”オールド・シネマ・パラダイス”、、時々新作も

長年”映画と愛猫とオーストラリア”だったが札幌へ軟着陸し愛猫も亡くしこの新タイトルで心機一転だ。

”地上最大の脱出作戦”(66年)

この映画の原題はナンと”What Did You Do In The War, Daddy ?”と言って”父ちゃん、戦争で何して来たの?”って事なんだがそれにこんな邦題が、、。コイツは間違いなく1962年に公開された戦争巨編、”史上最大の作戦”の向こう側を狙った邦題だ。

監督はブレーク・エドワード、音楽がヘンリー・マンシーニとくりゃ”ピンクの豹”みたいな映画を想像してしまう。しかし乍ら劇中、銃撃されて殺される死者は一切出て来ない戦争映画でエドワード監督のウィットが散りばめられているのだ。

出だしはイタリア戦線の真っ最中、C部隊が戦闘を終えて駐屯地へ戻って来るがその連帯を再度イタリアの激戦地である田舎の村に行かせるところから始まる。連隊長は部下の伍長である”荒野の七人”でナイフ投げの名手を演じたジェームス・コバーンだ。

連隊はその命令されたパレルモへ向かうのだが村を占領していたイタリア軍と激しい戦闘になると思いきや敵はあっけなく戦闘停戦を求めて来る。条件としてその晩に開かれる予定の村の祭りを無事開催させて欲しい、、と言うのだ。

 

f:id:guch63:20210218172853j:plain

そこまではコメディっぽい箇所は無く、こりゃナニか魂胆でもあるんじゃないか?と見ながら想像を逞しくしてしまう。でも待てよ、タイトルが”地上最大の脱出、、”とあるからそんな一筋縄ではいかないよな、、。

案の定、其処からは大騒ぎ、と言うのも戦闘場面ではなくて飲めや歌えやの村を挙げてのどんちゃん騒ぎになって行く。ブレーク・エドワード監督がこの作品の前年に撮った”グレートレース”を戦場でそっくり再現してくれる。勿論大騒ぎをしているのは軍服姿の兵士たちだが村人、イタリア軍それにアメリカ軍が入り乱れての乱痴気騒ぎだ。

まあそこからは終始大笑いではないものの戦闘の緊張感は一切ナシに双方が入り乱れる、、ひょんな顛末から双方が軍服を取り換えちまうのでもうどっちがアメリカ兵でイタリア兵はどうなったのか訳が判らなくなるのだ。

そして事態が大きく変わるのは戦闘状況を確認しに飛んで来たアメリカ軍の偵察機、双方が入り乱れてつかみ合いの場面を見てこりゃ銃器も使わず肉弾戦になっていると勘違いして司令部へ報告してしまう。後方の司令部じゃそれを見て空からの援護射撃は無理と判断し歩兵援軍部隊を送ろうとする。

ところが今度はそれを上空から偵察したドイツ軍は二国が戦っている間に村に侵攻して漁夫の利を得ようとばかり戦車隊を含む総攻撃を立案するのだ。そんな戦争映画で最後まで何処の軍隊にも死者が出ない実に稀な戦争映画に仕上がっている。流石エドワード監督、巧みに風刺を利かせ無意味な戦争そして殺し合いをする理由などありゃしない、と訴えて来るのだ。イヤ~、、見事に監督の術中にハマった異色戦争映画でした。

邦題は”父ちゃん、戦争で何して来たの?”の方が断然良いと思うのだが、、