”オールド・シネマ・パラダイス”、、時々新作も

長年”映画と愛猫とオーストラリア”だったが札幌へ軟着陸し愛猫も亡くしこの新タイトルで心機一転だ。

”暗くなるまで待って”(67年)

日本国内で公開されたのが1968年と米国公開から半年も後の事だった。ヒッチコック監督の”鳥”は1963年の映画で東京は丸の内にあった旧ピカデリーで公開されているが此方はその5年後に同じ松竹ピカデリーで公開された。

 

 

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wait until dark

オードリー・ヘップバーンがまさにアラサーど真ん中の頃だった。時系列でみると”ティファニーで朝食を”(61年)、”シャレード”(63年)、”マイ・フェア・レディ”64年)の後で初めて盲目の人妻を演じている。ジャンルとしてはミステリーだが完全に舞台劇と言う雰囲気で”裏窓”と同じでカメラは殆ど外へ出ない。舞台はニューヨークのアパート内、それも地上階から下がった”半地下”である。

プロデューサーは夫のメル・ファーラーで彼がワーナーブラザース社と交渉し監督にテレンス・ヤングを抜擢している。興行的にはそれ程ヒットした訳じゃないようだがオードリーはアカデミー賞の主演女優を始め色々な賞でノミネートされ高い評価を受ける事になった。

映画の背景は麻薬の密輸に関するもので冒頭、ある女性がカナダから空路ニューヨークへやって来る。大切に身に着けているのはオルゴール仕掛けのある人形だ。しかしその内部には小袋に分けた麻薬が忍ばせてある。そして空港へ降りたった女性は怪しい雰囲気のハリー(A・ラーキン)に出迎えられるが直前に同じ乗客だった紳士、サム(エフレム・ジンバリストJr)に人形を押し付けて去ってしまう。

場面は一転してあるアパートの室内、其処へやって来るのがマイクとカルリーノの二人組、そして遅れてやって来るのがハリーでどうやら三人はこれが初対面らしい。ハリーはこの二人は刑務所仲間でどうやら仕事を斡旋しようとしている。それは人形を探す事だが見ている方はこの時点で先のサムが持って行った筈の人形の所在が判らない。

その人形を押し付けられたサムはプロの写真家でスージー(O・ヘップバーン)の夫でもある。止む無く人形を抱えてアパートへ帰って来るのだがトンボ返りで又、出掛けなくてはならない。そして登場するのが上階に住み、普段目の不自由なスージーを助けてくれるグロリアだ。サムが出掛ける間際にやって来て買い物やら家庭内で必要な事を手伝うと申し出てくれるのだがサムがテーブルに放り出してあった人形が気に入ってしまいスージーには内緒で自室へ持ち帰ってしまう。

そんな展開で今度はいよいよ悪党ども三人組がやって来る。首謀者はハリー(アラン・アーキン)、マイク(リチャード・クレナ)、そして元警官のカルリーノ(ジャック・ウェストン)たちでこの辺りから脚本の良さが光り出す。スージーの目が不自由な事からあの手この手を使い人形が何処に隠されているのか探るのだがそれはスージーにも判らないのだ、、。

一時、マイクはサムの友人と言う触れ込みでスージーの元へ現れるのだが人形の所在は判らない、、次に警官としてやって来るカルリーノ、そして色々な役を演じる為に変装してやって来るハリーも聞き出す事が出来ない。

この彼ら三人を相手にするスージーの対決が実に見応えがある。途中でグロリアがスージーには内緒で持ち帰った人形を見付けそれを手探りで隠し、三悪人と対峙する事になるのだがスージーにはまだこの人形に麻薬が隠されている事が判らない。一人マイクとは親密になりかけるのだが、、。そしてクライマックスの”真っ暗闇での対決”となって行く。

テレンス・ヤング監督は007シリーズで人気を博した監督だ、それにアクションものが多いのだがサスペンスを盛り上げる方法はバツグンに巧い、ただこの密室ミステリーをヒッチコックが監督をしていたらどうなっていたんだろうか??と思うと寝られなかった、。