”オールド・シネマ・パラダイス”、、時々新作も

長年”映画と愛猫とオーストラリア”だったが札幌へ軟着陸し愛猫も亡くしこの新タイトルで心機一転だ。

”アパートの鍵貸します”(60年)

これもビリー・ワイルダー監督による秀作(もう名作と断言しても良い)、ジャック・レモンシャーリー・マクレーンが共演している。総体的にはロマンチック・コメディと言う事になるんだが決してコメディが勝っている訳じゃない。むしろ真面目なサラリーマンの出世欲を捉えた人間味溢れる映画で公開された翌年にはアカデミー賞で作品賞、監督賞など5部門を受賞している。

 

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時代背景は1959年のニューヨーク、大手の保険会社に勤務するバクスター(J・レモン)は勤続4年目、総勢32000人もいる社員の中で勤務態度も良くそれなりの成績を収めている。勤務先にも近い場所にアパートを持っているがそのアパートを重役連中に貸し出す事を思いつく。無論出世欲に駆られたのがその理由だが遠い郊外から通って来る4~5人の重役連中の為に浮気の場所を提供しているのだ。

アパートには常に利用を待つ重役連がいて貸し出されている間は自宅へなかなか帰れない有様だが上司の覚えはすこぶるよろしい、。そんな生活を送っているがある日、人事担当重役のシェルドレイク(フレッド・マクマレー)に呼ばれそのアパートを貸して欲しいのだがと頼まれる。どうやら他の重役から聞き及んだシェルドレイクは交際を始めた若いフラン(S・マクレーン)を引っ張り込む魂胆らしい、。

 

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そのフランはエレベーター・ガールとして毎日ビル内を上下しているがどうやら妻子持ちのシェルドレイクの目に留まってしまったようだ。バクスターに取ってはこりゃ最大のチャンス、何せ人事担当役員なんだからこの際もう他の重役連中にはつれないがシェルドレイクの予定を最優先する事で自身の立場を昇進に繋げる算段をつける。

っとまあこんな展開でほどなくバクスターは出世階段を順調に登って行く事になる。ところが一転、初心なフランはシェルドレイクには離婚する気もないし単に遊ばれているだけじゃないか、、と気が付くのだ。

そこから意外な方向へお話がどんどん進んで行く、。フランがバクスターのアパートで自殺未遂を起こしてしまうのだ。大慌てのシェルドレイクはその後始末をバクスターに任せて自分はさっさと自宅へ帰ってしまう、。

そんな修羅場に遭遇したバクスターは必死にフランを看病しそんな結婚する気もないシェルドレイクとは縁を切るように諭す、同時に二人には淡い恋心が、それまで人事担当重役のお手つきとあって自分からは一切話しかけた事もないフランだがこの結果、二人は急接近して行く。

さあ困ったバクスター、、この会社に居る間はシェルドレイクには逆らえないし折角掴んだ昇進を放り出したくもない、仕事か恋かに迷う日々に悶々としてしまう。

そんなニューヨークのサラリーマン残酷物語って訳だがシャーリー・マクレーンはこの時、26歳で”八十日間世界一周”から4年後である、。この映画で名コンビぶりを発揮したジャック・レモンとは”あなただけ今晩は”(63年)で再度共演している。そしてゴールデン・グローブでは見事にこの”アパートメント”に続き主演女優賞に輝いた。

そりゃ今の基準から行けば制作費に大金を投じている訳でもないしCG処理なんてものは一切無い、ただビル内の広いオフィスやら街角などで動員されたエキストラは半端な数字じゃないぞ、。モノクロ画面に丁寧に描かれたまさにサラリーマン物語だが何回見てもホロリとさせる名作だ。