”オールド・シネマ・パラダイス”、、時々新作も

長年”映画と愛猫とオーストラリア”だったが札幌へ軟着陸し愛猫も亡くしこの新タイトルで心機一転だ。

”ヒトラーの贋札”(07年)

やはり巧い邦題と言うのは絶対に必要だ。こんなタイトルを見付けたら有無を言わさず見るか録画をしてしまう。英語の原題は”The Counterfeiters”、”贋作者たち”と複数になっているが元よりこれはヒトラーの命によって実行された戦時中の作戦だった。

どうやら事実に基づいて映画化されたお話でその元ネタは”ベルンハルト作戦”と言うユダヤ人印刷工のアドルフ・ブルガーの手記から来ているそうだ。

映画の冒頭は主演のサロモン・ソロビッチ(カール・マルコビックス)が謎めいた雰囲気で銀行の貸金庫から大量の現金を取り出しモンテカルロのホテルへ入って行くところから始まる。賭け事に才覚があるのかカジノで大きく儲け贅沢三昧、そしてその場面から一気に戦争前の1935年頃に戻って行く、。

1936年、ある女性に頼まれて偽造旅券を作り、彼女と一夜を過ごしているところを親衛隊に踏み込まれて逮捕された、贋札作りの一流のプロ、サリー。やがて彼はナチスドイツが国の経済混乱を狙って企てた極秘作戦のため、印刷技師のブルガーらとともにユダヤ強制収容所の囚人たちの中から特別に選抜され、外国紙幣の贋造に従事することに。ナチスの国家的陰謀に加担することに戸惑いを覚えつつ、彼らは必死で任務に励むが……。

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と解説されていた。映画の中心はその収容所での仲間同士の対立に集約されるが偽札と見分けのつかない程に素晴らしいものを作る事はナチスに協力している訳でより精巧なものを作らないと仲間たちが殺されてしまう現実、その狭間に置かれたサロモンの苦悩が見事に描かれて行く。

実際には初めに手掛けた英国ポンド札の成功によってイギリス経済に大打撃を与えたが最終的には米ドルの完成はサロモン達のサボタージュで遅れに遅れ終戦時にはナチスの手に入る事はなかった。

 

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シンドラーのリスト”とは又、違った刑務所だが最後まで緊迫した場面の連続でサロモンと彼に反対するアドルフの対立から目が離せなかった、。そして画面は先のカジノ・テーブルでギャンブルに応じているソロモンへ、、この回想から一転、自責の念からか手持ちの資金をすっかり巻き上げられるまで無謀な賭け方で結局無一文に、彼の胸のうちじゃこれでやっと自身の終戦を迎えられた事を象徴するエンディングでした。