”オールド・シネマ・パラダイス”、、時々新作も

長年”映画と愛猫とオーストラリア”だったが札幌へ軟着陸し愛猫も亡くしこの新タイトルで心機一転だ。

”王になろうとした男”(75年)

韓国映画”王になった男”(13年)とは邦題が似ているが内容は全く違う映画だ、、尤もこの韓国版は見てないのだが、、。75年に公開された”王になろうとした男”(原題は”The Man Who Would Be King”)はラドヤード・キップリングが書いた原作をジョン・ヒューストンが監督、脚本を担当し主演にショーン・コネリーマイケル・ケイン、そしてクリストファー・プラマーを配しメインになる女優さんは一人も出て来ない実に男臭いアフガニスタン国境周辺を舞台にした冒険映画だ。

 

f:id:guch63:20200728163701j:plain

映画は冒頭、新聞記者のキプリング(C・プラマー)の元へ薄汚れた姿のカーネハン(M・ケイン)が訪ねて来る場面から始まる。最初この乞食同然のカーネハンが誰か判らないのだが”3年前に君と三人で契約を交わしたじゃないか”とカーネハンに言われやっとその情景を思い出す。そしてドレイボット(S・コネリー)が死んだ事、その顛末を語る回想スタイルで彼らの冒険談が語られて行く、。

 

f:id:guch63:20200728163721j:plain

何やらこんな出だしの場面はかの名作、”アラビアのロレンス”風だがそこからこの退役軍人二人の物語になって行く。元よりこのドレイポッドは王になる事を夢みており退役を機にカーネハンと二人してアフガニスタンから国境を越えて隣国へ渡るのだがこれが前途多難、幾度となく二人は死を覚悟するが辛うじてカフィリスタン王国なるシカンダーと言う神を崇める国へ到達してしまう。

こんな設定の映画には古いとかCG技術編集とかは余り関係ない、二人の、、主にドレイポッドの野望とその数奇な運命をしっかり描いている。首にかけたフリーメーソンの紋章のお陰で(この辺りの演出は間違いなく原作を書いたキップリングの実生活に影響を受けている)首長や部族全員は矢にあたっても倒れないこのドレイポッドは神の生まれ変わりだと信じ始め、彼らが信仰するシカンダー二世として王に祀り上げられる顛末はまさに冒険劇の真髄だ。

1975年と言えばショーン・コネリーはもう007はやらないと言った後で(”ダイヤモンドは永遠に”が71年)マイケル・ケインは同じスパイ役、ハリー・パーマーを卒業して”探偵スルース”(72年)でローレンス・オリビエと共演したちょっと後の事だった。当時からこの二人はイギリスを代表する俳優だったがそれにクリストファー・プラマーが加わるとなると自ずと映画ファンの興味は尽きなかった、、。

そんなキップリングの原作を見事に映画化し期待を裏切らない素晴らしい冒険映画であった事は間違いない。