これは珍しい、タイムトラベルものとしては妙な具合でホームドラマになっている。監督が”ラブ・アクチュアリー”のリチャード・カーティスと来れば見ない訳にはいかないし、それにパパの役でビル・ナイも出ているし主演のカップルにはレイチェル・マクアダムスとドーナル・グリーソンが配役されている。
ティム(D・グリーソン)はイギリスの海辺の街に住む若い青年である。父(B・ナイ)、母(リンゼイ・ダンカン)それに何時も上の空の叔父デズモンド(リチャード・コーデリー)、自由奔放な妹キャサリン(リディア・ウィルソン)と暮らしている。
21才の誕生日に父から一族の男には”時空を戻れる”能力があると告げられる。ただし自分の過去にしか行くことはできない。金儲けではなく理想の人生を送るために能力を使えと忠告され、恋愛のために使おうとティムは決心する。
そんな出だしの映画だ。一家が住むのは実に風光明媚な場所で食事は何時も海岸へ出て皆が揃って食べる、本当にそうしたくなるような場所でイギリスの何時も雨模様で天気が悪いとか寒さは一切関係ないようだ。この辺りは流石にリチャード・カーティス監督の独壇場、さりげなく全員を紹介ししかもこのレイク家の男子にだけ備わっているタイムトラベル能力をさらっと説明するのだ。
その夏、妹のキャサリンの友達、シャーロット(マーゴット・ロビー)が夏休みを過ごしに2ヶ月滞在する。ティムはすぐに恋に落ち、シャーロットが帰る最後の晩に告白するが、ナンで最後の日に、、と言われてしまう。もっと早く告白してくれていたら付き合ったかもしれないと言われティムは時間をさかのぼり、夏休みの途中でシャーロットに告白する。
夏が過ぎ、ティムはロンドンに出て弁護士として働き始める。父の知り合いで人間嫌いの脚本家ハリー(トム・ホランダー)の家に居候をしながら家と職場を往復する代わり映えのない生活を送っていた。ある夜、友人のジェイと暗闇を売り物にするレストランに行き、出版社で働くアメリカ人女性のメアリー(R・マクアダムス)に出会う。互いの姿が見えない中で二人は会話が弾み、店外で改めて姿を見て一目惚れしたティムは、メアリーの電話番号を教えてもらう。
そんな展開が続きティムは過去へ行ったり来たり、、と失敗を取り戻したりダメになった出来事を再度やり直し成功させたりと大忙しだ。時間を戻るには暗い部屋に入り両手に拳を握りぎゅっと目を瞑るだけなので割と簡単に数分前から数時間と何処へでも戻れるってのは面白い設定だ。
ティムは晴れてメアリーと結婚し子供も出来、仕事も順調だ。そんな時にパパがガンで余命いくばくもない事が判明する。ティムは一日の終わりにもう一度過去へ戻りその一日を繰り返す事で父親との絆を深め出来るだけ多くの時間を過ごすようになるのだがタイムマシンをもってしてもパパの病は止められない。
このタイムマシンと言うのは監督の手法で実はそんなモノに頼って過去へ戻るより毎日毎日を貴重な日々として家族を大事に後悔をしないような生き様をするんだよ、、と言うメッセージが込められている。なるほど、そうやって襟を正すと我々人間は実に無駄な日々を過ごしているんじゃなかろうか?と見終わった後に後ろめたい気分になっちまった。でも監督が言わんとする事はズシリと来ましたぜ、、。