”オールド・シネマ・パラダイス”、、時々新作も

長年”映画と愛猫とオーストラリア”だったが札幌へ軟着陸し愛猫も亡くしこの新タイトルで心機一転だ。

”スカーフェイス”(83年)

これはこの手の犯罪映画としての評価は”異様”と思える程に高い。原題は”Scarface"で主演はアル・パチーノそして監督がブライアン・デ・パルマとくれば当然なんだろうか?実は通して見たのはこれが初めて、長いと言うのと(170分)、セリフがもの凄い事になっていると言うだけでこれまで避けていた節がある。それとこの映画以前に映画史上ナンバーワンとも呼ばれる”ゴッドファーザー”の後で同じアル・パチーノが渾身の演技でドン・コルレオーネを演じていた事もその理由になっている。

イタリアンマフィアとは違ってこっちのトニー・モンタナ(A・パチーノ)はキューバから逃れて来た無鉄砲なチンピラだ。それがマイアミに辿り着き持ち前の度胸の良さと無鉄砲さ、傍若無人な振る舞いによって麻薬界の頂点へ上り詰める映画で生っ粋のマフィア道である家族第一主義とはかなり違うのだ。

それにしてもセリフはかなりヒドイ、、字幕じゃ”バカ野郎”とか”ざっけんなよ~”になっているが何せ普通の会話はほぼゼロ、全ての会話に卑猥な単語や罵倒する単語が満載でとても聞くに堪えない。劇中大ボスの情婦だったエルビラ(ミシェル・ファイファー)を自分のモノにするのだがそのエルビラに”アンタって人は卑猥な表現でしか会話が出来ないの?”とやり込められるのだが全くその通り。

デ・パルマ監督、映画の冒頭に”この映画をハワード・ホークスに捧げる”と出るがハワード・ホークスは西部劇の第一人者、時代も違うがこんな卑猥でスラングばかりのセリフは使った事がない。なのでこの映画を捧げられても墓場の下で困っているんじゃなかろうか?

確かに実社会ではこの業界に限定せずともワカモノ文化としてこんな単語が日常的に使われているのは間違いないし現実感を出す手段としては最適な事だとは思う。しかしこれは教養の無さを露見するばかりで(最もそれを表現したかった訳だが)これは絶対にハッピーエンディングにはなるまいな、、と斜めに構えて見てしまう。麻薬王の物語でハッピーな終わり方ってのはある訳ないが、、。

 

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チンピラだったトニーがあの手この手を使って業界トップに躍り出る演出は見事なものだ、しかし彼には才覚がないし頭を使った頭脳戦って訳でもない。それに信用出来る弟分も居たのに怒りに任せて自分で手を下してしまうし生業は裏切りを常としている。そんな哀れなトニーを描いた監督は実に素晴らしい、、でもちょっと長かった。

しかし劇中、麻薬団のやり取りやしこたま貯め込んだ現金が最初の大ボスの資産が外貨預金だけで12億円を超していた、、それにプラスこのトニーは何せ麻薬王に上り詰めた訳だからその資産総額たるや天文学的なモノじゃなかろうか?そしてギャング団一味が全員抹殺されてしまった訳だから残った資産や現金は全部アメリカ合衆国の公庫へ国費として納められる訳だ、政府も適当に取り締まるだけで敵同士の対決、その結果これじゃ笑いが止まらないだろう(笑)。その現金を強奪するって映画もあったような?