”オールド・シネマ・パラダイス”、、時々新作も

長年”映画と愛猫とオーストラリア”だったが札幌へ軟着陸し愛猫も亡くしこの新タイトルで心機一転だ。

”汚名”(46年)

やはり新年は秀作からいってみよう、、とばかりBSNHKに頼ったのは”汚名”だ。この映画の原題は”Notorious”、”悪名高い”と言う意味でブラジルに逃げたナチの残党の事を指しているのだが邦題はスパイの”汚名”を着せられた主人公、アリシア嬢(イングリッド・バーグマン)のパパの事である。原題と邦題が全く逆の立場の人間を指しているってのも不思議な事ではあるのだが、、。

映画はヒッチコック監督がアメリカ時代に撮ったもので主演はケイリー・グラントイングリッド・バーグマン、、それにかなり重要な役柄でクロード・レインズが配役されている。このイギリス人俳優はかの”カサブランカ”で警察署長を演じていた俳優さんなのでこの”汚名”ではイングリッド・バーグマンと再共演を果たしている。

映画ではCIAともFBIとも表示されないがアメリカの”秘密情報部員”として出て来るのがケイリー・グラント、彼が連絡員としてアリーシアに父親の汚名を晴らすべくリオ・デ・ジャネイロに飛びナチ残党の企みを暴く為に組織に潜入捜査をさせると言うもので秘密情報部員の恋物語となっている。

 

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途中まで見ていて気が付いたのだがかの007の作者、イアン・フレミングは自作が映画化される事になった時にジェームス・ボンド役にはこのケイリー・グラントを熱望したらしい。恐らくこの映画、46年なので1904年生まれの彼にはピッタリだったのではなかろうか、、原作の中では初登場時には38歳と表記されていたが、。

イアン・フレミングは1908年生まれなので初めてジェームス・ボンドを主人公にして執筆した頃は(1953年)彼なりのイメージはケイリー・ボンドを頭に描いていたとしても違和感はない。

映画はモノクロだがデブリン(C・グラント)に扮した彼は何処となく秘密っぽく正体不明な役柄が良く似合う。ヒッチコックの各作品でもそうだったしスタンリー・ドーネンの”シャレード”でもナニか素性が判らない英国紳士振りは健在だった。

この時代の映画のご多分に漏れずミステリーと言っても拳銃をぶっ放す場面がある訳じゃないしカーチェイスだってありゃしない、そうだ殴り合いだってありゃしない。それでも最後まで緊迫感があってドキドキ度は満点だ。”カサブランカ”はこの映画より4年くらい前の作品だったが彼女の美貌は健在でした。

1946年に制作された映画と言う事は日本が無条件降伏を宣言した翌年だ、。その時にはこうしてナチの残党を追っかけてヒッチコック監督はブラジルへ飛んでいたって事になる。じゃあ”カサブランカ”(42年)はモロ戦中で、”地上より永遠に”(53年)は映画が制作される僅か8年前には実際に真珠湾攻撃が実施されていた、、その背景を撮られていたって事になる、。

TVの画面だろうがスピーカーは内蔵されたごく普通のものでも良い映画はどうやって見ても良いと言うお手本みたいな変則スパイ劇でした。