”オールド・シネマ・パラダイス”、、時々新作も

長年”映画と愛猫とオーストラリア”だったが札幌へ軟着陸し愛猫も亡くしこの新タイトルで心機一転だ。

”リオ・グランデの砦”(50年)

これは名匠ジョン・フォード監督、ジョン・ウェインモーリン・オハラの方程式で作られた多くの西部劇の中でも地味な作品かも知れない。ジョン・フォードが描くところの”強い西部魂”、”家族との絆”方程式は全くズレていないしジョン・ウェインはこの作品の二年前に公開された”アパッチ砦”と同じ役名でカービー・ヨークに扮している。即ちこれは続編になっているのだ。

 

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ジョン・ウェインは40歳を回った頃の作品で背景は1879年のリオ・グランデにある北軍のコマンド・ポスト(前線司令官常駐砦)で日夜アパッチ族との戦闘が続く場所だ。同じジョン・ウェインが監督、主演も演じた”アラモ”の砦での玉砕は1836年だったので劇中何度なくアラモとかデビー・クロケットの名前は出て来るがもう40年から昔の出来事になる。

軍律に厳しい砦のヨーク司令官、優秀な軍人で15年前に奥さん、長男の元を去りずっと戦線に赴任し続け家庭は顧みなかった。そんな部隊にある日、新米兵士たちが士官予備軍として送り込まれて来る。厳しい訓練を経て軍人として国に忠誠を誓う事になるのだがその新兵の中にジェフ・ヨークと言う兵士がいる。彼こそ15年前に妻のキャサリーン(モーリン・オハラ)に託して来た自分の息子だった。

 

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そんな背景からこの優秀だが家庭を顧みる事無く軍人としてやって来たカービーの苦悩が読み取れる。しかし何故自分の居る危険な部隊へ配属されて来たのか、この辺りのジョン・ウェインが実に巧い、感情に表さずうちに秘めた苦悩と後悔を演じ、更に危険な任務には就かせたくない、、とオヤジ丸出しの心配顔だ。

そして更に難問が、その荒野にテント張りして駐留している息子の所へ母親のキャサリーンが何とか息子を除隊させ連れて帰りたいとやって来るのだ。司令官であるカービーの承諾の署名がないと除隊さえままならぬ状況に両親と息子は苦悩する事になる。

ジェフはやっと自分で決めた道を歩き始めた訳だし、カービーは逞しく育った息子が頼もしくそれが嬉しい、でもキャサリーンは夫に次いで今度は息子まで自分から去っていくとなるととても容認する事は出来ないのだ。もうこの展開はジョン・フォード監督のお家芸だ。途中幾つかの逸話が入るがいよいよ終盤、アパッチ族がメキシコ国境を越えて出先の駐屯部隊に攻撃を仕掛けて来た。

これまでメキシコとの協定によりリオグランデ河を越えてメキシコ側へは入らないと言う取り決めがあるが駐屯地が襲われ女子供が襲われ大勢が拉致されてしまった現状を見過ごす訳にはいかない。其処で上層部から承諾を得て一個師団で討伐に向かう決定がなされる。さて拉致されてしまった女子供を無事救出出来るのかカービーとジェフ、それに一個師団の騎兵隊はリオグランデ河を越えて救出に向かうのであります。

時代的にはこの頃はインディアンとの交戦が一方的に描かれていて毎回、インディアン=悪者に終始しているがもうちょっと後の年代になると今度はインディアンを居留地へ追いやるって作風になる。対立をやめて平和に共存出来る関係を構築する双方の努力を描いた作品もあるのだがジョン・フォード監督はこの時点では”硬派”だったしそれもかなり筋金入りの、、。

長年この映画は見ていたとばかり思っていたがテレビ画面が初めての鑑賞だった。モノクロ画面でスタンダードサイズ、名作”駅馬車”を彷彿とさせる場面があちこちに登場するがやはりオールド・シネマは素晴らしかった、、。