”オールド・シネマ・パラダイス”、、時々新作も

長年”映画と愛猫とオーストラリア”だったが札幌へ軟着陸し愛猫も亡くしこの新タイトルで心機一転だ。

”マラソンマン”(76年)

ダスティン・ホフマンとサー・ローレンス・オリビエが組んだ戦争犯罪に関するスリラーで監督はイギリス人のジョン・シュレシンジャー、そして原作を書いたのはウィリアム・ゴールドマンだが映画化に際して脚本も担当しているのでかなり原作に忠実に作られている。

 

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背景は70年代のニューヨークでダスティン・ホフマンの兄貴役でCIAのエージェントに扮したロイ・シャイダーも出ている。映画の冒頭はある銀行の地下金庫室、其処へやって来たのがクラウス・ゼルと言う老人だが貸金庫からキャンデーの缶にいっぱい詰まったダイヤを取り出し銀行の玄関先で正体不明の人物に手渡しする。

そしてゼルはオンボロ車で帰路につくのだが道中、同じような爺さんに”あおり運転”を受け、アタマに血が上ってしまい互いに罵り合いながらニューヨークの街中で派手なカーチェイスを演じ、挙句二人のクルマは路上へ出て来たタンクローリーに激突、炎上してしまう。

のっけから派手な出だしだが先のダイヤは誰の手に渡ったのやら見ている側には一切不明で今度はセントラル・パークの貯水池の周囲をマラソンしているベーブ(D・ホフマン)の様子が描かれる。彼はコロンビア大学の大学院生でマラソン大会に出るのが趣味だが近所じゃ余りにトレーニング一辺倒で誰とも馴染まないので変人だ、、とからかわれている有様だ。

そして今度はパリのホテルに投宿している様子のドク(R・シャイダー)が登場する。ドクは身なりも良く知的な物腰は成功したビジネスマン風だがどうも正体不明で何やら別の顔がありそうな雰囲気だ。そんな彼の手元には冒頭、ゼルが貸金庫から持ち出して来たダイヤがありそれを何やら取引に使おうとしているが突然、部屋に押し込んで来た殺し屋に狙われ、取引相手のルクレールは殺されてしまいドク自身も手に大怪我を負ってしまう。

そして一転、今度は南米のウルグアイに隠れ住むゼル博士(L・オリビエ)の登場となる。このゼル博士こそ元はナチの党員で戦争犯罪人としてユダヤ系の団体から追われる身だがテーブルの上にはニューヨークの新聞が広げてあり先のタンクローリーに激突して焼死したゼルは実の兄貴だった事が判る。例の貸金庫にあった大量のダイヤは果たして兄の死によってどうなったのか、、確かめない訳には行かず危険を顧みず自身がニューヨークへ出向く事にする、。

これで登場人物全員が揃い今度は謎解きとなる、アウシュビッツでは歯医者として収容されていたユダヤ人から金歯を盗み、それをダイヤに変換し財をなしたゼルは自分の兄貴に金庫番としてニューヨークに住まわせていたがその貯め込んだダイヤが兄の死後、そのまま無事にあるのか心配でならない、。中盤になってやっとゼルの心配事が判りドクの弟、ベーブが出て来る意味も判明して来るのだ、。

そんなでゼルのナチ党員として戦争犯罪人だった事の不気味さ、そしてドクの本当の正体が判り映画はクライマックスへまっしぐら、、そんな極上のミステリー(正統派ミステリーとはちょっと違う)仕立てで最後はかなり緊迫した場面が連続する。

ナンでタイトルの”マラソンマン”なのか、、これも最後になって走ってて良かったじゃないか、ベーブ君となる。76年の映画と言う事は45年も経過しているんだな、、この映画と”ブラジルから来た少年”、それに”オデッサ・ファイル”はボクにはナチ残党映画、極上の三部作として☆☆☆☆を進呈したいくらいだ。