”オールド・シネマ・パラダイス”、、時々新作も

長年”映画と愛猫とオーストラリア”だったが札幌へ軟着陸し愛猫も亡くしこの新タイトルで心機一転だ。

”約束の宇宙(そら)”(19年)

録画してあった映画、タイトルからはどうもSFかな、、と思っていたが全然違っていた。主演は007の”カジノ・ロワイヤル”で艶っぽい魅力を振りまいたエヴァ・グリーンで見えそうで見えないボンド・ガール振りだったが此方ではそのモヤモヤ感が吹っ飛ぶ有様、、あの細身の身体からは想像出来ない豊満ぶりだった。

原題は”Proxima”(次へ、、)と言ってフランス、ドイツの合作映画、宇宙飛行士を目指すシングルマザー、サラ(E・グリーン)の葛藤と子育てに孤軍奮闘する物語だった。同僚のアメリカからやって来ている宇宙飛行士がマイク(マット・ディロン)でサラの娘役、ステラ(ゼリー・ブーラン・レメル)が重要な役どころで最後までダレる事無く一気に見せる。

 

 

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勿論、地上での訓練やプールを使っての無重力操作がメインで一切宇宙での描写はないしアクションらしきものもない、どちらかと言えば母娘の交流を描いたヒューマンドラマでしかもアメリカが舞台じゃなくてフランス、ドイツそしてロシアと言うのがこれまでの映画とは全く異なる設定だった。

フランス人で離婚歴のあるサラが宇宙へ、そして最終的には火星にも行く宇宙飛行士として抜擢され隔離されたロシア内にある訓練施設で過酷な訓練に耐えると言うある意味では”根性モノ”だがそれに幼い娘が介入して来る。無論、別れた前夫が訓練で留守の期間は娘も猫も預かって世話を焼いてくれるのだが一般的なキャリアーウーマンと違い隔離された環境で励むトレーニングなのでおいそれとは娘には会えない。

そんな環境でメンバー唯一の女性に対する上層部の懸念や男性諸氏に比べた場合の体力的な脆弱さ、サラは口には出さず黙々と女性にも出来るんだを証明する為に娘の養育を犠牲にしてまでやるのか、、っと苦悩しつつ最後まで頑張り通す姿は実に立派だし共感を呼ぶ。

 

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幼い娘にはそんなに頑張る母親が自分は捨てられたんじゃないかと幼いなりに抵抗を試みるし見ている側ももうちょっとママの心意気を組んであげようよ、とは思っても小学校の低学年じゃママの事を判断し協力するってのは無理だろう。

そんなステラは駄々を捏ねパパと一緒にいても愛猫がいてもママが居ないと寂しいと電話口でも訴え続けるのだ、、そしてママの方は娘を置いて自分は一体何をやっていると苦悩するサラは007の時とは違って素晴らしい演技だった。

エンドクレジットに過去に宇宙へ飛び立った女性宇宙飛行士が実名で出て来る、、恐らくこのサラのケースは実話に基づいた創作物語で先駆者として宇宙(そら)を目指した最初の一陣の活躍を描いた逸話じゃなかろうか?

これまでこんなタイプの映画はアメリカの独壇場だったし何となくNASAがお決まりの活動母体だと思っていたがこうしてロシアが中心にフランス、ドイツからの協力で宇宙開発に携わっている事には今さらだが認識を新たにした。

アクションもカーチェイスもなしでスパイも刑事も出て来ない、、拳銃をぶっ放したり超人的な活躍をするヒーローが居る訳でもない、しっとりと母娘の交流を描いたこんな映画は☆☆☆☆、、大好きな一作だ。