”オールド・シネマ・パラダイス”、、時々新作も

長年”映画と愛猫とオーストラリア”だったが札幌へ軟着陸し愛猫も亡くしこの新タイトルで心機一転だ。

”ナイト・マネージャー”(16年)

スパイものの大御所、ジョン・ル・カレが1993年に書き下ろした作品で16年にイギリスのBBCが全6話のシリーズ作品としてドラマ化している。4年前に投稿したのだが今回は全編通しで鑑賞した。
 
最初の舞台はエジプト、そこの高級ホテルでナイトマネージャーを勤めるジョナサン・パイン(トム・ヒドルストン)は元傭兵で今はホテルマン、ある日宿泊客の要望で書類のコピーを取るのだが何とその内容が凄い、、武器弾薬から催涙ガス、高性能ロケット・ランチャーなどの取引記録が並んでいる。これは武器商人のメニューだ、、と気付いたジョナサンはイギリス情報部へチクル、、。

そんな出だし、書類のコピー内容を見るなんてのはナイトマネージャーにあるまじき行為じゃね~のか?と最初思ったのだがそうなるとドラマにならん、、最初彼は兵役に就いて中近東に派遣されていたような、、そして彼にコピーを頼んだ美女は滞在中に怪我をしその治療をしてくれたジョナサンと淡い恋仲になるのだが彼が国外へ逃げるしかない、、と勧めるのにもかかわらずホテルに戻りオヤブンに惨殺されてしまう。

そして月日が経過して4年後、、、今はスイスの高級スキーリゾートでナイトマネージャーを勤めているジョナサン、、。其処へ滞在客としてかの武器商人の元締め、富豪のオヤブン、ローパー(ヒュー・ローリー)一行がやって来る。彼等は実に用心深く使っている携帯電話のシムカードを使い捨てているのだ。ウェカムシャンパンの空き瓶に捨てているところを横目で捉えジョナサンはゴミ缶の回収をするついでにその空き瓶も拝借して来るのだ。

このドラマも派手なアクションがある訳じゃなしドンパチも一切ない、1話ではカーチェイスもないしあくまでも緊迫感を持って脚本で見せる手法に徹している。しかしロケはふんだん、、エジプト、ロンドン、トルコ、スペインにモロッコとそりゃイギリスからだから近いのだがとても日本のドラマみたいに最終回だけニューヨークの大学へ勉強しに行く、、、何てケチな展開じゃないのだ。
 
それからいよいよ核心へ、、最初チクったMI6の担当官とやり取りをした結果、ジョナサンにおとり捜査をやってくれないか、と要請が来る。そのオヤブン、ローバーの信任を得て組織の内部へ入ってくれと言う事だ。
 
考えた結果、ローバーの一人息子をMI6から派遣されて来た強面に襲わせ、身代金目当ての犯罪に巻き込まれたと信じさせる。それを通り掛かったジョナサンが身を挺して息子を助け出し、更に彼の信用を得て組織の内部へ、、と言う作戦だ。
 
 

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この作戦は大成功、、しかし手加減をしなかったジョナサンはMI6の誘拐犯の一人に扮したヤツを殺してしまうのだ。ジョナサンはこうでもしなきゃ認めて貰えなかった、、でも本国の担当部署ではそりゃやり過ぎじゃないのか、と喧々諤々、。でももうやっちまったし折角エサに食いついたローバーに怪しまれる訳には行かない。
 
ところが一人、ジョナサンの素性を怪しむ人物がいるのだ、それはこれまでローバーから絶大なる信頼を受け、何処へ行くのも一緒、全ての計画を立案、実行して来たコーキー(トム・ホランダー)、だ。徐々にローバー、それに息子までもがジョナサンを一の子分と信頼し傾注して行くのが気に食わない。
 
この手のアメリカ版だとドンパチがあって派手なカーチェイスがあってと言う展開とは全く違う、深く静かに潜航して行くのみ、。このコーキーの不信感か増すにつれ三つ巴になって行く三者の思惑が微妙に絡み合ってもう目が離せないのだ。
 
ジョナサンだって助けたローバーの子供がすっかり彼に懐いてしまい可愛くてしょうがない、それに彼を愛してやまないオヤジの悪行を暴露するのも困ったちゃん、、悩んで悩んで悩みぬく、いっそローバーに寝返ってしまおうか、、でも4年まえに愛した女性を殺された恨みを晴らさんで済むモノか。最後までハラハラドキドキで見応え大満足のジョン・ル・カレでした、。
 
こんな事を書いたらファンに刺されるかも知れないがアニメ全盛でこれまでの最高収益をあげるお国柄ではこんな優秀な作品は100年が経過しても絶対に撮れまいぜ、それだけは確信出来る。