陪審員、その中には黒人は一人もおらず全員がこの田舎町の白人男性だ。もうこの時点で無罪を勝ち取る事は不可能に近くアティカスは孤軍奮闘するが最後の審判は全く見ている側も想定していない方向へ、、。

この法廷での弁護士としての役目、セリフ、演技力が実に素晴らしい、翌年のアカデミー賞では見事にグレゴリー・ペックへ主演男優賞が渡った。そのノミネートでは下馬評に”アラビアのロレンス”で圧倒的な存在感を示したピーター・オトゥールが居たのだが、、これはピーターに取っては実に間が悪かった、、イヤ、年が悪かった。