”オールド・シネマ・パラダイス”、、時々新作も

長年”映画と愛猫とオーストラリア”だったが札幌へ軟着陸し愛猫も亡くしこの新タイトルで心機一転だ。

”アパッチ砦”(48年)

この映画は1948年に制作されているが恐らく日本へ入って来て公開されたのは50年代に入ってからではなかろうか?今のようにワールドプレミアなんて事はあり得ないし輸入の煩雑な手続きや字幕編集にだってかなり時間を要した気がする。それにしても73年も前に公開された映画でジョン・フォード監督とジョン・ウェインのゴールデンコンビになる本格西部劇だ。

 

f:id:guch63:20211012153231j:plain

 

原題は”Fort Apache"で実はジョン・ウェインと同列の、、いや彼以上に主演級の扱いでヘンリー・フォンダが配役されている。時代設定は南北戦争の直後でアリゾナ州内にあるアパッチ族の動向を探り監視する為に作られた砦である。その砦へ指揮官として赴任してくるのがサーズデイ中佐(H・フォンダ)で娘のフィラデルフィアシャーリー・テンプル)を帯同して来る。

このサーズデイ中佐は軍人の手本みたいな職業人で厳格で規律に厳しく古参でこの砦では一番に信頼されているヨーク大尉(J・ウェイン)とは水と油ほどの違いがある。その全く性格の違う二人を軸に駐屯する兵士、娘のフィラデルフィア、、そして軍人一家で育ったオローク中尉といまだに軍曹止まりの階級に甘んじている彼の父親(ワード・ボンド)がメインのキャラクターとして人間模様を繰り広げる。

ジョン・フォード監督の手法はそんな個性的な人物を背景にアパッチ族との交戦、更には彼らに武器や食料などの物資を提供している悪徳商人を登場させ徐々にサーズデイ中佐とヨーク大尉が後戻り出来ない程に互いが対立する様子を描いている。

舞台を洋上に置き換えマーロン・ブランド副官とトレバー・ハワード艦長が海の上で対立し副官がクーデターを企てたのは”戦艦バウンティ”だったが陸の砦でやるとこれと同じ事が起きるのだ。

そうは言ってもサーズデイ中佐が赴任して来るまでは軍律は乱れ各自が好き勝手な事をしていたのでその点はヨーク大尉も反省するしかない、、そして決定的な二人の主義主張の違いが終盤やって来る。

それまで問題も起こさず居留地に留まっていたアパッチ族の中から一部の過激派が反乱を起こし自分たちの長老をないがしろにして居留地外にある通信網だった電柱や砦から斥候隊として出て来た小隊を攻撃してしまったのだ。

そして対立は激しさを増しそれを沈静化する為に穏健派のヨーク大尉は丸腰でアパッチの長老と直談判する為に出向き結果的には長老たちはヨーク大尉を信用しこれ以上の戦闘は避け、居留地へ戻ると宣言するのだが強硬派のサーズデイ中尉は”アパッチ族の申し出は信用出来ない”と突っぱね、彼に賛同する一個師団を編成し敵陣へ向かって行ってしまうのだ、、。この辺りは史実に基づく逸話で”リトルビッグホーンの戦い”として知られるいるようだ、。

背景はインディアンと騎兵隊の対立を描いているが中心になる二人の職業軍人、そして彼らを取り巻く砦に暮らす家族たちとその危険合わせの日常を描いた秀作である事に間違いない。