”オールド・シネマ・パラダイス”、、時々新作も

長年”映画と愛猫とオーストラリア”だったが札幌へ軟着陸し愛猫も亡くしこの新タイトルで心機一転だ。

T・E・ロレンスの真実

先日見たNHKBSで配信されたドキュメンタリー番組、”新・映像の世紀”別に毎回楽しみにしている訳じゃないのだが第一次大戦勃発に至る経緯を当時、国外で流されたニュースを使って検証していた。

そのニュースに紛れもないあの”アラビアのロレンス”の主人公、本物のT・E・ローレンス(トーマス・エドワード)が映っていた。場面はフェイサル1世とパリ講和会議に出席するところらしいので1919年1月18日、彼がアラビアで功績をあげた後の事で当時31歳である。

映画で彼を演じたピーター・オトゥールに比べ大分小柄だがにこやかに談笑しながら民族衣装をまといファイサル1世に寄り添っていた。映画にもその場面がありフェイサル国王をアレック・ギネスが演じていたものだ。

 

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実物のロレンスは1888年、ウェールズ生まれだがオクスフォード大学を経由して1914年の戦争勃発と共に軍に招集されている。その後、カイロの陸軍情報部勤務となり現地へ赴任、軍用地図作成に携わっている。26~27歳で大尉に昇進し語学力を生かしてオスマン帝国に対するアラブの反乱軍を率いたまさにこれぞ”スパイ”の原形とも言える活躍振りを見せるのだ。

無論映画は伝記として描かれているしスパイ映画とは何処にも書かれていないが単身アラブに飛び、地図作成を主任務として各部族と根回ししその後、列車爆破や強奪でトルコ軍に対峙して行くのは完全にスパイだよな、、。

そして色々な部族に分かれたアラブ軍をまとめて一気にダマスカスに侵攻しイギリス軍のヒーロー、、いやアラブ諸国をまとめてオスマントルコに抵抗しているのが映画でも描かれていてこれが一番の山場となっている。

 

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彼の大活躍で少佐に昇進しているのだが良く考えるとこれはトルコに対するテロ行為とも取れるのだ。即ち主義主張があって敵に被害を与える、其処には現在まかり通っているテロ行為と違いはないのでないだろうか?

映画ではその後、ロレンスは自分がして来た事はアラブ諸国に対する裏切り行為だったのではないかと疑念を持ちイギリスの国営の為にアラブをまとめてオスマントルコに対立させたと苦悩するロレンスが描かれている。

そして映画は時系列とは逆に冒頭のオートバイ事故に始まるのだがロレンスは1935年に除隊するまで空軍に属したりしながら国内で各地へ転属していたようだ、、それが1935年5月13日、僅か46歳にして事故死してしまう。

短く太く生きた人生、そしてその彼の数年の生き様を扱った映画なんだが実に素晴らしい映画だった。名匠デイビット・リーン監督の集大成であの砂漠を舞台にした見事な撮影や音楽、脚本、配役陣とこれ以上の作品に出合うのは難しい。さっきYahooではこの映画の評価が☆☆☆☆と出ていてもう一個☆が薄くなっているんだが最後の☆を付けられる映画があるなら逆にどんな映画なんだか問いてみたい、。