”オールド・シネマ・パラダイス”、、時々新作も

長年”映画と愛猫とオーストラリア”だったが札幌へ軟着陸し愛猫も亡くしこの新タイトルで心機一転だ。

”幸せなひとりぼっち”(15年)

いきなりですがこの映画は☆☆☆☆でした。タイトルだけを見れば絶対自分じゃチャンネルを合わせる事もないし録画もしてないだろう、、それが何故か録画されていて(その後、家内の仕業と判明、先に原作を読んでいたそうな)夕食前のひと時、何気なく見始めそのまま夕食はそっちのけで最後まで引き込まれるようにして見てしまった。

珍しいスウェーデン映画で原題は”En man som heter Ove”そのまま訳すと”オーヴェと呼ばれた男”になるんだが邦題は”幸せなひとりぼっち”である。う~ん、この邦題は全然予備知識がなければそのままスルーだが見終わってみると感慨深くて実に味のある原題を越えた邦題だった。

ウィキには、、;

最愛の妻ソーニャを亡くしたばかりの59歳の男オーヴェは、口うるさい偏屈な老人として近所から煙たがられている存在である。(この辺りは実に実社会のオレに似ている、映像からはとても還暦前の爺さんには見えない)ある日、43年勤め続けた鉄道会社をクビになったオーヴェは、生きる希望を失い、首をつって死のうとするが、向かいに越してきたイラン人女性パルヴァネとその家族の騒々しさに自殺を邪魔をされてしまう。(更には集合住宅で管理人みたいな事をやっていてこれが又、実に実生活でやっていたオレに酷似している、住人でワンコを連れて散歩する女性、自分でトレーラーを運転して越して来るヤツ、引きこもり状態の住人などや騒々しいヤツ等が100%被る)。

以降も、陽気な彼女の遠慮のない言動に何度も自殺を邪魔されたオーヴェは彼女の存在を疎ましく思うが、彼女とその家族と接するうちに徐々に心境に変化が生まれてくる。(その中で大嫌いだった野良猫の面倒も見るようになるし、、)その一方で、オーヴェは幼い日の亡き父との慎ましくも穏やかだった生活や若き日のソーニャとの運命的な出会い、彼女との幸せな日々、そして2人に起きた悲劇を思い出す。

何度となく自殺を試みるのだが、、首つり3回、線路への飛び込み一回、そしてマイカーを密封しての排気ガス中毒一回に猟銃を使ったもの、とその全てが尽く失敗、だが映画の構成上その意識を失いかける寸前に過去の思い出が蘇るのだ、。

そして毎週土曜日の午後一時、愛妻と通ったカフェでバルヴァネを前にして愛妻を亡くした経緯が語られやっとオーヴェの一徹さ、それに何故そうなってしまったのかが観客に判る仕組みである。見始めて最初はどうにも胡散臭いおっさんでこのクレーマー振りは誰からも敬遠されるわな、、と斜めに構えて見ていた。それに勤続43年で劇中59歳にしてはチョイと老け過ぎじゃないのかな??何回も自殺未遂するってのも実際にはコメディ仕立てかぁっと思えるのだがそれが徐々に共感、、とまではいかないものの巧みに過去を振り返る有効な構成手段として理解出来るようになって来た。

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流石に全編スウェーデン語なので字幕頼りだがこんな場合は全然セリフが判らない分、字幕に集中出来る。英語だとどうしてもセリフと字幕を比較してしまうもんで知らずにあら捜しになっているような。

大金を投入して全世界レベルで配給せずともこんな秀作があるじゃん、、それが率直な意見である。こんな映画は広い世界に沢山あるんだと思う、もっともっともっと多く配信してくれよ、内容は構成、脚本、背景に流れるBGMまで正真正銘の☆☆☆☆だった、こんな”山椒”みたいにピリリとする小品だが秀作に出くわすから映画ファンはまだやめられないのだ。