”オールド・シネマ・パラダイス”、、時々新作も

長年”映画と愛猫とオーストラリア”だったが札幌へ軟着陸し愛猫も亡くしこの新タイトルで心機一転だ。

”死刑台のエレべーター” (58年)

久し振りの”Ascenseur pour l'échafaud”だ、、作品に敬意を表して部屋を暗くしボリュームも普段以上に上げこのルイ・マル作品を堪能した。

のっけからマイルス・デイビスのサックスが絶好調だ、それにジャンヌ・モローが実にフランスっぽい(?)、それに絡むのはモーリス・ロネ、、”太陽がいっぱい”より3年前の事だが全く印象が違う。

 

f:id:guch63:20200604181852j:plain

 

脚本から演出に撮影、、全てがピシッと決まった犯罪映画、この時代のフィルム・ノワールはハリウッドや日本でも真似が出来ない程にプロットが素晴らしい。単純なストーリーなのに思いがけない伏せんがあり目が離せない、。

カララと言うパリでも有数な企業を運営している大実業家のカララ氏は連日、世界中を飛び回って忙しい身だが彼には若い妻、フロランス(J・モロー)がいる。その辺りの経緯とか現状の説明は一切ない、それが又、実に見事だ。そのフロランスにはカララ氏の腹心の部下でやり手のジュリアン(M・ロネ)と言う愛人がいる。電話だけのやり取りじゃ互いにいっ時も離れておれない程に愛し合っている様子なんだが、、。

 

f:id:guch63:20200604181905j:plain

 

 

そのジュリアンが拳銃を手に自分の事務室から一階上にある社長室へ忍んで行く、そして自殺にみせ掛け密室にした執務室でカララ氏を殺害してしまう。これで完全犯罪一丁上がり、、と思いきやビルの外へ出て振り返ると、其処には社長室へ忍び込むのに使ったロープが垂れ下がっている。こりゃヤバイと思い乗りかけた車をそのままに慌てて自室へ戻ると、。

エレベーターで上昇している最中にタイミング悪く警備員が自分の勤務時間を終え、ビルの電源を切って帰宅してしまうのだ。無論エレベーターはその時点でストップ、なかに閉じ込められたジュリアンは焦りに焦るのだ、、。そして道路脇では鍵がそのままに放置された彼の愛車が若造と花屋の恋人の店員に乗り逃げされてしまう、無論最初は単なるイタズラ心だったのに、。

そんな展開で普通の”火曜サスペンス”ドラマだったハズがトンでもない方向へ向かってしまうのだ。祝杯を挙げる積もりで街角の酒場で待っているフロランスはたまったもんじゃない、、この場面のジャンヌ・モローが実に巧い、さて殺害は成功したのかそれとも弱気を出してジュリアンは逃げたのか、??おまけに花屋の若い娘がジュリアンの愛車だと思った助手席に座っていた気がする、益々混乱するフロランスだ。

そこからはもう一直線で正攻法の展開に、携帯電話さえあれば恐らく完全犯罪はそのまま完成していただろう、でもクルマを盗んだアホな兄ちゃん(この役はアラン・ドロンでも良かったんじゃなかろうか?横顔が実に似ている)は高速道路でポルシェを相手にあおり運転なんかをするから益々違う方向へ向かってしまうのだ、。

後半、刑事役で出て来るリノ・ベンチュラが恰好良いのだが終盤のクライマックスへ向かって三つ巴の思惑が、さて犯罪は理にかなうのか??でもこの場合は金銭的な事より愛人を自分のものに出来るかどうかって事になる訳だが、。

この時代、モノクロで実に見事な映画をありがとう、、すっかり映画館で見終わったような高揚した気分になれた、こんな秀作はテレビ画面で☆☆☆☆を献上しても文句は出まい