この映画は公開時、大変高い評価を受け”最後の本格派西部劇”だとも言われていたのだがずっと見るチャンスがなかった。西部劇と言っても色々な種類がある、伝統的なジョン・フォード版、ヘンリー・ハサウェイやジョン・スタージェスの痛快西部劇、アメリカから遠く離れて撮られたマカロニ・ウェスタンに限りなく現代劇に近い設定、、そんなジャンルがある中でこの”3:10 to Yuma”は痛快西部劇に極悪人を登場させそれに人間ドラマとしての隠し味を加味し上手く凝縮させている。
ストーリー的には割と単純で冒頭、ダン(クリスチャン・ベール)が営む農場が放火に合い納屋が消滅してしまう。そこには農場主のダンと息子のウィリアム、ともっと幼い少年にアリスの4人家族だ。どうやら町の悪党に借金をしているようでその返済時期が来ても払えないので闇討ちにあった、、と語られる。
一転して今度は荒野を走る現金輸送車(駅馬車)がベン・ウェイド(ラッセル・クロウ)と言う西部のお尋ね者軍団に襲われ積み荷の現金が強奪される。たまたま前夜に納屋に放火され逃げ散った牛たちを連れ戻そうとやって来たダンと二人の息子たちに目撃されてしまう。
そんな彼らの出会いまでが冒頭描かれて行くのだが実にテンポ良く勤勉なダン一家と極悪人として仲間の一団を引き連れているベンが対照的に紹介されて行くのだ、、まあベンとダンなので途中こんがらがるケースもあるが、この頃のラッセル・クロウは善人役が多かったのに西部の悪役ってのは珍しい、、むしろクリスチャン・ベールの方が悪人面って気がしないでもない、。
それから色々あるのだが、、終盤になり結局、3時10分発の列車に捕まえたベンを乗せてユマの刑務所へ送り届ける算段となり護衛役としてダンが200ドルの報酬金欲しさに名乗り出る。ところがそのオヤブンが列車に乗せられるのを阻止するべく強盗団の仲間が一家総出で列車が停まる町へやって来る。
そして最後の攻防へと繋がっていくのだがこの列車に乗る予定のベンは素朴で彼なりに信念を持ち一本筋の通った生き方をして来ているダンの心情に理解を示すようになってしまう。
特に追いかけて来たダンの息子、ウィリアムに”ベンは本当の悪人じゃないよね?”等と言われてしまい彼の仲間がすぐ傍にダンを助けるべく来ているのに率直に逃げてしまう事が出来ないのだ。まあ異色とは言えないが演出、脚本ともかなり上質の西部劇に仕上がっているし主演二人のぶつかり合いはなかなかの映画になっていた。劇中、ピーター・フォンダも出ているのだが最後までドレが彼なのか判らなかった、。
この所、西部劇が多くなっているが往年のクラシック西部劇とは違い、制作年度もごく最近となった新しい時代に作られた秀作ではなかろうか?大満足の一本でした。